僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

花村しずく

プロローグ

 魔導列車に揺られながら、僕は窓の外をぼんやりと眺めていた。

 胸の奥で、なにかが少しずつ、じんわりと熱くなっている。


 ——今日から、冒険者になる。


 素材を拾って、運んで、それが誰かの手で“すごいもの”に変わる瞬間を、ずっと見てきた。

 そして、僕は気づいてしまったんだ。

 僕はやっぱり、拾い物が好きだ。

 そして、誰かの“作りたい”を手伝うのが、もっと好きだって。


 実は、これは二度目の人生。

 一度目の僕は、同じように“冒険者”になって、そして──命を落とした。

 もう失敗したくなくて、ずっと迷ってた。

 だけど、今は違う。職人と出会って、ポシェットが進化して、僕自身も変わった。


 ものづくりが大好きなツムギお姉ちゃんも、生地職人のナギさんも、ギミック職人のエドさんも、みんな自分の手で“誰かのための特別”を作っている。


 僕は、そんな仲間たちと一緒に「POTEN創舎」という、小さなものづくり集団に所属している。

 職人たちと、それを支える人たちが集まってできた、小さいけれどあたたかなチームだ。

 その隣で、素材収集係の僕にできることを考えた。


 だから、十歳になった今、

 僕は学院の職業選択で、“冒険者”という道を選ぶことにした。

 学院で学びながら、冒険者ギルドで訓練を受けて、ちゃんと戦えるようになって──

 もっと遠くの森やダンジョンにも行けるようになって、

 仲間たちの“すごい魔導具”を支える素材を、僕が集めに行く。


 これは、僕だけ戦う素材収集冒険記。

 集めた素材で、仲間がとんでもない魔導具を作り出す話だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る