未来確定カンファレンス

Yuya Narita

プロローグ「分岐ログの再生」

【あらすじ】

このログは、再生可能な唯一の記録である。

ただし、それが“本当にあったこと”かどうかは、定かではない。


誰もいない教室に漂う、確かに“在った”という気配。

誰かが、何かを、始めようとしていた。


視点によって意味が変わる世界。

その中で、翻訳クラブと呼ばれる集まりが、“最初の言葉”を拾い上げる。


これは、意味が確定する前の物語。

そして、すべての構文が始まる前の、たったひとつのログ──


【本文】

分岐ログの再生


このログは、再生可能な唯一の記録である。

ただし、それが“本当にあったこと”かどうかは、定かではない。


静かな、誰もいない教室。

夕方、蛍光灯が消えかけた光の中、机と椅子だけが整然と並んでいる。

しかし、そこには確かに“誰かの気配”が残っていた。

──あたかも、たった今まで誰かがここで笑っていたかのように。


前方、黒板のすぐ前の机にだけ、椅子が出されたままになっている。

その机には何も置かれていない。

だが、その“何もない”が、逆に気になる。

誰もその存在に気づかなかった。いや、気づこうとしなかったのかもしれない。


そこにいたのは、“名前のない誰か”。

誰にも認識されないまま、ずっとそこに座っていた者。


「最初から、そこにいた」

「けれど誰も、気づけなかった」


その存在は、言葉を持たない。

ただ、漂う意味の“残り香”を感じ取るように、

空気の粒子をなぞるように、そこにいる。


まだ、何も始まっていない。

でも、確かに“何か”はあった。


そしてやがて──

翻訳クラブの誰かが、ホワイトボードに最初の言葉を書くことになる。

それが、すべての始まりだった。

未来確定カンファレンス



【巻末情報】

© 2025 Yuya Narita / 未来確定プロジェクト


本作は、小説・メガネ辞書・未来確定理論が連動する多層構文作品です。

登場キャラクターはそれぞれ異なる“視点(メガネ)”を持ち、

同じ言葉を異なる意味で翻訳しながら、世界を再定義していきます。


🔍 世界観まとめ → 準備中

📘 最新情報 → @M1C_Conf(Twitter)

ご感想・ご再翻訳、大歓迎です。

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