すき、きらい、すき

@may-29

好きな人の好きな人

はらりと肩口から流れる黒髪と、小説のページをめくるか細い指先。じっと文字を追いかける瞳。

何よりもきれいで、ずっと眺めていても飽きることはない。

私の、好きな人。


好きな人が、ふと視線を上げてはじっと動きを追う。静かだった瞳が色づいてきらめき出す。

私の好きな人には好きな人がいる。

その相手を眺めている時が一番輝いていて、美しい、なんて知りたくもなかった。

嫌いになれればよかったのに。


それでも、やっぱり好きで仕方がない。

告げることはなかったけれど。


恋人ができたの、と花が綻ぶような笑顔が好き。


今の彼女はスマホに視線を落とし、恋人とのやりとりのために熱心に指先を動かす。

きらりきらりと輝く笑顔を、嫌いになれればよかったのに。


ああ、やっぱり大好きだ。

好きな人が好きな人を想っている横顔が、一番綺麗だなんて知りたくもなかった。

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