願望
シアン
つめたい
昔何かで見た。
死体に吐しゃ物が詰められていた。
それは人間だったのか。
何かになっていた。
何かに。
忘れられない何かに。
俺は、ただ、何をするか決めていないまま、大学に入った。
そして、何もしないまま4年が過ぎた。
みんな就活に明け暮れている。
俺は何か出遅れた気分になってしまった。
俺だって頑張っている。
頑張って、履歴書書いて、面接の受け答えを想定して、面接に臨んで。
そう、頑張っている。
でも、内定なんて一つも、もらえやしない。
こんな出遅れた状態が続くとさすがにストレスがたまる。
もう嫌だ。
そう思い、しゃがみこんだその時だった。
「大丈夫ですか?」
上を向くとスーツの女がこっちを覗き込んでいた。
「あぁ、大丈夫です」
大丈夫なんか聞かれたらそう答えるしかないだろ。
心の中で悪態をついた。
「本当ですか?なんか具合悪そうで...そうだ。近くに公園があるから、そこまで一
緒に歩きましょう。」
俺はその言葉に甘えてしまった。
「これ、そこにあった自販機で買ったものです。開けてないんで、良ければどうぞ」
彼女はペットボトルの水を俺に渡してくれた。
俺はそれを開けもしなかった。
「俺...就活頑張っているんですけど、大学4年で内定1つももらえ
ていなくて...」
この人になら相談してもいいかなと思ってしまった。
「そうなんですか。何なら私も4年生ですけど、ひっとつももらってないんですよね~」
相談してはだめだったかもしれない。
「あ、なんかすいません」
「いえいえ、謝ることじゃないですよ~ この時期でもいますよ。普通に。お互い頑張りましょう!」
なんか同じ状況で大変なのにも関わらず、励まされてしまった。
「ありがとうございます。正直、まいってたのでそう言ってもらえて嬉しいです」
「そうですか!そうだ!お互い頑張ろうということで飲みにでも行きませんか?」
驚いた。まさかこんな展開になるとは。
「いいですね。最近なんかあんまり飲んでも楽しくなくて...」
「じゃあ、行きましょう!何なら面接での愚痴を喋っちゃいましょう。」
そういって俺らは居酒屋へ行った。
酒がすすみ、俺は飲みすぎてしまった。
「大丈夫ですか?さすがに飲みすぎてしまいましたか。近くに私の家があるのでちょっと寄りましょう。」
そう言って彼女は俺を家に連れていきトイレに連れて行ってくれた。
「吐いてもいいのでそこでゆっくりしててください」
俺は飲みすぎて吐いてしまった。
なんか違和感があった。吐しゃ物が流れない。トイレの水を流そうとした。
ガンッ
いたい。
あつい。いきが。
くるしい。
なに?
..............
とりあえず、頭はぐちゃぐちゃになってはいない。
私はほっとした。
今日はラッキーな日だった。
まさかこんなにうまくいくとは。
良かった。トイレの水を流す前に戻ってきて。
せっかくビニール袋敷いたのに詰まっちゃうじゃん!
命がなくなった人にこうやって満たしていく行為は何かゾクゾクする。
「いつまでできるかなこれ」
永遠にできるとは思っていない。
いつか逮捕される日が来るかもしれない。
それまでに沢山沢山満たさなければ。欲望を。
そんな彼女の部屋には、吐しゃ物が口に詰まった亡骸が4体と吐しゃ物と思われる袋が何個もあった。
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