ゼロに沈む眠り姫は、破滅に導くプログラム
弥生 知枝
学園に降り立つ腹黒天使と眠り姫
第1話 「0」に沈む眠り姫
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プログラムの記号の海。その中に、連ねられた「0」の羅列。
――データ削除の痕跡だ。
その文字列の奥底に、眠り姫が姿を隠す。
「0」は、僕の行く手にぶくぶくと立ち昇る泡となって現れる。
見付けては消し、潜っては「0」を探す。眠り姫を探す心躍る作業に、時間を忘れて没頭する。
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揺り起こす姫は「0」の泡を辿った先に必ず存在する。だから僕は、授業も休み時間の喧騒も届かない、文字列の深海へと息を潜めて沈んで行く。心地好い集中だ。他のなんにも考えられない。
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執拗に湧き出る泡沫の中、慎重に隠され、埋められた姫は一体何者なのか? 埋蔵金や、沈没船の宝みたいに、存在が不確かなモノを探すのではなく、「0」の先にソレは確実に存在する。実りのある作業。
宝ならトレジャーハンター。姫ならば勇者や騎士。異世界転生なんかよりもっと確実に、僕は秘密の探究者になれる。念入りに隠されたものを暴く背徳心も良いスパイスとなって、僕をゾーンへと誘う。
消された不運なデータを掘り起こすのが、この私立多聞学園中等科へ通う意義。
僕こそは、そう、囚われた姫を救い出す勇者――。
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