第1話 久しぶりの再会

 「ランディおそいよ!どこで何してたの?」

「ごめーん!八百屋さんで値切りしてたらおそくなっちゃった!ピュート、洗濯物は?」

「もう取り込んでたたんだよ!グレイシアさまがすごく心配してたんだよ。ルオンさまも」

「2人にも謝らないとなぁ」

ランディとピュートは、そう言いながらお城に入っていった。

「ただいま戻りました!おそくなって申し訳ありません!すぐに夕飯作ります!」

「ランディ!良かったわ。おそかったから心配してたのよ。何をしていたの?」

「八百屋さんでいちごを値切ってました!おそくなってしまったお詫びに、絶品のショートケーキ作りますね!」

「やったー!ランディ大好きー!」

「なら許す!早く作れー!」

「はい!」

「ご飯、私も手伝うわ。何作る?」

「そうですね…。オムライスとかどうですか?」

「ぼく、ランディが作るオムライス大好き!」

「オレの方が好きだ!ランディ、特別大きなのを作るんだぞ!」

「了解しました!」

グレイシア、ルオン、ランディ、ピュートの4人は笑いながら台所に入っていった。

この時、ランディは忘れていた。

ルオンとピュートを台所に入れると、どうなるのかを。

料理を手伝わせると、どうなるのかを。

「うわー!ルオン様危ないですって!ピュートも!火のあるところでケンカしないでー!危ないから!」

「だって!ルオンさまが悪いんだよ!ぼくのこと押したんだもん!」

「押してない!お前だって、オレのこと足かけただろ!」

「かけてないもーん!」

「ルオン様、ピュート、落ち着いてくださーい!」

「2人とも…いい加減にしなさーい!!!」

「「ひぃぃぃ~~!!!」」

爆発するのは台所ではない。

台所が、ではなく、台所で、グレイシアが爆発するのだ。

「2人とも、ケーキ無しにするわよ!」

「「ごめんなさーい!!!」」

そんなこんなで、今日もある意味平和にお城の夜は過ぎていくのであった…。

「いや平和ではないだろ!」

 翌日

「おーい!ピュート!」

「んー?ランディ、どうしたの?」

電球の交換をしていたピュートのもとに、ランディが駆け寄った。

「昨日ね、八百屋さんから福引券もらったんだ。一緒に引きにいかない?」

「え!ホント!?行く行く!」

ピュートは目を輝かせ、乗っていた脚立から飛び降りた。

「準備してくるから待ってて!ランディのことだから、お買い物のついででしょ?」

「当たり!昨日食器用洗剤買い忘れまして」

「もー、ランディはおっちょこちょいだなぁ」

「あはは、ごめんね」

「全然いいよ!ぼくも買いたい物あるからさ!」

ランディとピュートは、並んでお城を出た。

天気も良く、野外でお昼寝でもしたくなるような日だ。

「福引券、何枚あるの?」

「1枚だけ。ピュート、やっていいよ」

「え!?いいよいいよ!ランディやりなよ」

「でもぼく、あんまり運良くないからなぁ」

「そんなことないでしょ!じゃんけんしてみようよ。3回勝負だよ」

「「ジャンケンポン!」」

1回目

「あ、ほら負けた」

「ま、まだ1回目だから!」

2回目

「お、次も負けだ」

「つ、次があるじゃん!」

3回目

「おぉ~、ここまで負けるともはや清々しいや」

「ラ、ランディ、それもう才能だって…」

「いやいや、それはハク様だよ。ぼく、ハク様がじゃんけんで勝ってるところ見たことないもん」

「そりゃそうか。ハクの運の悪さはルナ・ムーン1番…いや、世界一だもんね」

「誰の運の悪さが世界一だって?」

急に隣で声がして、ランディとピュートは飛び上がった。

「うわぁ!?ハク!?」

「ハ、ハク様!いつからそこに!?」

「少し前だが」

ランディの隣に、買い物袋を片手に抱えたハクが立っていた。

ハクは銀河一と詠われる戦艦ルーンネトラの主で、最強と言われる剣士だ。

「もー!ビックリさせないでよ!」

「すまない。驚かせるつもりはなかった」

