甦る都市伝説
堂場鬼院
孕み神
第1話
「
「嘘ぉ」
「信じらんない」
「フェイクでしょどうせ」
実里を含む三人が口々にいっても、静香はゆっくりと首を振った。
「わたしも最初は信じられなかったわ。でも、昨日の夕方、平木先輩にじかに会ったのよ」
「太ってたの?」
「いい方よ」
「ええ、お腹は大きかったわ。単に太ってるんじゃなくて、お腹だけこう……わかるでしょ?」
「でも妊娠って……先輩は何ていってたの?」
実里が訊ねると、静香は口元に笑みを浮かべた。
「それが可笑しいのよ。先輩ったら、『自分で妊娠した。神様を宿した』っていうの」
「こぉわっ」
翔子が口を塞ぐ。
「わたし、そのとき正直、先輩がどうかしちゃったんじゃないかって思ったわ。変な宗教にのめり込んだんじゃないかってね」
「そういえば先輩、最近、振られたとかいってなかった?」
「あ! いってたいってた!」
真由美の言葉に、実里と翔子がうんうん頷く。
「それそれ。わたしもそのことが頭をよぎったから、さては先輩、振られたことが原因で怪しい神頼みでも始めたんだと思ったわけよ」
静香は、そこで声をぐっと潜めた。
四人が顔を近づける。
「……ところが、どうやらそうらしいのよ」
「何がそうらしいの」
「宗教じゃなく、都市伝説にあるのよ。『孕み神』っていうのが」
「孕み神? 何それ?」
三人は顔を見合わせ、静香が続けた。
「気になったからさっそく調べてみたの。そしたらさ……何でも願い事を叶えてくれる神様を、自分のお腹の中に宿す儀式っていうのがあるらしいのよ」
「きも。ってか、先輩はそれをやったっていうの?」
「たぶんね」
「やっぱり振られたことがショックだったから? それで都市伝説にすがってでも願い事を叶えてもらいたいって?」
「おそらく」
四人は、深いため息を吐いた。
「……愛は、罪ね」
したり顔でいう翔子の頭を、真由美が叩く。
「いったぁい!」
「実里はどう思う?」
「えっ?」
突然、静香から訊かれてうろたえた。
「どう思うって、何が?」
「実里は都市伝説を信じる? それとも信じない?」
静香にじっと見つめられて、実里は目を泳がせた。
「……信じる、かも?」
「かも?」
「ほら、都市伝説って『口裂け女』とか、『人面犬』とか、そういうホラーコンテンツでしょ? まあ、確かに面白いじゃん」
「……それって信じてないってことじゃないの?」
真由美が突っ込んだ。
「実里は今回の件について本当はどう思ってるの?」
「いや、そういう翔子はどうなのよ」
「逆質問はなし~!」
「ふふふっ」
静香が笑ったので、三人は振り向いた。
「都市伝説を信じるも信じないも、その人の自由よ。ただ、平木先輩が妊娠したっていうのは事実なわけ。これからどうなるか……実里じゃないけど、ちょっと面白いと思わない?」
静香がそういって立ち上がったので、放課後の談笑はそこでお開きとなった。
都市伝説――人から人へ伝承され、ありえないような噂話が飛び交い、やがて、それは事実となる。
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