第5話 エピローグ
セックスを終え、いろんな後始末を済ませたベッドの上でたわいのない話をするのが、僕は結構好きだ。嫌いな女の子はいるのだろうか。男の人は賢者モードとか言ってあんまり好きじゃないのかもしれないけれど、僕は女役だからか嫌いではない。
「極東では愛してるを貴方といると月が綺麗ですねって言うらしいですよ。貴方だったら愛してるってなんて言います?」
今日の議題は、そんなこと。
僕の問いかけに、
「……藪から棒に気色悪ぃ話をピロートークにするのやめねえ?」
「気色悪ぃですか?」
「なんていうかむず痒いだろ」
僕は結構好きなんだけどね。
だから、構わず僕は喋り出す。
「そうですか。僕はですね──」
「お前が話したいだけなんじゃねえか」
ツッコまれても気にしない。
僕は少し考えて、これにしようと思ったフレーズを口にする。
「貴方がよく眠れますように、とか、どうです?」
「はぁ」
あんまりウケがよろしくない。個人的には
この人はいつも夜に悪夢に怯えて泣きじゃくるから。
さて、僕は答えた。次は
「貴方はどう思ってるんです?」
僕はワクワクしながら
ややもして。
「……なんも思いつかねえし、思いついても言わねえよ」
「なんでです」
思いつかないはまだしも、思いついても言わないのは意地悪じゃないだろうか。
僕は口を尖らせる。けれども、
「いや、恥ずかしいだろう。普通に」
「えー」
「…………」
僕のブーイングにも口を真一文字に閉じ切ったまま、無言を貫き通している。
そこまでして言いたくないものなんだろうか。
「聞きたかったなー……」
僕はしょんぼりしてしまう。どんな形であれ、愛を囁いて欲しかったのだ。
落ち込む僕を見て、流石に少しは悪いと思ったのか、
「……俺は前から何度も言ってる、お前がいたらそれでいい。それじゃダメなのか」
「色気ないですね」
「な!?」
「飾り気がなくて、無愛想で──。でも、貴方のそういうとこ好きですよ」
素っ気ないけど、この人らしくていいなって僕は思ったのだ。
僕のあけっぴろげの好意に
「……お前、趣味悪ぃよ」
苦虫を噛んだようにポツリと漏らされるが、僕はそんなことは気にしない。
だって、この人が世界で一番好きなんだもん。
「蓼食う虫も好き好きですから」
「へぃへぃ」
もう諦めてしまったようだ。
「くだらねぇ話はおしまいにして、寝るぞ」
「はぁい」
僕は背を向けてしまった
「貴方がよく眠れますように」
これが僕の最大限のアイラブユー。届くといいな。
そう、囁いて満足して眠ろうとした時だ。
「──お前がいると安心してよく眠れる気がする」
ボソリと吐き出された言葉を僕の耳は確かに拾う。
「え?」
「なんでもねえよ」
聞き返しても、もう一度とは言ってくれない。
けれど、僕は確かに聞いた。
それはもしかしたらこの人なりの、僕のアイラブユーへの返し歌なのかもしれなかった。
────Good night and have a nice dream.
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