AI薬局
my-ray
第1話
木戸礼美は現在31歳の8年目薬剤師だ。今は新卒からお世話になっている都内の調剤薬局で管理薬剤師をしている。管理薬剤師は薬局の中で1番責任ある立場の人間のことで、いわゆる薬局長のこと。シフトを作成したり、在庫の適切な管理を行ったり、人とモノを管理し、薬局内で起こることの最終的な責任を負う立場にある。礼美が管理薬剤師になって2年が過ぎた。シフト作りや在庫管理は毎月のことなのでもう慣れたものであるが、役所に提出する報告書の作成や認定が必要な薬局関連の更新手続きは年に1回あるかないかなので未だに慣れない。日々、製薬会社や医療専門メディアから送られてくる情報も選別し、薬局内で共有することも重要な仕事であるが、量が多すぎて間に合わないこともある。他にも本部から来るメールにも目を通さねばならない。礼美は管理者として毎日、目まぐるしい程の仕事に追われている。
礼美の薬局は都内に5店舗を展開している小規模薬局だ。社長である真中佑治は礼美の薬局には月に2~3回程しか来ないが、社長が来ると何かしら文句を言われるので、礼美はあまり好きではなかった。元々、現場で管理薬剤師をしていた社長は現場のことには理解がある。しかし、社長は効率性重視のため、丁寧さを重視する礼美とは反りが合わないこともあり、しょっちゅう衝突していた。今日も社長が来て早々、礼美と揉めていた。
「木戸さん、さっきの患者さんに時間かけすぎじゃない?もう少し効率良く説明することできないの?」
社長は礼美に声をかけた。
「今の患者さん、コレステロールの薬が追加になったんです。きちんと服用意義と生活習慣の見直しを指導しないといけなくて。コレステロールの薬は数値が悪化しても改善しても検査しないと分からないですから、実感が湧きづらいみたいで。きちんと今後のリスクや改善した後のメリットを話しておかなければ、服用してくれないかもしれません。まずはきちんと飲めるように薬剤師がサポートしないといけません。」
礼美は長くなった理由を丁寧に説明する。
「とはいえね、病院でも説明されているだろうし、薬局でそこまでする必要はないんじゃないの?今は検索すれば何でも出てくる時代だ。もう少し、病院や患者に任せてもいいのではないだろうか?」
(社長はいつもそうだ。効率が悪いと思うことはすぐに切り捨てようとする。)
礼美は心の中でそう悪態をついた。
「病院や患者さん任せにするのは危険では?多分、恐らく、やってくれるだろうという憶測でやるべきことをやらなかった時、何か取り返しのつかないことがあれば後悔してもしきれません。
何も知らないよりは重複であっても、きちんと説明を受けた場合の方がよっぽど良いと私は思います。」
ここは薬剤師の義務として大事なことなので礼美は譲らない。
「だとしてもだ。もう少し工夫をして短く端的にしなさい。だから他のことが回らないのだろう。」
礼美は図星を突かれて言葉を飲み込んだ。
「分かりました。次はもう少し短くなるように気を付けます。」
礼美はこれ以上逆らわずに話を切った。
薬局全体のことを考えて効率性を重視する社長も、薬剤師としても使命を全うしようとする礼美もどちらも、間違ってはいないから厄介だ。しかし、社長も全く現場に対して理解がないというわけではない。さすが、現場出身なだけあって、現場での考え方を理解してくれていたので、最終的には現場の意見を取り入れてくれていたし、信じて現場判断に任せてくれていたことも多かった。そのためか、なんだかんだ礼美と社長はうまくやってきた。いざとなった時の2人の結束力と対応力は頼れるものでもあったし、現場全体の安心感を作り出していた。そんな2人だからこそ、今まで現場の皆も付いてきてくれたのだ。
礼美の職場には他にも事務が2人、薬剤師が4人働いていた。薬剤師は正社員が礼美の他にもう1人いて、他は全員パートだ。正社員の薬剤師は礼美の2年後輩で、佐山雪乃という。雪乃は年に似合わずいつも毅然としていて、口には出さないが礼美のことをとても慕っていた。残りの薬剤師が3人いるが、礼美よりも年上の40代~50代だった。事務の2人のパートもどちらも40代であった。年上とはいっても全員が礼美を管理薬剤師として尊重していたし、管理薬剤師である礼美を助けようとしていた。雪乃だけではなく全員が礼美に親しみをもって接していた。
