“頑張れば何とかなる”って、誰が言い出したの?
けんぽう。
第1話 “頑張れば何とかなる”って、誰が言い出したの? ヴェルシュトラ・序章
妹は、歩けなかった。
子どもの頃の病気が原因で、彼女の足は動かない。
それでも、あの子は笑っていた。
机に向かって、一生懸命に勉強していた。
努力すれば、学べば、変われるって。
この社会は、そういうふうにできているって
私も、そう信じていた。
少なくとも——信じようとしていた。
妹の学費が、足りなかった。
コツコツ貯めたお金では、アカデミアには届かなかった。
——あの子は、努力していたのに。
だからこそ、私はあの子にチャンスを渡したかった。
条件は……良すぎるくらいだった。
でも、私はもう迷わなかった。
何を差し出してもいいと思った。
自分の価値なんて、とっくに使い果たしていたから。
ロフタの街で、私は契約した。
スキルも担保もなかったけれど、向こうは笑って契約を結んでくれた。
これで妹は学べる。
この世界を、信じたままで生きられる。
その未来が買えるなら、私はどうなってもよかった。
そう思った。
思い込もうとしていた。
ずっと、ずっと、ずっと。
——私の努力が、足りなかったのだろうか。
——もっと、何かできたんじゃないか。
「努力すれば報われる」社会の、その裏側。
この物語の続きを、本編でご覧ください。
▼本編はこちら
『ヴェルシュトラ 〜スキル経済と魔導石の時代。努力が報われる社会で俺たちは絶望を知りそれでも、歩き出した〜』
“頑張れば何とかなる”って、誰が言い出したの? けんぽう。 @kenpo3
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