ありあけの

彩葉

第1話

 まだ太陽の出ていない早朝が酷く苦手だった。寝起きが悪いというのもそうだが、始発に揺られて自宅へと帰る道すがら、どうしようも泣きたくなるあの時間が、脳裏にこびりついて離れない。

 夜に呼び出されて、朝一番に帰るという生活をしていた。付き合っているはずなのに、私たちが会うのは夜中だけ。悲しいし虚しい交際期間は、すぐに終わった。

 不摂生が祟ったのだろう。私はすぐに体調を壊し、そのままなし崩し的に彼とは別れた。なんとももどかしい終わりだった。

 久方ぶりの友達と朝まで飲んでいた。始発が来たものから離脱していく。そのうち私の路線にも始発が訪れた。先ほどまでの楽しくも緩い雰囲気から一転、まだ朝日の出ていない青い空が、私に暗雲を呼び込む。

 有明ありあけ

 つれなく見えし

 別れより

 あかつきばかり

 きものはなし


 彼はいつまで私の脳裏に居座るつもりなのだろう。

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ありあけの 彩葉 @irohamikan

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