最弱スキル【分配】で追放された俺、実は全員のチート能力を受け取って最強でした

れいや

プロローグ

プロローグ 追放の宴

「レイ=グレイ。お前をこの“銀星の勇者パーティ”から……追放する」


静まり返った酒場の奥。仲間たちの視線が一斉に俺に突き刺さる。


「え……?」


ぽつりと呟いた俺の声は、誰にも届かなかった。


長年苦楽を共にした勇者リオンの冷たい眼差し。聖女エレナのあざけるような笑み。盾騎士バルドの鼻で笑う音。


「お前のスキル【分配】なんて、何の役にも立たなかった。今まで散々足を引っ張ってくれたな」


「ずっと言おうと思ってたのよ。スライム一匹倒すのに三分もかかる人間が、どうしてこのパーティにいるのか不思議だったわ」


「くく、まさか自分が必要とされてるとでも思ってたのか?」


言葉の刃が次々と刺さる。俺の胸は引き裂かれそうだった。


……そう、俺のスキル【分配】は、仲間の力を“分け与える”だけの、補助的なものだった。


魔法も剣技も、自分には何も宿らない。ただ“分ける”だけのスキル。

だが──


(……違う。お前ら、分かってない)


真実を知っているのは、俺だけだ。

【分配】にはもう一つの効果があった。


──分け与えた後、その力の“余剰”を、自分に“蓄積”する。


それは、じわじわと、数ヶ月、数年という時間をかけて、自分の中に“全員分の力”を蓄えていくスキル。

そして今、俺の中には――


◆ 勇者リオンの【聖剣術Lv.10】

◆ 聖女エレナの【超再生】【浄化魔法】

◆ 騎士バルドの【鉄壁】【不動】【超耐久】

◆ 魔導士シリルの【火炎竜】【空間転移】

……など、かつての仲間たちのチートスキル全てが眠っている。


(ありがとうな、みんな。おかげで、俺は――)


酒場を出た夜、俺はひとり笑った。


(ようやく“起動”したよ、最強の俺が)


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