そして、礼美よりも人生経験豊かな彼女達はいつも礼美よりも落ち着いており、どんな時も笑顔を絶やさない人達であった。そのお陰で礼美は毎日楽しく働けていた。実際、薬局内はいつも笑顔で溢れていた。
時は2060年。世の中は様々なものが機械化され、AIの活用が進み、様々な仕事がロボットに取って代わられた世界になった。わずか半世紀の間に世界は様変わりした。50年前から日本の人口は低下の一途をたどり、働き手が十分ではなくなると言われていたが、その働き手不足をロボットが補う形になった。自動運転の車が当たり前のように街を走り、ドローンを含めた多様な配達ロボットが街中に溢れていた。どこからどこへ物を運ぶのは人ではなくロボットに完全に変わっていた。配達員などという人間はもう存在しない。これが2060年の世界だ。
このような変化を遂げてきた世界の中でも医療業界は特別であった。医療関係の業務にも機械化は進んでいたが、医師や看護師、薬剤師などの有資格者の仕事の多くは人間が行っていた。あらゆるデータを元に個々の事象に合わせて治療方針を考える柔軟性や、個人個人の僅かな変化を見極める観察力と洞察力、非言語コミュニケーションを含めた対話力は人間に勝ることはないと思われていた。そのため、薬剤師を含む医療従事者の多くは僅かに残された人間の職業であった。
しかし、薬剤師の業務に変化がなかったわけではない。受け付けた処方箋の入力、調剤・監査は精密な機械が誕生し、薬剤師の業務は対人業務がメインの仕事となり、薬剤師補業務に人手は必要なくなった。おかげで薬剤師不足は解消されつつあり、薬局事務の仕事も処方箋の受付さえやれば後は機械が仕事を請け負ってくれていたため、激務からは解放された。
そもそも某ウイルスの蔓延した時代からオンライン受診、オンライン服薬指導、薬は郵送が急激に進んだ。大手の通信販売企業がその輸送網を駆使してオンライン薬局を普及させてからは、本当になんでもオンラインで事足りることが証明された。
今では全く来院・来局しないで全てを済ませる人々も多い。自宅にいて受診が終わり、自宅で待てば薬は届くわけだから患者側の利便性は本当に向上した。薬局薬剤師も1日の6割はデジタル機器の画面越しに患者と会話している。
オンライン薬局に至っては100%画面越しのこともある。IT化の進んだ企業ではバーチャル空間でアバター薬剤師を通して服薬指導を行っている。薬剤師が患者と直接顔を合わせる機会は本当に減った。病院には直接来院しても、電子処方箋のおかげで薬局には来ないこともあり、薬局という店の形を必要としなくなりつつあるのだ。
これほどまでに薬局の構造そのものが変化しても、やはり対人業務が主の薬剤師はAIには不可能と考えられており、AI化が進んだとしてもなくならない職種と言われていた。画面越しだろうが、アバターであろうが、在宅ワークで遠隔であろうが、薬剤師がその職能をもって患者にリアルタイムで寄り添う状況には変わりはなかった。伝える方法が変わっただけ。薬剤師の仕事としては大きく変わりはないと礼美も他の薬剤師も懸命に自分達の使命を全うしていた。
しかし、予測に反してその日は突然やってきた。その日の朝、様々な機械が薬局内にどんどん運び込まれ設置された。
「ついにやったぞ。木戸さん、おはよう。見てくれたまえ。僕が全てをかけて開発に携わったシステムと機械達だ。今日から機械が、AIが調剤業務から対人業務の全てを行うことが可能になった。」
朝早くから社長は薬局内で作業を行っていたらしく、礼美が来た時にはほとんどの機械が運び込まれ、設置が終わろうとしていた。
「社長、これは一体どういうことですか?何で、いきなり、こんなにも。」
礼美は驚いて何が何だか分からなかった。システムの変更など何も聞かされていなかったのだ。
(何か設備導入がある時って予め管理者に伝えておくもんじゃないの?)
