作戦会議! と、過去



今日も修行を終えた。

ヘットヘトになって横たわり、息を大きく吐く。


「疲れた……にしても、随分やってるはずなのに慣れねぇなぁ……」


「段々とメニューを重くしてますからね」


「……マジすかぁ……」


通りで……。


「……あ、このアングル見えるな」


「何か言いました?」


「いえ、何も」




いらん事を言って詰められたりもしつつ、俺は風呂へ行き、その後部屋に戻る……前に、休憩室へ行った。


待たせている人が、2人いるのだ。



「……来たか」


「なんや、随分と引き締まった顔しとるやん。やる気充分でええこっちゃ」


エオリカと、雷羅さんだ。


……今日は、決戦の前日。


フォリという破砕の幹部との対決である。



2人は、休憩室の机を囲む4つのソファのうち2つにそれぞれ座っていた。俺はエオリカの前のソファに座った。


俺が座ると、2人は早速話し始めた。


「さて、まずフォリの異能について説明しとこか。エオリカ、頼むわ」


「うむ」



「奴の能力は、"伸縮"。刀や柱、腕に足。何でも伸ばしたり縮めたりする事が出来る」


「……それはまた厄介だな」


「ああ。遠い所からでも攻撃できる能力だ。正直、俺でも手こずるだろうな」


「せやけど手こずるだけやろ?」


「ああ。……風の異能なら、倒せんこともない」


「風の異能は、伸縮などほぼ関係ない。遠隔から、広範囲に、反撃の心配なく攻撃が出来る。それは火や水の異能でも同じだろうがな」


ただ、風はそれだけじゃない。


「……風がそこらへんと違うのは、攻撃を瞬時にかわす機動力だな」


そう言うと、エオリカは大きく頷いた。


「そうだ。奴も速いがお前もかなり速くなっている。風の力を持ってすれば勝算は充分にある」


「……ただ、油断はしたあかん。出来るだけ遠距離で、攻撃が来たらそっこー逃げられるように、や」


雷羅さんは、身振り手振りで示しながら、説明してくれた。俺は頷いて、


「はい」


と言った。



「これだけ抑えとけばええやろ。な?」


「ああ。申し分ない」


「……じゃあ、これで解散、ですか?」


「あ、いやまだ用事あるねん。エオリカはもう戻ってもええけど」


「……ああ、あの娘の話か。それは俺が聞くような話でもなかろう。俺は部屋に戻るとする」


「わかった。ほな、またな」


「ああ。明日を楽しみにしている」




そう言うと、エオリカは部屋に戻って行った。

その後、雷羅さんはため息をついた。


「……今日な、瞳ちゃんに会うてきてん」


「え??」


「君のアジトに行ってみたんや。フェターリアちゃんとか、トレイルちゃんはおらんかってんけど、瞳ちゃんだけおったんや」


「な、何のために?」


少し困惑気味に言う。


「確認のためや。暴走してこっちに向かってくるようなら止めた所なんやけど……そういうわけでもなくてな」


───────────────────────



「……ガンドを攫った男の仲間って事?」


「攫ったて、人聞き悪いなぁ。君らんとこのリーダーが強くなるためにうちに来たんやで」


「……すいません。わかってます。今となっては」


「そうか? ほんならええんやけど……」


異様にしょげとんなぁ。

なんかあったんかな?


「……最近なんか嫌なことでもあったか?」


「!! ……まぁ……少し」


「ほう。せやったら言うてみ。お姉ちゃんが何でも聞いたるで!」


瞳の肩をバンバン叩く。


「……じゃあ、聞いてください」


「おう!」


「……最近、"破砕"に行った、元々仲間だった奴がこっちに来てるって聞いたんです。……ちょっと、色々あって」


「……"破砕"の奴か。せやったら敵か。裏切りなんて物騒やなぁ……」


「……はい。原因は……また別のところにあるんですけど。昔、仲良かった物で」


「ふーん。そいつの名前は?」


「……フォリ、です」


「なんやと!? そいつ、ガンドに喧嘩ふっかけた奴やんけ!!」


「え……っ?? そ、そんな……!」


「……まさか、復讐とかか……? なんか思い当たる事ないか??」


「……」


「……お、おーい??」



「……わ……わたしの……せいで……っ」


───────────────────────




「……一応聞いたんやけど、どうやらヘマやってフォリがやられかけた事があるらしいんや。……それを根に持っとるんやないか、と」


「……なるほど」


言いようのない感情に囚われる。

上手く表現することは出来ないし、する必要はない。ただ、今は……


「俄然やる気が出てきました」


ただただ、勝つ事だけが頭の中にある。


「……せやろな。やけど、感情に流されんなよ。がむしゃらに突っ込んだら負けるで」


「わかってますよ、それくらい」


「ほんまか〜?」


雷羅さんが、すごい訝しげな顔をして、指で頬をつついてくる。


「大丈夫ですよ」


「……ん〜。まぁ、期待しとくわ」



その後、雷羅さんとも分かれ、俺は自分の部屋に戻った。



それから、フェターリアや、瞳や、トレイルの事を思い返してみた。


「……皆いい子だけど……」



彼女達は、それぞれ色々抱えているのかもしれない。

俺は彼女達の事をほとんど知らない。……俺が見てきた彼女達が、本当は内面を見せてはいなかったんじゃないかと思ってしまう。


ただ、それは俺が彼女達に守られる事に甘んじる理由にはならない。


「……やるんだ」


彼女達に、これ以上頑張らせないようにしたい。

自分を抑えなくていいように……。



……俺は強くなった。

今なら、エオリカともまともに戦えるかもしれない。



守るんだ、この力で。


「……守ってみせる」

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