第4話 はんぶんこ

「珍しいじゃん!まこっちゃんから来るなんてさ」

彼女のクソでかい声が相変わらず教室中に響く。

「そうですね。今日は話したい事があって」

「どんなこと?」

「僕、今週から塾にいかないといけなくて…化石掘りには毎日、参加できないです」

「そっか・・・」

彼女は視線をそらし、後ろを向いてまた振り返った。

「まあ、塾が無いときだけでいいよ…ていうか、あーしが勉強教えてあげようか!」

「そういえば、ひかりさんって受験生ですよね。勉強しなくて大丈夫なんですか?」

「大丈夫!あーしは頭がいいのだ!」

「自分でいいます、それ」

「あ、疑ってるな!これを見ろ!あーしは前回の模試、南ヶ丘高校A判定だったから!」

彼女はケータイの写真を見せてそう言ってきた。

その写真には“華石ひかり 南ヶ丘高校A判定”と書かれている。

南ヶ丘高校は県内でも有名な進学校だ。偏差値は60だったきがする。

「本当に頭いいですね…羨ましいです」

「そうかな…でも私は…あ、まあとりあえず、化石掘りに行こう…」

また、視線とそらしていった。

なんだか、少し悪い事をした様な気がした。

機嫌をなおしてもらうために、話をしながら、一緒にあの岩壁に向かった。

近所の100円で食べれるけどマズイお好み焼き屋の話、小学生の頃いっていた駄菓子屋が一緒だった事、帰り道にある廃墟は夜に首吊り自殺した幽霊がでるとか話している内にいつもの様に元気を取り戻しいつもの崖に着いた。


「今日は少し違った事しよっか、まこっちゃん!」

「なんですか?」

「泥だんごをやろうかなと思って」

「あー、懐かしいですね、小学生以来です。でも不器用で割れてしまってなかなか作れませんでした」

「ち、ち、ち。あーしの泥だんごは少し違うから!下敷きもってる?」

「もってますよ」

「よし!まずそこの粘土みたいな土を集めて玉にしてみて」

彼女は地面から粘土の様な土を取り両手平で土をビー玉サイズに丸めて見せた。

僕もマネして粘土を丸めた。

「次に、平な地面に下敷きをおいてツルツルになるまで磨くだけ!」

指示通り、磨いてみると最初凸凹だっただんごが徐々に綺麗にツルツルになっていった。

「簡単ですね!これなら僕にもできます!」

「だよね!さらにこれのいいところは磨けば磨くほどきれいになる」

「やってみます!」

しばらく、集中して磨いていくと真珠くらいすべすべの泥だんごが出来た。

「どうですか!僕の泥だんご!」

ついついうれしくて彼女に泥だんごを見せてしまった。

「うん、あーしのより全然、綺麗!すっごいじゃん!」

「ありがとうございます!楽しいですね」

「楽しいかよかった~。ごめんね、昨日まで私ばっかり楽しんでた」

僕が化石掘りを楽しんでない事を気づいていたのか…まあ逃げてるから分かるか

とりあえず、傷つけないように「全然、大丈夫ですよ」と答えた。

「そっか、よかった。私は、まだ、まこっちゃんと化石掘りまだやりたいな。

続けていればこの泥だんごみたいがきれいになったみたいに、徐々に上手くなってコツもつかめて楽しくなると思うんだ」

「分かりました。塾がある日は早めに切り上げますけど、毎日きますね」

「やったー!じゃあ・・・」

彼女はどこから取り出したのかあの日の三葉虫の化石を取り出し、タガネとハンマーで二つに割ってしまった!

「あ、それって大切な…」

「大丈夫。私はまこっちゃんと化石を掘りたいんだ。二人でやればすぐに三葉虫なんて掘れるよ。

それまで、大切な化石を半分もっておいて‥逃げないようにね」

「逃げたりしませんよ」

彼女から綺麗に半分になった三葉虫の化石を受け取った。

少し触れた彼女の手は少し温かった。



「ただいまー」

「お帰りー今日はちょっと遅いわね、ご飯早く食べてね、冷めちゃうから」

お母さんがテーブルの上にご飯を作って椅子に座ってまっていた。

「ちょっと、友達と遊んでた」

「友達できたの。よかったね、どんな子なの?」

「化石を掘るのが好きな変人」

「ちょ、ちょっと、そんな言い方ないんじゃない。せっかく出来た友達なのに」

「だって、本当だし」

「ふーん、まあ、友達と遊ぶのもいいけど、明日から塾も忘れずにいってね」

それだけ言うとお母さんは椅子から立ち上がって自分が先に食べた食器を洗い始めた。

「…分かったよ、行くよ」

それから、食事中の会話も特になくご飯を食べた。


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