礼美は不満を隠せない。大事なことを知らされていないのは管理薬剤師として心外である。
「今、話した通りだよ。新しい機械とシステムが今日届いたんだ。これらを使えば処方箋の受付も入力も調剤も監査も投薬も全て機械で出来るんだ。対人業務だって問題ない。優秀なAIを開発して導入した。薬剤師の行ってきたこと全てがようやく機械化されたんだ。開発に何年も費やしたが、その成果がようやく、ようやく実を結んだんだ。これで理想の薬局が完成する。凄いだろ、木戸さん。」
社長は目を輝かせて言った。
「そんなこと急に言われても使い方わからないですし、困ります。もうすぐ患者さん来ちゃうのに。」
礼美は慌てていた。いきなり新しい機械が入ったとしても使えなければ意味がない。普通は予め新規導入に関して周知し、使い方のマニュアルをある程度覚えるのだ。
「その必要はない。システムの連携も終わっているし、電源をオンにして回ればいい。後は全て機械がやってくれる。木戸さんも電源の場所さえ分かれば問題ない。すぐに教える。」
社長は淡々と答えた。
「だとしても、先に言ってください。患者さんにも薬局の仕組みが変わることを予め伝えておくべきだったと思います。それに、電源のオンとオフだけって。私何の仕事すればいいんですか?」
礼美は納得できなかった。
「今までのメイン業務はもうやらなくていい。後は、管理薬剤師としての仕事を今まで通りやっておいてくれ。暇な時にマニュアルにも目を通して、機械の故障やエラーが出てきたら対応してくれ。異常を検知したらアラームがなるから。もし、万一クレーム出たら対応お願い。大抵のクレーム対応もAIでどうにかしてくれるからそこまで対応は多くないと思うけれど。」
(本当に何もかもAIでできるんだ)
礼美は驚いた。AIや機械の技術進歩もだが、突然自分の仕事がなくなる日が来たことに最も驚いていた。
(まさか、こんな日が来ようとは…。)
「おはようございます。てか、何ですか、これ。」
出勤してきた雪乃も驚いていた。礼美は雪乃に今聞いたことの全てを話した。雪乃は驚いた様子はあったが、いつもと変わらない調子だった。
「そうですか。分かりました。電源の場所教えてください。あと、切り方も。」
なぜそんなに冷静でいられるのか、この状況をすんなり受け止められるのか礼美には理解できなかった。
「え、それだけ?私まだ、何も納得していないんだけど。」
礼美は雪乃に言った。
「納得も何も、この状況になっちゃったんですから、やるべきことやらないとですよね。患者さん困っちゃいますから。人間だろうがロボットだろうが、患者さんに迷惑かからなければ、私はどっちがやったって別に良いと思います。」
雪乃の冷静さは今は見習うべきかと、様々な疑問を残したまま礼美は社長と雪乃と開局準備に取り掛かった。今日はすでに社長が機械の電源を入れていたため、さほど時間はかからなかったが開局時間ギリギリになってしまった。そこで礼美は気が付いた。
「そういえば、高橋さん達は?」
礼美と雪乃以外のパートの薬剤師が開局時間になってもまだ来ていなかった。
「石井さんと成田さんも来ていないじゃないですか。受け付けどうしよう。」
礼美の心配をよそに社長は意外な事実を伝えた。
「彼女達には辞めてもらったよ。契約の更新はしなかったからね。まあ正社員2人がいれば十分だよ。」
礼美は驚きを隠せなかった。
「高橋さんも、鈴木さんも、水谷さん、皆ですか?私、何も聞いてないです。薬剤師がいなくてどうするんですか?2人じゃ裁けませんよ?」
礼美は甲高い声を上げた。
「それに事務の石井さんと成田さんがいなくてどうやって患者さんから処方箋受け取るんですか?調剤録の最終チェックとか、定期の方の薬の在庫管理とか、彼女たちがやってくれていた仕事は?」
事務のいない薬局なんて礼美には信じられなかった。それだけでも店が回らなくなることは目に見えていた。
「落ち着きなさい。」
捲し立てるように問い詰める礼美を静止して社長は淡々と説明した。
