第9話 住む場所は····

カエデさんの意地悪な猛攻もどうにかかわして休み時間も終えた。


今日はお昼もないのでこのまま帰るか。午前授業というか軽い顔合わせだけだから、ウチはゆっくりと帰り支度を進める。


「瀬谷くんこれから帰り?」


「あぁ旭さん」


「要芽でいいよ。同い年なんだし、タメ口で大丈夫だよ。せっかくだから、秀周ひでちかくんって呼んでもいいかな?」


「あ、それはもちろんもちろん、全然大丈夫だよ····」


旭······いや要芽さんは思ったより社交的な性格なのかもしれない。


「電車で帰るの? 最寄り駅はどこ?」


「あぁいや実は····」


「かなっち〜、ひでちぃー、一緒に帰ろう〜」


そうしていると泉さんの元気な声が聞こえてきた。


瑠衣るいちゃん、ちょうど良かった。私も秀周くんと一緒に帰ろうかなって思ってて。親睦深めたいと思ってたし」


「なら私はそんな2人の甘酸っぱ〜い青春の始まりの1ページをパシャリと! 明日の号外タイトル決定だね!」


「もっと私欲抑えて喋っても良いと思いますよ」


初日からこんなにボケ倒す泉さんはそんなの何処吹く風かのように話を進める。


「ひでちぃは家この辺なの?」


「あぁ実はここの寮に住むことになって····」


「ホント!? 私たちと一緒じゃん!」


「····私たち?」


「そう。私たち2人も、この縦浜学院の寮に住むことになったんだよ。最も私は何年も前から住んでるけどね」


泉さんはそう言ってちょこんと胸を張る。自慢話をする子供の如く可愛らしい。


「せっかくだったら一緒に行かない?多分寮も近いんじゃない?」


「そうだね。そうしよっか」



ウチらはそう言って身支度を済ませ、寮へと歩きだした。






――――――――――――――――――








「何か····建物も一緒みたいだから、中で話そうか」


「「········うん」」




泉さんの言葉にウチらはそう返すしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る