WITCH 猫耳メイドと不老魔女
秋月灯
第1話
魔女と暮らし始めた。僕はメイドとして雇われた。そして、転生した。
転生前はごく普通の生活をしている大学生だ。特別何かに熱心というわけでもなく、しかし、満たされていないわけでもなく、平凡で平坦な人生を歩んでいた。何で死んだかはよく覚えていない。というかどうでもいい。なぜなら、僕が大好きなエロゲーの世界に転生したのだから。
魔女。魔法を操る彼女らは、人から恐怖の対象となっていた。理由は幾つかある。けど大半が宗教での教え。つまり聖書に魔女は駄目と書かれていたら駄目なんだ。この国のほとんどの人は入信していて皆が魔女を毛嫌いする。見せしめに火炙りをするなんて日常だ。すごく惨い。親は当然入信していて勧誘という名の洗脳教育が辛くて家を飛び出した。齢7歳にして暗闇の森の中で彷徨う。寒さに身を震わせて風向きに歩いていく。足裏の感覚は既に無く、もはや歩いているのは風に飛ばされているのか分からない。目が霞んで眠気がやってくる。足を崩して力なく倒れる。地面が僕の体の体温を容赦なく奪っていく。
「貴方、こんなところで何してるの?」
幼い声が何処からか聞こえた。疑問よりは諦観の声だった。
「さむい。暖かいのが欲しい。」
「アタシは貴方を助ける義理はない。助けて欲しかったらそれなりの報酬を寄越しなさい。」
「ほう、しゅう?」
「そう。例えば貴方の体をアタシに売るの。アタシの為に働きなさい。」
「うん。h、たら、k。」
この後の記憶が無い。おそらく気を失ったのだろう。気付いたら寝室にいて、聴力が過敏になっていた。ここにあの幼い声の人はいないはずなのに、僕が起きたことに気づいて声をかけてきた。
「調子はどう?足裏は壊死してたから治しといた。」
「質問がある。」
「なんだ?」
「なぜ貴女の声が聞こえる?」
「ん?」
「なぜ聴力が異常に良くなってる?」
「あぁ。理解したぞ。なら耳を触ってみろ。」
僕は耳を塞いでみる。頭の斜め上に手を置いて異常がないか確かめる。違和感を感じたが特に異常は見当たらなかった。足音が近づいてきて、ドアが開く。
「はじめましてだな。アタシはイヴ。永劫の時を観測し続ける不老の魔女だ。」
声の通りの幼児のような人が現れた。魔女のような服装ではなく、ラフな格好で部屋着を着用しているようだ。
「アダム。7歳。助けてくれてありがとう。」
イヴは不思議そうに問いかける。
「お前はアタシが魔女と知っても恐怖しないのだな?」
「僕は宗教に入ってないし、自然の摂理がどうのこうのはどうでもいいから。」
僕の回答に貴女は吹き出すように笑い出した。
「面白い!お前みたいなのは世の中探しても、そう多く無いだろう。気に入った。お前、アタシのメイドになれ。」
そうして僕はメイドになった。
WITCH 猫耳メイドと不老魔女 秋月灯 @akiduki-tomori
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