五月二十一日(日) 晴れ

 ……ちょっとまだ頭が混乱している。

 生の「ラッキーセブン」を拝めて、名乗りまで見せてくれて、もうすべてを投げ出してもこの娘たちを推し続けようと決心した。

 それからモニカちゃんと一緒に東さんに呼ばれて、いよいよ私が特訓してきた成果を見せるときだといわれた。



 私がここ一週間練習してきたこと……それはモニカちゃんの動きを完璧にトレースすることだった。

 モニカちゃんの命を狙う人間がすぐそばにいる。舞台の上では止めに入ることはできない。だから私がモニカちゃんの影武者になれというのだ。


 私のような不肖の女が、モニカちゃんの影武者なんかをやってもいいのだろうか? と、一週間前には思っていた。でも本番直前ではモニカちゃんの身を守るために最大の貢献ができると思って嬉しかった。

 でもモニカちゃんは納得してなかった。やっぱり自分の足で舞台に立ちたかったんだよね。そしたら、東さんが犯人の名前を口にした。

 モニカちゃんはショックを受けていた。正直、私も同じくらいショックだった。まさかレイちゃんが犯人だったなんて……

 東さんの説得により、最終的にモニカちゃんは提案を受け入れた。



 誰かに変装するというのは初めての経験だった。

 モニカちゃんの衣装を着たときは、モニカちゃんの臭いをすぐ近くに感じて……こんなこと日記に書いちゃダメかな?

 じゃなくて、それからモニカちゃんの顔をかたどったマスクを装着すると、思ったより暑いし、顔にピッタリ張り付くからかゆくなる。

 そんな状態で、誰にも正体がばれないようにふるまわなければいけない。今思えば、探偵になってから三週間しか立ってない私がやる仕事じゃなかったよね。


 他のメンバーの前での自然な演技は全然自信がなかったけど、本番での振り付けは完璧だったと辞任している。

 ただ、最後の最後、舞台に引っ込んでから、私はミスを犯した。

 すぐにレイちゃんに見破られた。流石レイちゃん、モニカちゃんのことは何でも知ってるなって思った。

 私がみんなの前で正体を現したとき、みんなは驚いていた。高橋さんも気づいてなかったみたい。

 東さんはその場でレイちゃんを警察に突き出そうとしていたけど、その時本物のモニカちゃんが止めに入った。


 モニカちゃんはレイちゃんを許すといっていた。

 東さんは険しい顔でモニカちゃんをいさめていた。レイちゃんの行動がモニカちゃんのみならず、私の命まで脅かしたことを怒っていた。

 モニカちゃんと東さんで意見が合わないのを見て高橋さんが口を開いた。「ラッキーセブン」のメンバーだけで話したいというので、私は東さんと一緒にその場を後にした。



 楽屋で二人で待っていた時、しばらく会話がなくて空気が重かったけど、東さんが重々しく口を開いた。

 「香菜さん……僕は甘いんすかね?」

 私は何も答えられなかった。


 最後に、モニカちゃんと交換していた衣装を元に戻した。

 モニカちゃんが着てくれた私のスーツは、家宝として一生保存しておこうと思う。

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