歩みの足跡

feno_official

第1話 追体験の幕開け

目を開けると、周囲は静寂と暗闇に包まれていた。


紬「ここは一体……どこかしら?

さっきまで私は何を……」


思い出そうとしても、何も浮かばない。

病院のベッド? 機械音……?

……思い出せない。歳を取ったせいか、記憶が曖昧だった。


そうこうしていると、遠くに一筋の光が差し込んでくる。

扉の隙間から、淡く光が漏れていた。


とりあえず、そこに進むしかない――。

紬は重い足取りで、その光に向かって歩き出した。


扉の中をそっと覗き込む。

中の様子はよく見えない。

意を決して扉を開けてみると、そこはなぜか映画館だった。


紬「映画館なんて……何年ぶりかしら?

最後に来たのは、夫と一緒だったかな……

あれ……何年前だったかしら?」


独りごとをこぼしながら、中へと足を踏み入れる。

場違いなほどに静まり返ったその空間の中央に、机がぽつんと置かれていた。

その上には、手書きのような置き手紙がある。


「どうぞ、お好きなところにお掛けください。」


紬「……???」


戸惑いながらも、彼女は椅子に腰を下ろす。

その瞬間――


上映開始の音が鳴り響いた。


『これより、あなたの人生の追体験を始めます』


紬「え……?」

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