第3話 希望の光、リーパーの過去と友人

リーパーの家に到着したクリスは、リーパーをベッドに寝かせた。ボロボロのリーパーに、彼は何もしてやれず、ただ見守ることしかできなかった。

「お願いだ、リーパー…目を覚ましてくれ…。」

クリスの声は震えていたが、その目には希望の光が宿っていた。

クリスはあの日―闇堕ちしてからというもの、ネガティブの感情を感じとることができるようになり、その感情で気分が良くなるという体質になっていた。だが今、ネガティブの感情に襲われているクリスは、ちっとも気分は良くなかった。


リーパーが目を覚まさない中、クリスは彼女にずっと付き添っていた。彼の心は重く、罪悪感と後悔に苛まれていた。

「俺がまた狂ってしまったのか…。」

と自問しながら、リーパーの無事を祈り続けた。いつもなら気分が良くなる、暗い感情に包まれながら。それもそのはず、クリスは自分の中に潜む殺戮の欲望に苦しんでいたのだ。戦いの中で感じた快感が、彼をさらに追い詰めた。

「俺は…本当にこんなことを楽しんでいたのか…」

その思いが彼の心を蝕んでいった。


それでも、クリスはリーパーの回復を信じていた。

「リーパー、お願いだ…目を覚ましてくれ…。」

彼の声は震えていたが、その目には希望の光が宿っていた。クリスはリーパーの手を握りしめ、再び目を覚ますことを願った。


やがて、リーパーが目を覚ました。クリスはリーパーが目覚めたことに驚いたが、特に下半身、左目、左腕を失っているにも関わらず、けろっとしていることにひどく驚く。

「やあクリス!おはよう」

「リーパー…大丈夫なのか?」

とクリスは心配そうに尋ねると、リーパーは微笑みながら答えた。

「私は『コア』と呼ばれる物質が破壊されない限り、死なないんだ。」

その言葉にクリスは驚きを隠せなかった。

「コア?」

「そう!皆で言う…心臓みたいなものかな!それに、感情を持っていないから痛みも感じないんだよ。」

リーパーの言葉に、クリスは少し安心したようだった。


リーパーの回復を見て、クリスは新たな決意を抱いた。

「リーパー、俺はもう一度やり直す。お前を守るために、そして自分自身を取り戻すために。」

リーパーは静かに頷き、二人は再び立ち上がる準備を始めた。


その時、ハッと思い出したようにリーパーがベッドから下りようとする。ところが、身体の損傷が酷く、うまく動けない。

「あーもうリーパー…。俺が手伝うから動かないでくれ…。」

しぶしぶとリーパーを抱き上げるクリス。リーパーはクリスをひとつの本棚に誘導した。

「ほら、この資料!さっき君がおかしくなったときに、こいつの気配がしたんだ!」

そう言ってリーパーは一冊のファイルを取り出す。そこの一枚目に挟んであったのは、あの首謀者の姿を書いた絵だった。


クリスを堕とした首謀者は、彼の世界を滅ぼした張本人であり、並行世界を操る力を持つ存在だった。彼の名は「ノクターン」。ノクターンは、無数の世界を観測することができ、その世界に干渉して滅ぼすことで、憎悪の感情を吸い取り、自らの力を増幅させていた。ノクターンの目的は、全ての並行世界を掌握し、自らの統治下に置くことだった。彼は世界の混乱を好み、戦争と破壊を引き起こすことでエネルギーを吸収し、さらなる力を得ていた。一番後ろに『口癖』という欄があり、そこには…

「私は混沌の王。すべての世界は私の支配下にあるべきだ。」

と書かれていた。もちろん、クリスの世界が滅びたのも、ノクターンの手によるものだった。彼はクリスの中に潜む闇を見抜き、その感情を利用して彼を操ることに成功した。

「お前の力は私のものだ、クリス。」

ノクターンは冷笑しながら、いまだにクリスの心を狂わせ続ける。


クリスはノクターンとの因縁に決着をつけるため、再び立ち上がる決意を固めた。

「ノクターン、もうお前の思い通りにはさせない!」

「それでこそクリスだよ!」

リーパーと共に、彼はノクターンとの最終決戦に挑むことを誓った。


その時、リーパーの部屋の扉がノックされた。リーパーが返事するかしないかのところで元気良く一人の女の子が入ってきた。

「やっほーリーパー!元気してる?」

「あ、ウィリー。頼むから返事してから入ってよ…。」

「あはは、ごめんごめん!」

ウィリーと呼ばれた彼女のことを、クリスはよく知らない。そんな彼に、リーパーは説明を始めた。


本名はウィリー・スペクター。彼女は、世界を生み出し、保護する「伝説の創造者」として知られている。彼女は無数の世界を作り上げ、その均衡を保つために活動していた。

「自分の役目は、世界を守ること。それが、自分の使命なんだ。」

ウィリーは明るく無邪気な女の子で、その笑顔は周囲を照らすような魅力を持っていた。彼女の無邪気さと楽観的な性格は、どんな困難にも立ち向かう勇気を与えてくれた。笑う度に揺れる紫色の髪、そして光を反射する月の髪飾りが彼女のシンボルマークでもある。


