第十七話 『違和感を感じる』


「よっし、これで全部の職業をゲット出来たかな。」




 俺は、あれからもう三回程五次元間を転移して、「同調」を使用することで職業を増やしていってた。


 これで、俺は職業候補だった五つの職業は全て所持していることになる。




『まあ、流石にそんなうまい話は無いのさ。』




 く、クルトの奴、せっかく俺がさっきのことを忘れようとしていたというのに水を差しやがって。


 まあ、確かにこの世界に召喚されてからのというもの何だかんだ言っても運は良すぎたし、ここらで一つ不運が降りかかって来てもおかしくはないよな。


 それでも、あのダンジョンで死にかけてまでして上げたレベルがほとんど無くなったという事実は、俺の心に浅くない傷を付けた。




「もうちょっと使えるスキルだと思ったんだけどな。」


『自分でちゃんとスキルの説明を読まないからなのさ。頭の中に流れてきた「世界を跨ぐ者」の説明を鵜呑みにするからなのさ。』




 ぐうの音も出ない。


 確かに、もう少ししっかりとスキルの説明を読んでおくべきだった。


 まあ、読んでいたとしてもきっと俺は同じことをしていただろうけど。





「同調」


自身と他者の二人の人格、身体能力、ステータス等を同調させ、等しくする。


このスキルを使用すると、お互いの人格に等しく大きな影響を与え合う。


もしお互いの人格があまりにも違った場合、お互いの自意識が保てなくなる可能性がある。


また、お互いのステータスは共に二人の平均値になるが、片方しか持っていないスキル、職業は持っていないもう片方にも与えられる。





 非常にハイリスクハイリターンだ。


 自分自身と「同調」を使用したから良かったものの、もし他人とやっていたら俺は自意識が保てなくなる可能性があったということだ。


 安易に使えるスキルではないな。


 まあ、俺同士で使用したからそこまで問題は無いのだけれども。


 それよりも、ステータスが大幅に下がってしまったことが何よりも大変だ。


 今や俺のレベルは、レベル12の俺と四回「同調」したた為レベル13まで落ちてしまっている。




「よし、切り替えていけ、俺!」


『その意気なのさ。』




 シャーロッタさんにはなんだかんだで借りがある。


 なるべく俺が「生還者」を持っていることは伏せておくくらいのことはしても良いと思う。




《偽装を発動します。》




 俺は持っている職業一覧から、「生還者」だけを消す。


 これで、俺の職業は四つに見えるはずだ。




「みんな、職業はもう決まったかい?」




 俺がステータスとのにらめっこを終えた時、登場した時と同じ場所からペテラウスさんが話し始めた。


 大声を出す素振りは無いのに、実によく通る声だ。




「そろそろ、みんなの戦い方を確認したり、選んだ職業に慣れる為に、君たちで模擬戦をやってもらおうと思うんだけど、準備はいいかい?」




 そういえば、俺との別れ際にそんなこと言っていたな。


 「世界を跨ぐ者」を模擬戦で利用するというのは難しいけれど、対人戦を練習で実施するというのには賛成だ。


 クラスメートにスキルを使用するというのは気が引けるけれど


 大半のクラスメートたちは小さく頷いている。




「じゃあ、あっちの格闘場に行こうか。騎士団のみんなが戦争に駆り出されちゃって、あそこは最近使われてないんだよね。」




 向こうにあるミニコロッセオ風の場所を指しながらペテラウスさんが言う。


 それに合わせて、周りの騎士の人達が俺たちを先導する。


 そして、俺たちは本来は選手たちが待機しているであろうベンチに案内された。


 目の前には当然ペテラウスさんが居て、俺たちを見回している。




「対戦相手はくじ引きでランダムに決めるから。」




 そう言って、ペテラウスさんは横に置いてあった机の上から、上部に穴が開いている箱を手に取った。


 そして、その穴から二枚の紙を手に手に取った。




「えー、一回戦目に戦うのは、ササキバラシンゴ君とキヨハラショウスケ君だ。二人とも前に来てくれないかい?」




 ま、マジか。


 確率どうなってんだよ。


 それに、相手が佐々木原とか物凄くアンラッキーだ。


 まあ、頭の中で文句を垂れているだけで体はペテラウスさんのところに向かっているんだけども。




「いいかい、ルールは簡単。相手を場外に出せば勝ち、降参を宣言させても勝ち、戦闘不能にしても勝ちだ。ただし、相手に致命傷を与える程の攻撃はNGだよ。」




 俺たちは、半径十メートル程の円形の石畳の中央で向かい合っている。


 佐々木原は戦う気満々の様子で、今にもこちらに走って来そうだ。




(いやいや、みんな状況を飲み込むの早くない!?佐々木原も、人生で初の対人戦だろうに堂々とし過ぎじゃないのか。)


『観念するのさ。ちなみに、オイラもこの試合は観客に回るのさ。』




 そう言って、クルトは葉山の方に跳んで行った。


 あのぬいぐるみくらいの体の何処からあんな脚力が出ているのだろうか。




(やるしかないか)




 そう思い、俺は佐々木原と真正面から向き合う。


 若干佐々木原の雰囲気がいつもと違う気がする。


 何となく、目に活力が無い様な。


 今にもこっちに走って来そうな強い戦意は感じるんだけども。


 まあ、そこまで交流がある訳では無いし、無視しても問題ない違和感だろう。




「では、試合開始!」




 ペテラウスさんのその声を合図に、俺たちは同時に走り出した。





.......................................................




..............................




..............





『全く、キヨハラ様はもう少し積極性が必要なのさ。ハヤマ様もそう思いますかなのさ?』




 クルトは今、清原の肩から葉山の肩の上に跳び移っていた。




『ハヤマ様?』




 返事が無いので、クルトはもう一度葉山に話しかける。




「っと、な、何かなクルト君?」




 焦った様に葉山は返事を返すが、クルトは不信感を拭い切れない。




(クルト君って呼び方のイントネーションが今までと違うのさ。)




 さっきまでは、葉山は地球から連れてこられたせいか、この世界と発音の仕方が誤差程度だけれど少しあった。


 普通なら気付かないくらいの違和感だけれど、クルトは普段からミリエルに下界の偵察等の任務を任されているため、どうにもそういう点に敏感だ。


 クルトはどうしても不審に思い、葉山の思考を読んだ。




「..........」


『ほへ?』




 思考を読もうとして、返答が来なかったことなど今まで一度としてない。


 人間ならば、たとえ無意識の内だったとしても何かしら考えているものだ。


 可能性としてあり得るのは、何者かによって葉山が思考出来なくされている可能性。


 もう一つは、クルトの思考を読む能力を妨害できるスキル等を持っている可能性。




「どうしたの、クルト君?」




 葉山の声は耳に入ってこない。


 葉山とは対照的に、クルトは思考の渦に飲み込まれていた。




(そして、ハヤマ様から思考を読むことを妨害された感触は無かったのさ。つまり、)




『は、ハヤマ様が、誰かから密かに攻撃を受けているのさ!?』




 葉山が何者かから攻撃を受けているという確信を胸に、クルトは急いで清原の元へ跳んで行った。





~あとがき~


シャーロットさん視点の話とは、若干時差があります。




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