別れはいつまでも

砂名御園

第1話

初恋の人に振られた。

子供の頃の約束を守ってくれていた彼。

いつも優しくしてどんな時でも味方になってくれた優しい彼は中学卒業と同時に私を振った。

好きな子ができた、それなら別によかった、自分の軽率な言葉で縛ってしまった彼、幸せになってくれるなら私も幸せだった。

彼は卒業後引っ越しをする、私には告げられていない、知ったのは当日、母から聞かされて慌てて走った彼の家。

そこはもう何もない静かな場所だ。

何もない、誰もいない、彼はもう行ってしまった後だった。

母に何故当日まで教えてくれなかったのかと聞いた。

彼から口止めされていた、そう言われた、彼女でもない私に見送りにこられたら困ったからだろうか、悲しかった、だけど母は続きを話してくれた。

「あいつには悪いと思ってます、こんな形で別れることになってしまって、でもきっと遠くの俺なんかを想っているよりもあいつを側で幸せにしてくれる、そんな人に出会って欲しいから、あいつには言わないでくださいね、聞いたらきっと心のどこかに俺が残っちゃうんで」

聞いたって聞かなくたって残ってるよ、優しくしてくれたあの日々も一緒に悲しくでくれたあの日々も忘れることなんてできない程私たちは一緒にいた。

子供の頃の私に言ってやりたい、軽率な言葉で彼を縛るなと、いつか別れがくることを、彼が最後まで私のことを想ってくれていたことを、あの言葉さえなければ私たちは笑い合って最後を迎えられたかもしれないのに。

その静かな場所では自分の小さな声さえ聞こえてしまう、早々と帰ろう、そしたら少なくとも誰かにこの小さな声が聞こえることなどないのだから、そう思いながら後ろを振り返ると彼は立っていた。

「泣いてるのか」

「泣いてないよ」

「俺が泣かせたのか」

「泣いてないってば」

泣かないようにしていた、泣いてなんていないと自分では思っている、だが正直わからない、自分は今泣いているのだろうか。

「ごめん」

この言葉を聞いてなんと返事をするのが正解だったのだろう、なら引っ越さないで、別に気にしてない、それとももっと別の言葉があったのだろうか。

「謝らないでよ、謝ったって結果は変わらないんだから」

「うん、でもやっぱり、ちゃんと別れを言いたかった、そして伝えたかった、大好きだいつまでも、俺また帰ってくるから、お前の心がそれまで変わらなかったらまた…」

私は彼が全てを言い終わる前に彼の口を塞いだ。

「言わなくても大丈夫、またね、大好きだよ」

絶対に変わらないから。

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別れはいつまでも 砂名御園 @kanna2917

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