第19話:めでたし、めでたしで終わるのは物語。(中)
長ケ暦漆參陸年十二月八日。元号暦に直して概ね賀栄二年師走下旬である。今年の十二月八日は青頭の曜日である故に天辺前後に式典が行われることになったが、保波は早起きを命ぜられていたこともあって一応、二刻前には起きていた。普段の彼女の寝起きを考慮したら頑張った早起きといえたのだが、母親はさらに一刻前に起きており、まだまだ子供ね、という目で彼女を見ていた。
そして、十二月八日の記念式典が行われ、天辺前後一刻にお定まりの挨拶と行事が行われていたが、彼女からすると好奇心を抑え込むのにいっぱいいっぱいなほど、初めて尽くしの出来事であった。
何せ、初めて参加した式典である上に、彼女からすれば何の式典かはわかっていないのだ。挨拶でも求められようものならば明らかに困っていただろうが、いっても四歳児の娘に期待することなどせいぜいマスコット程度である、騒がずに、なおかつお偉いさん方に愛想愛嬌の類いを振りまくだけでも、合格といえた。
そして、記念式典も終了して、十二単を脱ぎ始めた保波に、母親が話しかけた……。
「保波、ちょっといいかしら」
「あっ、はい。なんでしょうか、お母様」
「ちょっと悪いのだけど、十二単は着たままで居てくれる?」
「……えっ」
あれ。この後まだなんか用事とかあったけ。打ち上げ?
「この後実は、本家の方々と折衝があるのよ、せっかくだし、参加させてみないか、って主人が言い出してね」
「お父様が?」
「ええ。まあ、たいした仕事はしないけども、一応正装のままでいてくれたらありがたいんだけど……」
「……わかりました。それじゃ、着崩れたところだけ直して、待機しますね」
「うん、ありがと」
はわっ、キスされた! ……って、まあ、女同士だし、頬だし、てーかそもそも親なんだから親愛とかだとは思うんだけど。
まあ、それはさておき、「折衝」ねえ……。本家って
「それじゃ、そろそろ行くからね」
「アッハイ」
……さて、鬼が出るか蛇が出るか……。
そして、しばらく歩いていると様々な人にお母様が挨拶をする。うん、とりあえずお辞儀くらいはしておこう。どういう言葉使ったら良いか解らんし、そのうち覚える必要はあるだろうが、今は子供なんだから、許されるだろう、きっと。
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