1944ドイツ最後の革命

ホフヌンク

第一話 親衛隊の築く世界

          1944年4月8日ベルリン SS本部褐色館

連合軍が迫る中、ベルリンでは最後の希望が密かに動き出していた——


「ほう、君が噂のリヒャルト・チュソビチナですか。」

 そう冷徹に言い放ち正面の椅子に座るは国家保安本部長官・諜報部長官にして親衛隊大将であるラインハルト・ハイドリヒ。同じ同胞を敬う言葉遣いと美しい顔の裏には容赦ない冷徹さと鋭い観察力が隠れていた。

「はっ!リヒャルト・チュソビチナSS少佐でございます。」

 若さが滲むその声を受け流しながらハイドリヒはチェソビチナの経歴を睨む。

「1918年ベルリン生まれ、ですか。中々のエリートですね。ベーメン・メーレン保 護領赴任とは.....二年前の私と同じですね。」

 二年前、副総督として赴任するもイギリスの特殊部隊により爆殺未遂が発生した地。だがハイドリヒに苦々しい思いはなく、爆殺事件から奇跡的に生還した彼は、復讐の鬼と化していた。

「この戦争には必ず勝利しなければならない。だがこのまま戦えば必ず敗北する。君は協力してくれますか?もちろん、ただの協力ではない。ドイツとアーリア人を救う為の帝国最後の革命です。」

「......!」

 チェソビチナはまさに死を覚悟した。だが、その冷たい眼差しの奥に、自分と同じ理想を宿していることを感じた。革命に加われば失敗する恐れがある。だが断ればこの場で首が飛ぶのも確実だ。例え、リスクが高くても少しでも成功の確率があるのなら策を張り巡らし勝利へ導くことをモットーとしていた。事実、それで戦果を上げてきたのだ。

「分かりました。真のドイツの為、死力を尽くします。」

 チェソビチナはついに死地に足を踏み入れた。この先、とてつもない困難が立ちはだかることを既にチェソビチナは見抜いていたのだ。

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