ドライブ

@nokishitanoneko

ドライブ

舗装された道を車が駆け抜ける。窓を開けずとも吹き抜ける風は感じ取れるものなのだ。


「何助手席の分際で黄昏てんだ」


隣から何か聞こえてくるがまあそれもドライブの味の一つだ。

前を見るとさまざまな車が走っている。それを見ているのも車好きの楽しみの一つと言えるだろう。


「────なあ」

「────おう」


「なんかキ〇ィちゃん走ってね?」

「なんかキ〇ィちゃん走ってるな」


俺たちの前をキ〇ィちゃんの顔をした何かが全力疾走している。

しかも右へ左へ縦横無尽。隣の車は非常に迷惑そうだ。


「あ、こけた」


ズザザザザザザァァァァァァ


「あ、追い付いてきた」


ズダダダダダダダァァァァァ


なんなんだろうかこの生き物。


「足速いな」

「足速いとかそういう次元なのか?」


キ〇ィちゃんの白い頭がボロボロだ。それでも走り続けるという強い意志を感じる。


「お、見ろよ」

「何?」

「横にイチゴちゃんが走ってる」


本当だ。イチゴちゃんが走っている。

何でイチゴちゃんって分かるかって?ご丁寧に張り紙が貼ってある。


『僕はイチゴちゃん♡キティちゃんの大親友♡』


「並走してるな」

「、ていうかキティちゃん逃げてね?」


本当だ。どう見ても嫌がっている。

右へ左へ動くキ〇ィちゃんに、それを追いかけ右へ左へ動くイチゴちゃんから全力で距離を取っている。


「片思いなのかな」

「そもそも思いとかあんのかな」


微妙だ。そもそも生命体なのかも怪しみたい。


「お、見ろよ」

「なんだ?」


「五郎くんが追いかけてきた」


本当だ。五郎くんが追いかけてきてる。しかもすごい泣いている。


「すごい泣いてるな」

「でも足すげー速いな」


だからそういう問題なのだろうか。

あ、なぜ五郎くんだと分かったのかって?ご丁寧に張り紙がしてあるからだ。


『僕は五郎くん♡イチゴちゃんだーい好き♡』


「イチゴちゃん大好きなのか」

「ここも一方通行か?」


よくわからない生き物にも恋という感情はあるらしい...


「────いや」

「なに?」


「よく見ろ。イチゴちゃんと五郎くんの紙、筆跡が同じだ!」

「............えぇー」


筆跡が同じということは、誰かがあの紙を書いて張り付けたということだ。


「泣きながら追いかける五郎くん、嫌がるキティちゃん、その中心にいるのは、常にイチゴちゃん!」

「うん」


「五郎くんからあふれ出るいじめられっ子感!きっとイチゴちゃんに何かされていて、あの張り紙もその一環に違いない!」

「うん、そうだな」


キティちゃんが嫌がっているのもあの張り紙が虚偽ということを考えればいろいろと説明はつく...まだわからないことが多いがとにかく...


「────なあ」

「────なんだ?」


「とりあえず警察呼ばね?」

「................そうだな」


警察に電話をかけた。


『はいこちら110番』

『あ、すみません。道路上でキ〇ィちゃんが走ってるんですけど』

『キ○ィちゃ...?と、とりあえず場所の報告をお願いします』


場所、場所か。


『えっと、○○スーパーの近くです。』

『○○スーパー...?あー!あの辺広いですよね!どの道ですか?』

『えーっと、△△トンネルにつながる大きい道です』

『あー△△トンネル!えーと、それじゃああの道とこの道が繋がって...』

『.........』

『○○スーパーがここだからえーと、そのー』

『...............』

『この道がああで、あの道が...えーっと』

『.....................』

『...えー、どこでしたっけ?』


俺はそっと電話を切った。


「え、警察どうだったの?」


隣の友人は問いかけてくる。

前には走るキ〇ィちゃんとその他二匹。

日が沈んできて空は赤色に染まり、そんな空にカラスの鳴き声が響く。


「日本、大丈夫かな......」

「未来はカァらねぇってか」

「うるせぇ」


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