第1曲目(2/4) 出会いは求めてないのに勝手にやってきた!

 その数日後、特に使い道も無く貯めていた数年分のお年玉でギターを買い、動画サイトを参考に弾き方を学んだ。


 1年半くらい続けて、少しは演奏が出来るようになって、女子限定のバンドメンバーをSNSで募集したんだけど、これが難しかったなぁ〜。


  何しろ、特撮系オンリーのガールズバンドだなんて、自分で言うのも何だけどハードル高過ぎ!


  だから、全然応募が来ない!アホほど来ない!!もしかして、私のSNSの投稿って、非公開になってるんじゃないの?って思ったので、何回も公開設定を確認したくらい!


 ところが、高校を卒業した半年前、立て続けにメンバー希望のDMが来たの!


  「あきらめない あきらめないってなんだ? すばらしいことさ!女の子なんだろ?ぐずぐずしないで返信しちゃいなYO!」


 嬉しさのあまり、スマホを握りしめた私は、何を思ったのか、某宇宙刑事の主題歌のような雄叫びを上げてたわ。


 そして、トントン拍子に話が進んで、メンバーになってくれたのが、私の目の前にいる菜々子と皇である。


 菜々子は21歳で、私と同じくフリーターをやりながらバンド活動をしてる女の子。 私よりも2歳上のせいなのか、元々の性格か、やたら現実的で、クソが付くほどの真面目な性格をしている。あと、ちょっと天然で、見た目がロリキャラ。 バンドやってんだから、少しはロックな所があっても良いと思うんだけど、こればっかりは仕方ないのかな?


 中学時代は、ひどいイジメを受けていたらしいけど、年の離れた兄貴が好きな特撮ヒーロー番組を観てる内に、生きる勇気が湧いてきた過去があったらしい。


 たまたま見た私の投稿に興味を持ってメンバー希望のDMを送ってくれた。


  皇は、25歳でフリーターをやりながら……以下略。 小さな頃から、男勝りな性格だったらしく、特撮ヒーロー番組や、関連音楽を聴いて育ったらしい。 (趣味でドラムやってたし、何となく面白そうだから)という理由で、私に連絡してきた。


 見た目も態度も男っぽいんだけど、胸は凄い大きい。羨ましいな!クソ!


 私と違うのは、1970~80年代の特撮番組の主題歌に拘らず、最近の特撮やアニメの曲を演奏するのも全然OKであるということ。


 しょっちゅう口喧嘩する事もあるけど、とりあえずバンドを辞めないでくれている。 私よりも酒好きで、暇さえあれば、人の酒だろうがお構いなしに呑みまくってる。


  この間酔った勢いで話してたけど、酒のせいで多額の借金を抱えてるので、自己破産を本気で考えてるとか?


 まあ、2人ともクセの強いキャラしてるけど、何だかんだで、私と一緒にバンドやってくれてるから、感謝はしてんだよね。


  照れ臭いから、口に出した事はないけどさ。


 それよりも、頭にくるのは、あのダイヤモンドブレイカーズの連中よ!


 ボーカル担当のオーヴァー・ジュリエッタは、中学時代の同級生で、私とほぼ同時期にバンドを結成し、デビューも同じライブイベントだった。


 最近のアニソンを中心としたコピバンなんだけど、数ヶ月前に、動画サイトに投稿した最新の人気アニメ主題歌の演奏動画が、たまたま大物配信者の目に止まりSNSで紹介されちゃって、これが大バズリ!


 それ以降、ファンも出来て、今やインディーズバンド界では、ちょっとは名の知れた存在となった。 本ー当に〝ちょっと〟だけね!!


  「キャーホホホ!貴女方とワタクシ達では、完全に実力が違いますのー!」


 少ーしだけ、有名になった頃、とあるイベントで再会した時に、露骨にマウントを取ってきたオーヴァーの顔と言葉は、今思い出しても超ムカつく!これにて、自分語りおしまい!!


 はぁ……スタート時期は同じだったのに、どうしてダイヤモンドブレイカーズだけが、ファンも付いて、チヤホヤされるのよ!?


  「スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズもチヤホヤされてー!ライブで大勢のファンから歓声を浴びたーい!」


 缶チューハイを飲み干し、2本目の酒に手を付けた私は、酔いが回ったのか自分の承認欲求を恥ずかしげもなく大声で叫んだ。


 その直後、楽屋で待機している他の出演バンドのメンバー達が、一斉に私達を睨みつける。


 「来夢ちゃん、声が大きい!またスタッフさんに怒られちゃうよ!ああ、皆さん、ごめんなさい!ごめんなさい!」


 「菜々子、もう、こうなったら来夢は手を付けられないよ〜。酒乱モードの発動だ!アハハハー!」


 「アンタだけには、そんな事言われたくないわよ!っていうか、たまには酒代払えー!今月は金欠なんだよ!」


 「アタシに、そんな金があるわけないじゃん!諦めなよ!それに来夢の場合、金欠なのは〝今月は〟じゃなくて〝今月も〟だろ?キャハハハ!」 「や、やめてよ!2人とも!」


  「おのれ!今日こそは許さん!貴様にタダで飲まれた酒の恨みを晴らしてくれる!くらえ!正義のライダーキック!!とぅりゃあああー!」


 怒り心頭の私は、仮面ライダー1号の必殺技を皇に食らわせようと飛び上がる!


  「ふん!そんなへなチョコキックで、アタシに勝とうなんざ100年早いよ!クリムゾンスマッシュ!はあああ!たぁー!!」


  皇も対抗して、仮面ライダーファイズ(だっけ?)の技名を叫びながらジャンプキックを繰り出す!


 私達の蹴り足は、まるで『北〇の拳』のケン〇ロウとシ〇のように、空中で綺麗にクロスする!!

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