「うわぁ……緊張する……」

　遂にやってきた花音ちゃんとのコラボ配信。

　花音ちゃんのチャンネルでの配信ということもあってか、待機人数は二万人を超えている。

　

　コメントは既に読めない速さで流れて行っている。

　そしてSNSでは【コラボ配信】がトレンドしていた。

『か、彼方さん準備は大丈夫ですか？　私は全然良くないです！　もう彼方さんの声がカッコよすぎてどうにかなっちゃいそう……』

　俺と花音ちゃんは通話アプリを使って通話をしている。

　この前はアリスちゃんも居たけれど今回は俺と花音ちゃんの二人だけの通話だ。過去一緊張している。

「はい、俺は大丈夫です……」

『うぅ……緊張する……。じゃあ配信始めますね！ 彼方さんはいつも通りの感じで大丈夫ですからね！ 私もなるべくいつも通りに配信できるように頑張ります！』

　俺はいつも配信時にコメントを確認する用のモニターで配信が開始されたのを確認した。

　なるべくいつも通りを意識するんだ……。

『やっほーみんな～！　ブイラブ所属のアイドルVTuber白雪花音です！　今日は告知していた通りあの星乃彼方さんとのコラボです！』

「こ、こんばんは～。個人VTuberの星乃彼方です。花音さんみたいな大物VTuberの方とのコラボでめちゃくちゃ緊張してます」

：いつもの彼方と全然違うｗ

：緊張してるのめっちゃ分かるｗ

：花音ちゃんも絶対緊張してるでしょｗ

『うん、花音も凄く緊張してる……それでみんなに一つ言わないといけない事があってね。本当はこの前のホラーゲームの続きを彼方さんとプレイするつもりだったんだけどね……家に一人の状態でプレイは花音絶対にできないから今日は違うゲームで遊んでいこうかなって思います』

：マジか！　ホラゲーめっちゃ楽しみにしてたのに。

：でも彼方がホラゲー以外やるの中々ないからそれはそれで良い。

：それでどんなゲームやるの？

「まぁ花音さんにはまた今度今までやってきた中で一番怖いホラゲーをやってもらいましょう」

『ちょ、ちょっと彼方さん!?　絶対にやらないですからね！　それと今日やるゲームはね【全国ゲーム対戦39】をやっていきます』

　全国ゲーム対戦39というゲームは将棋やオセロ、五目並べ、トランプゲームなど39種類の色んな遊びがプレイできるゲームだ。

：果たして花音ちゃんは今日初勝利を飾ることはできるのか。

：彼方意外と頭良いからな～。

：今回も罰ゲームは花音ちゃんで確定だな。

『ちょっと！　なんでもう花音が負ける事が決まってるの！　一応言っておくけど花音も頭良いからね！ それに企画の勝負では全敗だけどゲームでは勝ったことあるからね！』

「花音さんのこの企画は全部見てますけど、負けたら恥だと思って挑みます」

『も～！　彼方さんまでそんな事言ってくるんだ！　意地悪！』

：花音……今までの事をよーく思い出せ。彼方が正しい。

：花音ちゃんが勝つ想像ができないｗ

：彼方がこれでポンだったらそれはそれで推せるｗ

：今回の罰ゲームはなんだろう。

『良いも～ん。勝って皆に謝らせるんだから。それで彼方さんのリスナーさんで花音の配信見たことない人も沢山居ると思うからもう一度この企画をおさらいしていくね。一時間の間に色んなゲームをして勝利数が少なかった方が罰ゲームって簡単なルールだよ』

「因みに罰ゲームは予めアリスさんに決めてもらいました。俺が負けたら一ヶ月SNSのアカウント名に白雪花音に負けた男と付けるのと、花音さんの言う事をなんでも一つ聞く……らしいです｣

『えへへ、彼方さんに何お願いしようかなぁ～あれにしようかなぁ～』

：うわぁ……それは付けたくないな……。

：そんなの付けたら末代までの恥だぞ彼方……。

：負けたら一生のネタにされるぞ……。

：てか花音ちゃんのお願い絶対にろくなことじゃないだろ

『ねー！ ちょっとライン超えてるって！ そんな恥じゃないからね！』

「それで白雪さんが負けた場合は本当は有料のボイスを無料で投稿する事だそうです」

：￥5000　彼方、勝ってくれてありがとう。

：￥7500　彼方、お前は今日から英雄だ。

：彼方、分からせてやれ。

：花音ちゃん、おつかれ。

『ふんっ！ もうこんな人達無視して始めましょ、彼方さん』

：拗ねたw

：￥5000 拗ねた花音ちゃん可愛いwww

「えーっと、じゃあまず一回目のゲームは俺から選びますね。……ん〜、花音さんがやった事ないゲームにしようかなぁ」

『あ！ 彼方さんそれズルですよ！ 不正です不正！』

：クソガキやめろw

：どのゲームやっても結果は変わらんw

「じゃあこのコネクトフォーってやつにします。多分花音さんやった事ないんじゃないかな」

：配信ではやってるところ見た事ないな。

：花音ちゃんに頭脳系は……。

：何秒で終わるかな。

『コネクトフォー？ はどんなルールなんですか？』

「ルールは簡単ですよ。縦六、横七マスの板に上からメダルを入れていって、自分の色のメダルが先に四枚並んだら勝ちっていうルールです」

『それなら花音でもできるよ！ え、ちゃんと見ててねみんな。花音がポンコツじゃないって見せてあげるから』

　そう言って花音ちゃんはゲームをスタートした。

『花音からかな。う～ん。じゃあ真ん中で』

「じゃあお隣に」

『じゃあ花音は反対側に』

　最初の数手は極普通にゲームが進行していった。

　けれど勝敗が決まるのにそう時間はかからなかった。

：あー、終わった。

：彼方の勝ちだな。

：早すぎて恥ずかしいよｗｗ

　花音ちゃんが今入れた箇所の上に俺が入れればダブルリーチとなり、花音ちゃんが次にどこに入れても俺の勝ちになる。

　勿論俺はそこにメダルを入れた。

『あ！ これ横にリーチになってるからここに入れないと花音の負けになっちゃうね！』

　そう言って花音ちゃんは一つのリーチを塞いだ。

『ほら！ 花音だってちゃんと頭使ってぇぇぇええええ！』

：頭使ってないねw

：ちゃんと頭使おうねw

：ポンコツじゃない所見せるって聞いたんですけどいつ見せてくれますか？

　ゲーム画面には、俺の名前の上にWinner、花音ちゃんの名前の上にはLoseと表示された。

『ちょっと彼方さん！ 花音斜めもありなんて聞いてないです！ もう一回やりましょう！　次は負けないもん！』

「あははは、良いですよ」

　こうして二回戦目が始まったが、結局さっきと同じような勝ち方で俺の勝ちとなった。