09 また、地上で出会う日のために
俺たちは結局、ずっと説明をした男の名前を知ることがなく地上行きの最後のエレベーターに乗るだけだった。
最後の――というのは、俺たちを乗せた時点で動かなくなるという意味だ。
「なんだか不思議な時間だったね~」
「だな」
「あ、そういえば血は止まった?」
「アホか! そんなのとっくに止まってるっての!」
こいつはアレだ、天然すぎるんだきっと。
ジオフロント計画跡地、それと大深部の人間たち――地上のAIが学園を作り、共存社会を謳っている世界、か。
正直言って難しくてごちゃごちゃしたのは嫌いだ。でも、大深部には旧世代を知る人間たちがいて、地上へ戻ろうともがいている。
それを託されたのが旧世代でも新世代でもない俺。
俺がAIに反抗して世界を上手くコントロール出来れば、その時は異能持ちの奴や異世界帰りの奴も上手く共存出来てしまうんじゃないのか?
そしてそれを可能に出来る力を俺は有している。
そのためには……
「……莉々は世界を救うとか、簡単に考えてないよな?」
「簡単簡単! 逸器って無敗でしょ? それで、わたしは癒しの異能が使えちゃう! どうする~? 付き合っちゃう?」
「いや、莉々のことよく知らんし」
「教えてあげちゃおうじゃないか! しか~し! その前に、やらないといけないことがあるのだ!」
「ああ、だな」
地上行きのエレベーターの出口は、学園の中枢に着くことが分かっている。
――つまり、俺と莉々は到着したと同時に戦いの中に身を投じることが確定している。そこにはAI教師はもちろん、異能持ちの優秀な連中が待ち構えているはずだ。
そして俺は――最初から全身魔装で突破する。
まずは突破する、それから学園から脱出して……ありとあらゆるAI関係をぶっ壊す!
それが始まりで初めての救いとなっていく。
いつか大深部の大人たちと再会するその日までに。
「よぉし、じゃあ、いっくよ~!」
莉々は逞しさ全開でリアルタイムライブ配信をしながら、俺の戦いっぷりを見せていくらしい。
そうすれば、地上世界の奴らも知ることに繋がるものとして。
「わたしと違って落第生だけどさ、逸器には将来性がある! だから期待してる! じゃんじゃん倒しまくれ~!」
「……お前も頼むわ。莉々がいないと多分、駄目っぽいからな。だから、一緒にいつか救える日を楽しみにして頑張るぞ!」
「お~!」
何が正しいのか、正しくないのか。
俺と莉々の二人で世界に逆らい、そして救う……それはまだ始まったばかり。
絶域の魔装を手に入れた学園落第者、世界に逆らい救世主となる 遥風 かずら @hkz7
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