「木戸さんと佐山さんには言わないように皆に伝えていた。だから知るはずはない。そうでなくては木戸さんは今回の改革に反対してくるだろう。だから当日まで黙っていることにしたんだ。
機械とAIが全部やってくれるから薬剤師も必要ない。2人いれば十分だ。オンラインもAIがやれるようにシステムを改築した。問題ない。
処方箋の受付もAI搭載のロボットがやってくれるし、入力も自動で瞬時に機械で読み取る。
入力内容の確認とか調剤録の不整合も自動で別のAIが検知してくれる。在庫管理もAIで学習させているから、いつどれくらい発注すればいいかはAIに任せればいい。事務の仕事はほとんど機械化されているから事務は必要ないんだ。必要なのは管理薬剤師とそれを補助できる人だけでいい。
今日からこの店は2人に任せるからしっかりやってくれたまえ。受付から服薬指導まで全て機械化したから便利になっても困ることはさほどない。それ程までに完璧な機械を開発したんだ。凄いだろう?」
社長は嬉々として話しているが、礼美には到底理解できなかった。
「機械が、AIが本当に何の滞りもなく薬剤師の仕事を全てできるとでも思っているんですか?不可能ですよ。疑義紹介とか服薬指導とか正確にできるのは薬剤師の、人間の能力があってこそです。AIに処方解析ができますか?ちょっと斜め上の処方箋が来た時に処方糸意図を理解できるんですか?薬剤師なしで薬局は経営できませんよ。効率性だかなんだか知りませんが、一番大切なのは安全性です。こんなのおかしいですよ。」
礼美の意見を聞き終わると社長は答えた。
「木戸さん。たしかに一昔前はそうだった。AIが誕生しても、医療は人間には敵わないと、医療の機械化は不可能だと思われていた。実際にそうだった。しかし、技術は、AIは、デジタルはそこからどんどん進化を遂げたんだ。処方入力だって、調剤だって監査だって、機械化してきただろう。ファミレスだって入店したらもうロボットが接客する時代だ。薬局の処方箋受付ができないわけないだろう。服薬指導だってそうだ。AIがどんどん進化した今、人間と会話することだって可能になったんだ。処方解析だって、膨大なまでのデータを元にすればAIは瞬時に学習できるし、それを取り出すことも瞬時にできる。AIだっていつかは人間を超越するくらい進化できるんだ。今、それが現実になったというだけだよ。AIの能力は見た方が早いな。」
ちょうどその時、1人目の患者が来局した。
「ナイスタイミングだ。見てみるがいい。」
社長は手招きした。
「おはようございます。今日は誰もいないの?」
訝しげに患者が入って来た。すると受付にいたロボットが動き出した。
〈おはようございます。こちらに処方箋を入れてください。〉
ロボットは流ちょうに話し始めた。
「何なの、このロボットは。ここに処方箋入れるの?」
突然喋りだしたロボットを不可思議そうに眺めながら処方箋を入れた。
〈処方箋の受付が完了しました。マイナンバーカードをご提示ください。〉
ロボットにはマイナンバーカードをかざすセンサーが存在していた。ロボットは流ちょうに会話を続ける。
〈マイナンバーカードを認証しました。画面に従っていくつかの質問にお答えください。〉
画面には1つ目の質問が映し出された。
『前回と同じ処方内容で良いか。はい・いいえ』
1つ目の質問に答えると2つ目の質問が出た。
『残っている薬はあるか?はい・いいえ』
続いて3つ目の質問が出た。
『血圧の値はいくつだったか?』
質問と一緒に番号が出て、血圧の数値をタッチパネルで入力できた。
その後も4つ、5つ目の回答が終わると、
〈質問は以上です。おかけになってお待ちください。〉
と、ロボットは受付を終了した。
渡された処方箋を瞬時に解読し、前回の記録を元に今回も前回と同様であると判断し、問診まで終了させた。礼美は一連のロボットの動きに驚いた。こんなことが可能だなんてどうしても信じられなかった。
「本当に、処方内容と前回の履歴を見てAIが判断して問診まで終えたのですか?
