第5話 防御魔法
思わず口が滑ってしまった。
あまりに順調すぎてあんなことを聞いてしまった。
私の代わりに死ねるなんて、まだ出会って一週間も経ってないのに聞くようなことじゃなかった。
しかし、そんなとんでもない質問なのにネルは真摯に答えてくれた。
少し戸惑いを見せながらも、ネルのその真剣な瞳に目が奪われた。
私が求めていた目がそこにあった。
でも、少しだけ胸が痛かった。
「何でだろう……」
自室のベッドに寝転びながら小さく呟いてみる。
何で少し罪悪感を持っちゃったんだろう。
死にたくないんだから他者を利用するのって当たり前じゃない?
私は両頬をパチンと叩き、思考を切り替える。
ベッドから起き上がり、机に置かれていた紙を取り出した。
『魔法使い ネル』と書かれた紙切れ。
その紙切れにはネルの情報がビッシリと載っていた。
ネルの性格と傾向がそこには載ってきた。
「んー……」
紙切れを見つめながら小さく唸る。
うーん、まだ早いかなぁ。
そろそろ自爆魔法を覚えさせたいところなんだけど……。
私は紙切れと睨めっこしながら考える。
私の代わりに死んでくれると言ってくれたネル。
そんなネルなら自爆魔法ですら、ホイホイ覚えてしまいそうな危うさすらある。
そうなれば、あまりに簡単すぎる自爆特攻要員ができあがる。
「……まぁ、後でもいっか」
私は紙切れを投げ捨て、再びベッドに戻った。
明日は防御魔法を中心に練習してもらお。
私を守ってもらわないと困るからね。
あの魔力量なら期待大だ。
*
次の日、私はいつもネルが練習しているという練習場に向かった。
まだ朝だと言うのに、練習場にはネルがいた。
すっごい。めっちゃ真面目だ。
「え、えーっと、メガファイヤー!」
ネルはチラチラと魔法書を見つめながら魔法を発動させる。
魔法は的まで高速で飛んでいき、的を消し飛ばしてしまった。
森で放った魔法より遥かに出力が抑えられていた。
それにコントロールも完璧だ。
ここまで出力を制御できて尚且つコントロールも抜群。
多分私が拾わなくても誰かが拾ったよね。
私は幸運だったみたい。
「ネール! おはよう」
私はネルの背後から大きく手を振った。
ネルはすぐに私の方を振り返り、笑顔で手を振り返してくれた。
プレゼントの首輪は紐が切られてないまま、長すぎて地面に落ちていた。
私はネルの元へ歩き、ネルも私の方へ走ってくる。
「ど、どうしたんですか? 今日は何も無い日ですよね?」
「うん、まぁそうなんだけどね」
私は地面に着いている首輪の紐を握る。
ネルはその様子を無言でまじまじと見つめていた。
「ネルには覚えて欲しい魔法があってね」
私はそう言って事前に買っておいた防御魔法の魔法書を取り出した。
*
あれから数時間。
ネルは熱心に防御魔法を練習してくれた。
私はその様子をただ見つめていた。
まぁ私ってこれ以上強くなる気ないし。
そもそも死にたくないんだから全力出す前に逃げるしね。
「ふぅ……疲れました……」
ネルは一通り魔力を使い果たすと、私の隣のベンチに腰を下ろした。
練習場の隅っこで二人並んでどこかを眺める。
「どうして急に防御魔法なんですか? もっと派手な魔法の方が使えませんか?」
すると、ネルは私にそんな質問をしてくる。
ここで「私を守ってくれるために決まってるじゃん」とか言ったら好感度下がりそう。
「うーん、まぁネルに傷ついて欲しくないからかな。ネルが一番大切だからね」
私は言葉を選びに選び、笑顔を作ってそう答えた。
すると、ネルは頬を紅く染めて俯いてしまう。
「あ、あのっ……ミラさんはこういうの初めてなんですか?」
すると、ネルは唐突にすっと私の右手に手を被せてくる。
予想外のアクションに少し固まってしまう。
温かいネルの体温が手に伝わり、思考が鈍化するような感覚になる。
「……え? こういうのって?」
「そ、それは……女の子同士で……その……」
そう尋ねるとネルの私の手を握る力が強くなる。
めっちゃ緊張してるみたい。
どうして緊張してるのかは私にも分からなかった。
質問の意図もよく分からない。
「あー、うん、初めてだよ」
私はよく分からないまま、なんか良さそうな返事をする。
初めてってやっぱりいいよね。
よく分からないけど、なんか好印象だし。
「そ、そうなんですね……ふふっ……」
私の期待通り、ネルは嬉しそうに頬を緩ませていた。
どうやら正解を選べたようで何よりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。