私が純文学を広めたいわけ

こよい はるか @PLEC所属

純文学はこれからに必要である。

 現代ではグローバル化が進み、きっと数年後、数十年後にはAIが社会の大半を支配することとなるだろう。


 その中で必要となってくるのは、今のAIには無い“自分で考える力”である。


 日本が高度経済成長期で景気が良かった時期は、答えのある問題をひたすら解き、数を重ね、良い大学に入って良い会社に入れば給料が上がり、家族を養い、家庭を築き、新たな世代へと生命を繋いでいくことができた。


 でもそんな時代がすでに終わっていることは明白である。


 AIが答えのある問題を解くことができるようになった今、私たちに求められているのは“答えのない問題”を解く能力だ。


 だがどうだろうか、自分の分からないことがあった時、ネットワークを用いない人は身近に居るだろうか。


 もちろん、インターネットで調べるのもネットワーク。

 他人に聞くのもネットワーク。

 辞書で調べるのだって、歴史を刻んだネットワークである。


 ネットワークを全く使わない日本人が、現代に存在するだろうか。

 恐らくそんな人は居ないことであろう。


 自分でゼロから考えることを一度でもおこたらずにやり遂げられるか、と聞かれたら黙ってしまうことも多いのではないだろうか。


 だが、これから必要とされるのはその能力。

 自分で考えて、オリジナリティーの詰め込まれた、あなた自身の意見が求められる。


 そのための基礎知識を、我々は学校で学んできた。


 昔はそれで良かったのだ。

 基礎知識をもとにした答えのある問題を解くだけで、世界を生きていけたのである。


 でも今は違う。その程度の応用問題だけでは追いつけない。


 誰もが違う考えを出すような答えのない問題を自分で考え、解くことができなければならない。




 話は変わるが、これを読んでいる人は小説を読むのが好き、もしくは書くのが好きな人、総括して文章が好きな人であろう。


 その大半がきっと、娯楽性の重視されたコメディなど、読んでいて気持ちが晴れやかになる、そんな小説を好んでいるに違いない。


 だが、これまでの話を読んでどう感じるだろうか。


 ……娯楽性の重視された小説に時間を費やすのは時間の無駄遣いだ。

 そう思った人も少しだけ居るのではないだろうか。


 確かにコメディは面白い。楽しい。

 読んでいて快楽を味わえる、小説を代表する作品。

 所謂娯楽小説である。


 このストーリー展開が面白い、主人公にこんなことをさせたい。

 そう考えてコメディを書いている人がほとんどであろう。


 でもそんな大衆小説とは違い、芸術性を重視してその曖昧な表現から著者の伝えたい物事を読み取り、それについて考える——純文学についてである。


 物語を読むことに限定すると、もちろん新しい世界を追体験することができる。加えて、何らかの問題について考えさせられる。


 主人公が置かれている状況に自分が置かれた時、自分ならどうするだろう。

 そう考えることは、本当に文学が好きな人の娯楽となる。


 そして書くことに限定すると、自分で容易に物語の成り行きを変えることができる。

 どのような設定でどのような進み方で、どのような終わり方をするのか。何か一つが変わるだけで、後で読者が考える事柄は変わってくる。


 また、自分の持っている基礎知識を思う存分に発揮し、芸術性のベストを追求できる。


 ——面白くなってこないだろうか。


 純文学は枝分かれである。


 書く人のストーリーも枝分かれ。

 それを読んで何らかを考える読者の考えも枝分かれ。


 自分の考えを自信を持って相手に示し、相手の最大限のオリジナリティーが放出された考えを聞くことができる。

 そしてその意見を盛り込み、また新たな自分の考えを作っていく。




 皆さんも、純文学を書いて、読んで、自分のベストの何かを追求してみてはいかがだろうか。

 自分の中で最高の考えを、自信を持って誰かに示してみてはいかがだろうか。


 AIと共に生きる世界で最前線を歩いていくための、第一歩。

 それを純文学と考えれば、読むことに嫌気が差さないような気がする。書くことも然りだ。


 AIと共に生きる社会で生き抜くために、今から純文学に触れてみてはどうだろう。


 純文学は美しい。


 ——それでいて、これからを一緒に生きていく大切な仲間だ。

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