宝珠の花嫁と償いの花婿 ――虐げられた乙女は哀傷した神に愛される――

花籠しずく

婚儀・後

 支度はできたか。そう尋ねる彼にわたくしは微笑みます。

 白無垢の姿を見せるのは初めてでしたので、いくらか躊躇いますと、襖がそっと開けられて彼が顔を覗かせました。それからわたくしの後ろ姿に向かって「綺麗だな」と呟きました。


「顔、見せてくれないか」

「少し恥ずかしいですね」

「だめか?」


 だめか、なんて。彼の声のなんと甘いことでしょう。その声には優しさと期待が灯されていて、わたくしはつい、微笑みました。

 振り返ると、彼は泣き出しそうな目でこちらを見ていました。わたくしを迎え入れてくれた日と同じように手が差し伸べられて、わたくしはその手を取ります。


「旦那様も素敵です」

「お前こそ」


 婚儀のほんの少し前なのに、その手の温かさが愛おしくて、少しも離したくないと思いました。

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