愛の伝説〜梛の木の下で〜【ショートストーリー】

砂坂よつば

梛の木の下で

 小学5年生の時、両親が突然離婚した。わたしはママと暮らすことを決めてママの実家へ引っ越した。

初めての転入はドキドキだったけど、クラスの皆んなはわたしを快く受け入れてくれた。


––––月日は流れ中学3年生のある日の放課後。わたしの手を引っ張り、学校の中で1番人気の居ない場所に連れて行く。友達の久美くみ


じゅの「ねぇ、さっきからどこへ向かっているの?」


久美「体育館の裏」


どうして、そんなところへ連れて行くのだろう。この時のわたしは何も知らなかった。

久美の想いも。そして学校の卒業生達に代々語り継がれるも。


体育館の裏へ着くと、なぎの木が1本植えられている。

久美は梛の木に向かって1礼し、両手を合わせて1拍した。

わたしも梛の木に向かって久美が先ほど見せた儀式もどきをしなくてはいけないのかなと思っていたら––––。


久美「じゅのちゃんはやらなくていいの」


じゅの「え?そうなの」


久美「それよりも、聞いて欲しいことがあるの」


じゅの「どうしたの、改まって」


久美「あたしね……じゅのちゃんのこと……大好きだよ」


じゅの「わたしも大好きだよ!としていつまでも仲良くしてね!」


久美「……う、うん」


一瞬、久美の表情は暗くなったような気がした。だけどすぐにいつも見せる、屈託のない笑顔をわたしに向ける。

体育館裏を離れ、わたし達は家路に着く。十字路で別れる時ポツリと久美は呟いた。


久美「さっきの告白。あたしは……じゅのちゃんが返してくれた『好き』と少し違うから」


そう言って久美は走り去ってしまった。


風の噂で聞いた私立小中学校の【愛の伝説】の話。

体育館の裏にある梛の木に向かって1礼1拍してから梛の木の下で、愛の告白をするとその恋は成就しになれるらしい。


(終)


小田刈おだがりじゅの 15歳編※

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