やさしい嘘

まさか からだ

第1話 さようならのかわりに

強くならなきゃって

何度も自分に言い聞かせた

だって、弱いままのわたしじゃ

あなたの記憶にすら、残れない気がしたから


ほんとは――

「好きだった」じゃ足りなかった

過去形に逃げたその裏で

今も、ずっと

「好きだよ」って叫んでた


でも、言えなかった

あなたの幸せを願うことで

自分の気持ちにフタをして

平気なふりをするしかなかった


ねえ

わたしのこの未練は

きっと、もう二度と届かないって

どこかでわかってたくせに


それでも最後に

「またね」って言わせて

それが、わたしにできる

最初で最後の、やさしい嘘だから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やさしい嘘 まさか からだ @panndamann74

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