第1-2話 どきどきっ☆学校初日!! (前編)

 私はこれから毎日、お姉ちゃんと一緒に登校するの。私だけのお姉ちゃんを、盗らせるわけにはいかないからなの。

「友達になれそうな人は見つかった?」

「うーん、なかなか見つからないの。」

いや、一人居たの。遣ちゃん。自分より少し大きいけど、可愛いの。

眼鏡をかけていて、おっとりした雰囲気の子。私と話しているときすごくどもっていたけど、人と話すのが苦手なのかもしれない。でも私は彼のことを気に入ったの。私は遣のことを気に入ったの。今日から毎日話しかけて、仲良くしていきたいの。

深夜降っていた雨の匂いがまだ残っている、湿った地面。その地面は私の足を滑らせるかのように悪戯いたずらな濡れ方をしている。

私は私だけのお姉ちゃんと話している間、私だけのお姉ちゃんと話す時間を邪魔するように脳で今朝見た悪夢がこだましていたの。

私が血で構成された液体の服を着ていて、地面は溶けたチョコレートで出来ていたの。奥が見えないほど暗闇が続いている場所。空中には無数の鹿が浮いていたの。その鹿群をかき分けるかのようにお姉ちゃんが頭からすごいスピードで落ちてきて、地面に激突して死んじゃうの。

そして鹿群は段々私が着ている液体の服みたいになって、その後骨だけになってしまう、そんな夢だったの。

私はそんな悪夢を脳から振り払おうとお姉ちゃんの事で頭を満たしたの。

それでも、その悪夢はN極みたいに離れてくれなかったの。


 玄関、下足室。下足室の掲示板には、何処のクラスに誰が居るかの紙が貼られていた。私は8組。(18組までクラスはある。)出席番号は11番だったの。遣ちゃんと同じクラスで、少し嬉しくなったの。

私は学園の四号館、2階へ向かった。下足室がある一号館から2階へ上がって、東渡り廊下を渡って3号館に行って、そこから1階に下がって南渡り廊下を渡れば四号館に着くみたい。なんでこんなに複雑な行き方にしたのだろう、この建物を建てた人は。

私が一号館の西渡り廊下を渡っているとき、遣ちゃんに出会ったの。その時遣ちゃんはとても良い笑顔だったの。私がこの笑顔を見たとき、少しちゃったの。でもその笑顔は何故か、何か変な所があったの。中身のない、空っぽな、だったの。

その形骸的な部分を見つけたとき、私の心はひどく固くなってしまったの。

でもその数瞬後、その固さはぐんと柔らかく戻ったの。

「お、おはよう…」と遣ちゃんが挨拶をしてくれたの。

私も「おはよう」と返す。その時、ニコッと微笑む。

その時、遣ちゃんの顔が照れたように赤くなる。あまり喋るのに慣れていない様子なの。

「同じクラスだね。これかよろしくね。」と、私。

よろしくね、と、遣ちゃん。

少しずれた眼鏡を、薬指で直す仕草をしていた。

それから6分ぐらい歩いて、教室に着いた。着くまではあれ以上一言も喋らなかった。


1-4 どきどきっ☆学校初日(中編)へ続く

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