ある晴れた朝に

 よく晴れた朝だった。


 自治体指定の45リットルの可燃用ゴミ袋に、ちょうど四つぶん。

 中身は、細かく引き裂いた上に、新聞紙でくるんで、半透明のゴミ袋の外からは見えないようにした。

 収集時刻のおよそ3分前をねらって、ゴミ置き場に四つの袋を持ち込み、物かげからそっとうかがう。


 ほどなくして、紺色の車体が現れた。

 職員が、集められたゴミ袋を淡々と、ゴミ収集車に吸い込ませてゆく。

 1、2、3、4……。


 俺の出した四つのゴミ袋は、ほかの多くのゴミたちとおなじように、硬い金属の歯にかみ砕かれ、収集車の腹の中におさまっていった。


 俺はそれを見届けると、安アパートの自分の部屋に戻った。

 部屋はがらんとしていた。


 おとといまで、壁にすきまなく貼られていた、こっそり撮りだめた彼女の生写真は、もう一枚もない。


 拾ったり、拝借はいしゃくしたりしていた彼女の私物しぶつも、いまさっき、すべて処分した。


 音声データも、録画も、毎日書きつづった彼女への俺の愛の日記も、ぜんぶ消去した。


 俺はたばこを一本くわえると、ベランダに出た。

 ふーっと、吐息のように紫煙しえんをくゆらせる。


「さらば、我が恋……」

 つぶやいて、鮮やかな夏空に向かい、俺は、すがすがしく笑う。


 しかたのないことだった。


 俺は見てしまった。

 知ってしまったのだ。

 七夕の、星降る夜に――。


 俺は、この世の真理を知る者。

 ゆえに、俺はきっぱりとあきらめる。


 百合は正義だ。


「マツ×リカしか勝たん」


              ― 終 ―



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狂愛日記(抜粋) ・みすみ・ @mi_haru

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