ウィリーは以前からリーパーと顔見知りであり、彼女の友人でもあったようだ。

「というわけで、リーパー!久しぶり!」

ウィリーはリーパーに手を振りながら近づいてきた。リーパーもまた微笑みながら手を振り返した。

「ウィリー、君がいてくれて本当に助かる。」


クリスがノクターンの影響で苦しむ中、ウィリーは彼に手を差し伸べた。

「クリス、君の心の闇を感じる。それを克服するために、自分が助けることができる。」

ウィリーの言葉は、クリスにとって一筋の光だった。

「だから彼女を呼んだんだ。」とリーパーは微笑んだ。


ウィリーはクリスとリーパーに協力し、ノクターンの脅威に立ち向かうための準備を始めた。

「自分たちは力を合わせて、並行世界を守り、ノクターンの野望を打ち砕く。」

クリスとリーパーは、ウィリーの導きのもと、新たな同盟を築くことを決意した。


⛪🔮🌙🪽🎀🩷🍫☀️


「そういや、用事はそれだけなの?ウィリー。」

リーパーにそう聞かれたウィリーは急に大声をあげる。

「あー!忘れてた!これ!」

ウィリーはポケットから太陽のブローチを取り出す。それはリーパーが落としたもので、それを返しにやってきたのだ。

「リーパー、これ、落としたんじゃない?」

ウィリーは明るい笑顔でブローチを差し出した。しかし、リーパーは静かに首を振った。

「ありがとう、ウィリー。でも、自分はこのブローチにふさわしくない。名前も『死神(reaper)』だし、世界を照らす太陽にはなれないんだ。」

リーパーの言葉には深い思いが込められていた。


「だからさ、」

と、リーパーはウィリーの左手に太陽のブローチを握らせる。そして、リーパーはウィリーにブローチを持っていてほしいと頼んだ。

「ウィリー、君に持っていてほしい。私にはこの太陽を持つ資格はない。でも、クリスには光の道へと導く太陽が必要だから。」

リーパーの瞳には、クリスへの強い願いが宿っていた。


ウィリーはリーパーの言葉を受け止め、優しく微笑んだ。

「わかったよ、リーパー。自分がこのブローチを持って、クリスの道を照らすから。」

彼女は太陽のブローチを大切に握りしめ、その決意を胸に刻んだ。

「ありがとね、ウィリー。さて、私はちょっと疲れたし、寝てくるね。」

とベッドに潜り、眠りについた。


リーパーが眠ったあと、ウィリーはリーパーの部屋を出て、廊下でこっそり聞いていたクリスを見つけた。「クリス、何やってるの?」ウィリーは笑いながら言った。実はリーパーもウィリーも、クリスが盗み聞きしているのを気配で知っていたのだ。

「じ、実は、ウィリーに相談があって。」

クリスはウィリーに向かって話し始めた。

「リーパーが自分の名前を相当嫌っている気がするんだ。死神の意味を持つ名前なんて、リーパーにはふさわしくないって思ってる。」

クリスの言葉には、リーパーへの理解と共感が込められていた。ウィリーはクリスの言葉を真剣に受け止め、優しく微笑んだ。

「リーパーは確かに名前の意味を気にしてるけど、それでも彼女は強いんだよ。クリス、お前が彼女の光になってあげるんだ。」

ウィリーの言葉には、クリスを励まそうとする思いが込められていた。だが、クリスはまた引っかかる。

「…ん?『彼女』?リーパーって、女の子なのか?」

「あれ、リーパーから聞いてないの?」

言わないのもリーパーらしいや、とウィリーは笑った。

ウィリーはしばらく考えた後、リーパーとの出会いについてクリスに話し始めた。

「じゃあ、リーパーのことを知ってもらうために、ちょっと昔話をしよっかな。」


⛪🔮🌙🪽🎀🩷🍫☀️


彼女たちが初めて出会ったのは、リーパーとスレイが住む、この世界だった。

「自分は世界の視察に来ていたんだ。でも、彼らがいつもいるラボの近くで迷子になっちゃってさ。」

ウィリーは笑いながら語った。


リーパーやスレイたちがいるラボの近くで迷子になったウィリーを見つけたのがリーパーだった。「リーパーは自分を見つけてくれて、助けてくれたんだ。その時、自分はリーパーが感情を持っていないことを感じ取ったんだ。」

その時のリーパーの目は、左目は緑色なのだが、右目は真っ黒。無表情で無口。目には光が無かったという。


それを見たウィリーはリーパーに感情の素を差し出した。

「これを飲めば、感情が芽生えるかもしれないよ。」

リーパーはその言葉を信じて感情の素を飲んだ。すると、彼女に感情が芽生え、目の色も変化するようになった。

「…ありがと。」

その時から、リーパーはよく話すようになった。


その出来事が起きたのは、冬の、クリスマスの時期だった。ウィリーはそれが忘れられないとクリスに語る。

「だから、リーパーの新たな名前として、クリスマスのフランス語である『ノエル』ってどうかな?」

ウィリーはクリスに提案した。彼の瞳には、新たな希望が宿っていた。

「おお!いいんじゃないか?」

クリスがウィリーの提案に賛同すると、ウィリーは待ってましたとばかりに立ち去ったはずのリーパーを魔方陣で召喚した。魔方陣が輝き、リーパーが驚きながら現れた。

「わっ!?え、何で二人が?」


クリスとウィリーは微笑みながら、リーパーに向かって言った。

「リーパー、君には新しい名前が必要なんだ。これからは『ノエル・マーフィー』として生きてほしい。」

「のえる…まーふぃー…?」

その言葉にリーパーは動揺しながらも、少しずつ笑顔を取り戻した。


「ノエル・マーフィー」という新たな名前は、リーパーにとって新しい始まりを意味していた。クリスとウィリーの心のこもった贈り物に、リーパーは感謝の気持ちを抱きながら、新たな決意を胸に刻んだ。

「ありがとう、クリス、ウィリー。これからはノエルとして、もっと強く生きていくよ。」


⛪🔮🌙🪽🎀🩷🍫☀️


あとがき


Mila Hollyです!さて!すっかり遅くなってしまいました!誰かが読んでくださってると信じて!

いつかまたどこかで!

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