04 元バーサーカー、無敗の意地を見せる 2

「いっ――てええええええええ!!!」


 余裕を持って目の前の敵、機械兵の方だが、そいつらに突っ込んで思い切り拳を命中させたまではよかったが――硬すぎて悶絶中だ。


「……はぁ~あ。だから言ったのに。ねえ、逸器? わたしが出ようか?」

「いいって! 莉々が出る幕はないから、大人しくそこで見学しててくれ」

「変なところで強情すぎん? ま、別にいいけど~」


 精霊の気配を臭わせている学園関係者らしき連中は、まさか単独で突っ込んでくるとは思っていなかったようで、戸惑いで動きを止めている。


 だからこそこいつらが戦っていた機械兵に突入出来たわけだが、思いの外装甲が硬すぎて拳が早くもやられそうだ。


 異世界で培った頑丈さをもってすれば装甲がどんなに硬かろうと、何度も同じ箇所をぶん殴れば必ず崩れる――はず。


 そう思いながら三体いる機械兵の中心部分を殴り続けている。


「……オマエ、何者……ダ? ソレは、ワレワレが壊スベキ個体……ジャマ、するナ!!」

「うおっ!?」


 精霊気配の奴らも攻撃に加わり、俺と機械兵に向けて交互に攻撃を仕掛けてきた。幸いなことに武器を使用しての攻撃ではなく、どいつもこいつも拳による攻撃をしてきている。


 ……ちっ、大人しく見物してると思っていたのに俺にも攻撃してきやがるとは空気の読めない奴らめ。


 機械兵三体のうちの一体は俺の拳攻撃で動きが鈍ってきたが、奴らがちょっかいを出してきたことで自動修復で動きがまた早くなっている。そうなるとジリ貧になって、俺一人だけが損をするうえ負傷してしまいかねない。


「逸器~? 参戦しよっか~?」

「引っ込んでろ!!」

「酷くない? わたし、か弱い女子! もっと優しく注意して欲し~い!」

「……おしとやかな莉々ならもっと静かに待てるよな? 俺はそういう莉々も好きだぞ」

「告白は嬉しいけど、苦し紛れの告白は嬉しくないんだけどな~?」


 面倒くさい奴だ。


 だが、このまま出てこなければかえってやりやすい。 


 ――ったく、莉々もこいつらも俺を舐めてるな。異能みたいなもんは備わってないが、俺にはそれ以上の武器があるってことを思い知らせてやろうか?


 ふぅっ……に戻ってきてから一度も装着してないが、特別に指一本分だけ着けてやる。


 こいつら相手程度なら指一本でも充分だ。


 鉄パイプ丸出しの機械兵からの攻撃は単調で、リズムよく頭を下げるだけで済んでいる。だが、他の連中は変則的に拳を繰り出してきていて今は肘で防戦するのが精一杯だ。


 現状は三竦さんすくみ状態が続きまくりで、劇的な手がない限り膠着状態から抜け出せなくなっている――のだが、未開発エリアの地下のせいか、未舗装の崩れやすい土壁が露わになっている。


 そのうえ、拳の振動の影響で土壁が崩れ落ちているような気が。


 ……機械兵は人じゃないからこの空間が崩れても問題ないだろうが、俺や莉々はそうじゃない。出来れば空間ごと崩れてしまうのは避けたいが、そうも言ってられなくなってきた。


 連続した拳の攻撃は人であれば少しずつダメージが蓄積される。疲労は感じていないが、拳は機械兵のような装甲がない。


 そうなると時間をかければかけるほど、俺だけが不利になる。精霊気配の奴らからは拳による物理攻撃はきていなく、空気を切る動きだけがきている状態だ。


 真空の刃のような細かすぎる切り傷が出来ている程度で、致命的なダメージにはなっていない。この際奴らは無視して、機械兵を破壊するのを優先させた方が俺にとっては楽になる。


「――よし、やってやる!」


 人差し指に異世界から持ち帰った指輪を装着、使う属性は無に固定。ダメージメモリー数の調節は……通常100とするなら、今は30程度で問題ない。


 指輪のダイヤルを動かすと、人差し指を中心に熱を帯び始め――手から手首、腕にかけて力が増幅していく。


 力が上がった状態で目の前の機械兵、それと奴らと交戦中の機械兵にも正拳突きで命中させた。


 グシャ、という鈍い音が二度ほど響き、機械兵は全て活動停止。その時点で土壁の崩れも収まった。


 これで残るは精霊気配の奴らだけだ。


「――!! ナニヲ、シタ!?」

「キケン、キケン……」

「ええええっ!? さっきまで弱そうだった逸器がどうしちゃったの~?」


 ……などと莉々からの悪口も混ざっているが、これで戦いやすくなった。


 あとは奴らだけ。


 おそらく魔装強化攻撃は必要ないはずだ。

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