Meteor Breaker

noll -ナル-

Meteor Breaker


 私はメテオ・ブレイカー。母星マザーから作り出された存在。私が生み出された理由はただ一つ、マザーを守るというものだ。

 マザーは惑星で、揺り籠とも言われるマザーの大地なかでは数多くの命が生まれ、生活を営んでいた。私は偉大なマザーが愛する存在いのちと、マザー自身を守る為に日夜マザーと寄り添うようにして宇宙を泳いでいる。

 今日も何時ものように大切な命を抱えているマザーを守るように泳いでいると何やら私たちの元へと近付いて来る気配を感じた。私はその気配にいち早く気付くとマザーへこの場から離れる事を告げる。


「マザー、少し出掛けてきます」


 私の言葉を聞き、マザーが少しだけ不安そうな表情を浮かべるも、最後はウン、と頷いたように顎を引き「いってらっしゃい」と送り出してくれた。私はその言葉に答えるように同じく顎を引いてマザーの元から飛び立つように離れ、近づいてくる気配へと飛び立つ。

 引力を物ともせず、私は飛ぶように、飛び跳ねるようにして宇宙を駆ける。少しでもマザーから離れていく寂しさを自分自身の行動で有耶無耶にしていく。少しだけ怖い、いや虚勢を張った。全然少しなんてレベルじゃない。本当はとっても怖い。あの温かいマザーの側を離れて一人、冷たい宇宙の中を駆けるのは気が遠くなる程に心細く、不安と言いようの知れない恐怖へと私を誘う。


 ――上手く、出来るかな?


 そんな素直な不安が私を襲った。だが、私は直ぐにそんな不安を消し飛ばすように頭を振った。馬鹿な考えだ、私は自分で自分の不安を嘲笑った。私は、自分を奮い立たせるようにして語りかえる。


「大丈夫よ、メテオ・ブレイカー。私は出来る。私はマザーを、……みんなを救える力を持っている。出来る、出来る…………そう、私は出来る!」


 最後の方はもう自己暗示に近い感じになってしまった。だが、そのお陰で小さな勇気が湧き始める。


 そうだ、私にはそれをやれる力を持っている!


 私は私自身を奮い立たせ、俯き加減になっていた姿勢を正して前を向く。すると丁度、私に近づいてくる存在へと気が付く。それは一つの流星で、私は近づいてくる流星に待ったを掛けるようにその進路を塞いだ。


「だれ?」


 流星は幼い声で不満そうに私へと投げかけた。私はそんな幼い流星にマザーから教えられたとおりの作法で返し、挨拶を述べた。


「私はメテオ・ブレイカー」


「まさかぼくをころすの?」


 コロコロと幼い声の流星は笑って言った。まるでその声色はありえない、と私を馬鹿にしているようであった。だが、流星の言葉は正しかった。私に流星を殺すほどの能力は持ち合わせていない。けれど、私はメテオ・ブレイカー。マザーから頂いたその名に恥じない働きをする。


「殺しません。私は貴方に新たな旅路をご案内する為に参りました」


「……どういうこと?」


「このままの進路へ行きますと、マザーの御身が危ないのです。ですので、貴方が歩まれる旅路のご変更をお願いしたいのです」


「でも、ぼくのちからだけじゃむりだよ」


 幼い声の流星は駄々を捏ねるように言うも、私はその言葉に安心するようにそっと笑いかける。


「大丈夫です。私が最後まできちんと貴方の旅路をご案内いたします」


「…………それってつまり?」


「貴方の軌道がマザーからそれるまで、私が貴方の旅路をご案内します」


 私はそう言い切り、改めて幼い声の流星へ自己紹介を述べた。


「私は流星の案内人、メテオ・ブレイカー。貴方に最高の旅をご案内させていただきます」

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