グリーノベルドマリーゴード

暴走機関車ここな丸

第1話「趣味は読書です」前編

 私はいつも人から、『趣味はなんですか?』と聞かれたら「読書です」と答えている。



 私の名前は銭林ぜにばやし麻里愛まりあ、どこにでもいる中学2年生です。




[銭林 麻里愛]

 「1年間、よろしくお願いします」




 自己紹介における、『最後にクラスの皆んなへのひと言』……なんて、これくらいしか思い浮かばない。



 私はよく、真面目、無表情、気難しいなど他者から評価されることが多い。






 パチパチパチ……。






 私は周りから拍手の音が聞こえてきたのと同時に一礼をし、自分のセミロングの毛先を見つめたあと席に座った。



 ──あの自己紹介の日から1ヶ月が経った。




[???]

 「ねぇねぇ」



[銭林 麻里愛]

 「あっ、はい?」




 放課後、帰ろうとしたところにひとりの女子生徒が私に話し掛けて来た。




[???]

 「麻里愛ちゃん、だよね?」



[銭林 麻里愛]

 「は、はいそうです……えっと」




 話し掛けてもらって嬉しいけど、なんだか恥ずかしい、何を話したら良いか分からない。




[三枝 野乃花]

 「あ、私は三枝さえぐさ野乃花ののか。 ねぇ、一緒に帰らない?」




 同じクラスの三枝野乃花さん、いつも明るくて快活な女の子。



 そんな子が、私を下校に誘って来た。




[銭林 麻里愛]

 「一緒に帰る……?」



[三枝 野乃花]

 「ダメ?」




 三枝さんが眉毛を下げてそう問い掛けてきた。




[銭林 麻里愛]

 「い、いえ……」




 「一緒に帰ろう」だなんて、初めて言われた言葉だった、だから私は返す言葉が見つからなかった。




[三枝 野乃花]

 「じゃ、もう帰れる?」



[銭林 麻里愛]

 「はい!」




 学校を出て私達は共に下校する。




[三枝 野乃花]

 「麻里愛ちゃんって、どんな遊びが好き?」



[銭林 麻里愛]

 「遊び……本を読むことが好きです」



[三枝 野乃花]

 「げげ! 私本苦手〜…………あ!」



[銭林 麻里愛]

 「三枝さん?」



[三枝 野乃花]

 「今日バイトなの忘れた〜! ごめん! じゃあねー麻里愛ちゃーん!!」




 ズドドドと足音を立てて、どこかに走り去ってしまう三枝さん。



 私は結局ひとりになってしまう。




[銭林 麻里愛]

 「書店……?」




 目立たない所に、『ナンノその』と言う看板の本屋さんが建っていた。



 最近出来たお店なのかな?



 外装とか、壁とか、綺麗。






 チャリン……。






 私はとりあえず入ってみようと、店の中に顔を出す。




[大人の女性]

 「……」




 カウンターに本を開いて座っている女性の姿が見えた。



 凄く綺麗な人、少なくとも、私より大人の人。




[大人の女性]

 「……?」



[銭林 麻里愛]

 「あ……」




 女の人は本を閉じて、こちらのほうに歩いてきた。



 そしてロングスカートをひらりとつまみ、私に向かって微笑み、頭を下げた。




[銭林 麻里愛]

 「あの……」



[森野 野鈴]

 「初めまして、オーナーの森野もりの野鈴のべるです」






 つづく……。

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