「ハク様、戻ってらしたんですね」

「あぁ。後でグレイシアの所に顔を出そうと思っていたところだ」

「あれ、今日はアーリアたちいないんだね」

「休みを出した。今頃みんな、思い思いのことをしているだろう。それはそうと2人とも、こんな道の真ん中でじゃんけんなんかして、一体何を決めていたんだ?」

「福引券をもらったんですけど、1枚しかなくて」

「どっちが引くかを決めてたんだ!」

「そうなのか。なら…これを使え」

ハクはポケットの中から福引券を取り出し、ランディとピュートに差し出した。

「これ、どうしたんですか?」

「さっき買い物したらくれたんだ。これで2枚になるだろう?2人で1回ずつ引くといい」

「でも、ハクは?引かなくていいの?」

「考えてみろ。わたしが福引きなんて、ティッシュをもらえれば大当たりだぞ。回しても玉が全く出なかったり、壊れてしまうのがオチだ。容易に想像できるだろう」

「い、言われてみれば…」

「ハ、ハク、それもしかして実話?」

「もしかしなくてもそうだが」

「ハク様、もうそれ不運どころの話じゃないですよ!」

「ハクの不運話って、他人事で聞いてたら面白いんだよね。他にはどんなのがあるの?」

「他か?急に言われても…てるてる坊主くらいしか思い出せないんだが」

「てるてる坊主、ですか?」

「あぁ。昔、苦手な実技テストがある日に、友人と共に逆さまのてるてる坊主を作ったんだ。逆さのてるてる坊主を作ると雨が降る、と言うだろう?それで作ってみたんだ。そうしたら、降水確率100%だったにも関わらずその時間だけカラッカラに晴れて、無事テストができてしまいました、とさ」

「じゃあ、普通に作ったらどうなるの?」

「ん?言わなくても分かるだろう。記録的大雨が降るぞ。どんな快晴でもすぐさま大雨になってしまうんだから、困ったものだ」

「もう、天気を操ってるじゃないですか!」

「まあ、とにかくこれを使え」

「ありがとう、ハク!」

「ありがとうございます!」

「どういたしまして」

「ハクもついてきてよ!」

「別に構わないが…あ、こら走るんじゃない!」

ハクはピュートに引っ張られるようにして駆けていく。

「ハク様、ピュートー!待ってよ~!」

それを追いかけるように、ランディも走った。

やがて…

「はぁ…はぁ…ピュ、ピュート…走るの、速すぎだって…」

「ごめんね、ついはしゃいじゃって。ランディ、大丈夫?」

「だ…大丈夫…大丈夫…」

「には全く見えないんだが」

ようやく息を整えたランディが、ほっと息をついた。

「ほら、ピュート、福引券」

「ありがとう!」

「ランディも」

「ありがとうございます!」

ハクから福引券を受け取ったランディは、ピュートの前に並んだ。

「けっこう並んでるんだね」

「商店街の至るところにチラシが張ってあったからね」

「福引券の配布もあったしな。久しぶりにこういうところに来ると、案外疲れるものだな」

ハクは腕を組んで、軽く息をついた。

「あ!次ランディだよ!」

「ホントだ。まあ、ティッシュくらいしか当たらないだろうけどね」

ランディは少し笑いながら回転抽選機を回した。

すると

カランカランカラン!!!

「大当たりー!大当たり出ました!!!」

抽選機の中から、金色の玉が転がり出た。

「「えぇえええぇえぇ!?!?!?!?」」

「やったじゃないか」

ランディとピュートが目を見開いて叫び、顔を見合わせた。

「やったじゃんランディ!すごいよー!」

ピュートが大喜びでランディに飛びつく。

よろけながらも、ランディは驚きを隠せない様子で1等の賞品を受け取った。

そこには、『迷宮館への招待状』と書かれている。

ハクとランディは顔を見合わせ、共に首をかしげて言った。

「「…なんだこれ?」」



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