そんなことが本当に可能になったというんですか?」
礼美は恐る恐る社長の顔を伺った。社長は満足そうに受付のロボットを見た。
「それだけではない。マイナンバーの内容から併用薬がないかまでもう確認済みだ。残薬もなさそうだし、問題なければこのまま調剤に移る。入力はもう済んでいる。」
礼美はレセコン画面をのぞき込んで驚いた。確かに、既に処方箋の入力は済まされており、マイナンバーのデータの読み取り、照合、それに合わせた処方監査まで終わっていた。礼美が驚いているところをよそに、今度は調剤室内の機械が動き出した。入力された薬の調剤が始まっていた。
「入力されたデータがこちらの機械に飛んで、自動で調剤が始まる。調剤の仕組みは今までの機械と同じだ。軟膏の混合や散剤、水剤の調剤も今まで通り行える。ほら、もう終わった。次は監査だ。監査も今までと同じ要領で行える。念のために、受け取った処方箋がここに送られてきて、データ内容の入力間違えがないか確認が行われてから監査に移る。さっきのレセコンとは違う方法で入力内容を確認することでダブルチェックが行える。それが終わったらロボットが薬を受け取って投薬に向かう。今までのデータと連携してあるから、薬剤師が行うような服薬指導もできる。
さっきの問診内容はもう記入されているから、その内容から服薬指導を組み立てていくことができる。ほら見て。」
社長は機械の動きに合わせて解説してくれた。礼美は圧倒される一方であった。
〈お待たせしました。佐藤様、お薬の準備ができました。〉
佐藤は驚きながらもカウンターに出てきたロボットの前に立った。
〈今日は前回とお薬変わりないです。血圧の値も安定しているのでお薬このまま継続していただければ問題ありません。引き続きグレープフルーツは食べないようにお気を付けください。何か聞きたいことはございますか?なしということですね。お待たせしました。本日お会計360円です。〉
服薬指導ロボットはお会計までし始めた。よく見るとスーパーのレジにあるようなクレジットの差し込み口やバーコードの読み取り器などまで付属しており、会計まで一貫して行える。これまた便利である。
「信じられない…。」
礼美は絞り出すように声を出した。これが現実であるとは受け入れられなかった。それほどまでにAIは完璧だったのだ。会話は滑らかで患者との受け答えも問題ない。欠点を指摘しろという方が困難なように見えた。
「凄いですね。AIが薬剤師を超える日が来るなんて、今、目の前で行われていたことが現実だなんて驚きです。」
雪乃もまた、一連のAIの対応に驚いていた。その目は輝いていた。
「佐藤さん、少しよろしいですか?」
礼美はたった今薬を受け取って帰ろうとしていた患者を呼び止めた。
「今日から全部の工程を機械化したのですが、何かお気づきになる点や、不都合な点はございませんでしたか?」
礼美の問いかけに振り返った患者は一拍おいてから答えた。
「いや、特に問題はなかったよ。最初は誰も出てこないから驚いたし、ロボットが喋り出したから驚いたけど、聞いてくることもいつも薬剤師さんが聞いてくるようなことだったし、説明もいつもと一緒で問題ないよ。渡された薬もいつも通りで間違っていなかったし。いつもより待ち時間が短いような気がしたから、機械を入れて待たなくて良くなるなら、これでもいいかなって思ったよ。」
佐藤はにっこりと笑いかけると、凄いね、ロボットは、と言い残して帰っていった。
「患者さんからの反応も上々だな。」
社長はとても満足そうに笑った。礼美と雪乃はあっけにとられたまま目を合わせた。
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