ドジっ子社畜のポンコツ女神さまが昭和の不良コンビの転生を担当した件
どろ
第1話
女神稼業に夢見てるヤツ、いる?
いねえよなぁ!!?
……失礼しました。
私は転生を司る女神、リリエール。
異世界転生――。
もう、珍しくもないですよね。
最近の転生者様は、ゲームとかラノベとかでしっかり知識を仕入れているから、「お約束」はバッチリ心得ています。
だから私たち女神のお仕事も、転生の説明なんか三行でOK!
ぱぱっとスキルを付与して、ちゃちゃっとゲートを開いて、はいおしまい!
ぶっちゃけ、マニュアル通りのルーティンワーク!
……だったはずなのに!
なんでこんな事になったんだろう。
今回はそういうお話。
* * *
「リリエール、『ニコイチ転生推進プロジェクト』の担当、あなたに任せることにしたから」
ここは「転生協会」の一室。
上司から告げられた言葉に、私、リリエールは、完璧な笑顔で背筋を伸ばしつつ、胃袋は雑巾絞りの刑に処されていた。
ニコイチ転生……?
また協会の上層部が思いついた、よく分からない新企画だ。
(は?ニコイチ?なんかもう、地雷臭しかしない……)
ちょっと前に私が担当した、少し規格外な転生者の影響で、現場の裁量が増えたのはいいけれど、ランチの会話で思いついたような、意味のわからない企画が突然ふってくるようにもなった。
特に私に!
「は、はいっ!わたくしめが、しかと担当させていただきます!」
末端ヒラ女神の悲哀、プライスレス。
あぁ、胃薬、多めに買ってこないと……。
「それで、どのような方を?」
恐る恐る尋ねると、上司は一枚の資料をヒラリ。
「そうね、固い絆を持つ『コンビ』。日本の『80年代後半』あたりの。なかなかユニークな人たちみたいよ?」
(80年代後半……日本……?)
パラ……。
資料を見て、思わず「ひっ!」って声が出た!
何この格好!
目つき悪すぎ!
髪型ヘンすぎ!
ズボン太すぎ!
ユニークな人たち?
「ツッパリ」とかいうんだっけ?
二人とも、どう見てもただのチンピラなんですけど……。
「あ、あの、この方々、本当に絆が……?データの間違いとかじゃ……?」
「大丈夫よ。データ上はね。まあ、多少、個性的かもしれないけど、そこは担当女神の腕の見せ所。ね、リリエール」
上司はにっこり笑って私の肩をポン。
……その笑顔。
絶対に面倒事だって分かってるくせに。もう……。
「あ、そうだ」
上司が付け加える。
「最近『スローライフ希望者』が増えてるけど、あちらはちょっと問題が渋滞しててね。だから、しばらくはこっちに専念しなさい」
問題が渋滞……まあ、私には関係ない。多分。
それよりこのツッパリ担当の方がよっぽど問題だ……。
「しょ、承知いたしました!このリリエール、全力で任務にあたらせていただきます!」
こうして私は、80年代後半の日本へ、とんでもなく重い足取りで向かうことになったのだった……。
あーあ、気が重い……行きたくない……。
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