第12話
「ごめん、遅くなった」
MO部を出て階段を駆け上がり、教室に走り込んだ俺は、ポツンと一人、自分の席に座っていた絵美里に声をかけた。
これぐらいじゃ息も上がらないや。体鍛えすぎだぞ、俺。
「ハア、ハア……」って息も絶え絶えにしなきゃモブじゃないよな。
「あら? 執事が主人にその言い方はないのではなくて? 広川」
えええ? ここ、俺たちしかいないじゃん。とんでもなく急いで来たのに、掛ける言葉がそれですか。
……はああ、しょうがないなあ。あ、「はあ」って心の中で言わされたよ。すごいな絵美里。
「失礼しました、絵美里お嬢様。それで、本当に生徒会に行かれるのですか?」
もういいや。従いますよ、執事ですからね。
「もちろんよ。急がば回れって言うでしょ?」
「はあ? それを言うなら善は急げじゃあ……」
「執事のくせに私に意見しないように。私なりの意図があって言ってるんだから」
いやいや日本語間違ってるんじゃないの……。
「遠回りするってことだから」
いやまた何言ってるの、この人? 生徒会行くんじゃなかったの?
「どこへ行かれるというのですか」
「いいからついてきなさい」
きつい声でそう言い放ち、絵美里は机の上に置いてあったた自分のかばんを持って立ち上がった。
うーん。さっきの電話の甘い声はなんだったの?
絵美里はさっさと廊下に行ってしまい、俺は慌てて自分の席の横にかけてあったかばんを手に、絵美里の後を急いで追い掛けた。
廊下の掲示板のところで絵美里は立ち止まった。
「ちょっとそこの掲示板を背に立ってもらえるかしら」
「は、はあ……」
意味がわからないまま俺は言われるままにした。
ドン!
俺の顔の横に絵美里が突然、思い切り右手を突いてきた。
こ、これってあの壁ドン!?
確かに掲示板だと大きな音が出て迫力あるけど。
「お前さ、私とMO部、どっちが大事なんだよ」
「え……」
いや、そんなイケメンみたいなこと言われても……。だいたい壁ドンなんてされたらモブじゃなくなっちゃう……てか、ヒロインになっちゃうじゃないか。
それより顔が近いって。こいつ何考えてるんだ。ただでさえかわいい顔してるんだぞ。俺が勘違いしたらどうするんだよ。
「なーんてね。びっくりした?」
絵美里が微笑みながら手をどかした。なんなんだよ。俺で遊ぶのやめてほしい……そりゃ弱み握られてるけど。
「あ、あの、お嬢様、どういうことでしょう……」
「あはは、もうやらなくていいよ、執事」
「え?」
「ここ、誰もいないじゃない」
「え? でもさっきは……」
「教室はさ、誰が来るかわからないでしょ?」
「あ、まあそうだけど……」
「ねえ、お・ね・が・い……」
絵美里がさっきの甘い声を出した。
もうドキドキはしないぞ。どうせまた何かたくらんでるんだろ。
「生徒会長……いえ、ヒロト君……私……」
「え?」
まさかホントに告白してくれるの!?
「一緒に生徒会に入ってほしいんだけど」
ああ、やっぱりそう来ましたか。そうですよね。はいはい。
俺はモブになりたいんだよ……誰か助けて……。
「
MO部 俺もう目立ちたくないんです 灰色鋼 @omrice
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