エルデン公爵家の末子

ひまえび

第一章……放逐された若き貴公子

第1話……幸福の象徴と陰謀の舞台

『エルデン公爵家の末子』【国々の紹介と時代背景】

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622173388235001


【作品概要】

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622173315887285


前書き

この物語は、15歳のアルカンが偉大な公爵家の末子として生まれながらも、家庭内での複雑な権力闘争と疎外感に悩み、自らの力で生き抜く決意をする姿を描いています。彼は農奴の夫婦バラジとラクシュミの支えを受けながら、格闘技や生活の知恵を学び、成長していきます。本作の舞台となる異世界アルデン地方は、中世の中央アジア地方を想定しており、豊かな自然と厳しい現実が交錯する魅力的な場所です。


本文


1115年1月22日金曜日午前5時。ソゴル:エルデン公爵邸アルカンの部屋

アルカンは、屋敷の農奴のバラジに格闘技を習っていた。アルカンと口を聞いてくれるのは、母親と農奴のバラジ夫婦しかいなかった。12歳になった頃から、アルカンは彼に習い始め、今ではかなりの腕前になっていた。個人の能力についても攻撃力と防御力及び敏捷力はかなり上位の数値を示していた。


エルデン地方のソゴルにあるエルデン公爵邸の一角で、アルカンは農奴の夫婦バラジとラクシュミと共に朝食を囲んでいた。ラクシュミが作る朝食は、素朴ながらも心温まるもので、アルカンの心を癒してくれた。


朝食のメニュー:

- クンバ・ナン: 小麦粉と水で作られたシンプルなナン。ラクシュミはこれを香ばしく焼き上げ、バターを塗って提供した。

- シチュー: 肉と野菜を煮込んだシチュー。エルデン地方特有のスパイスが効いており、温かく栄養満点。

- ヨーグルト: 新鮮な牛乳から作られたヨーグルト。消化を助け、食事の最後に爽やかさを添える。

- 果物: 旬の果物、例えばリンゴやイチジク。これらはアルカンの大好きなデザートでもあった。


ラクシュミが作る朝食を前に、アルカンは深く息をついた。彼の隣には、いつも彼を励まし、支えてくれるバラジが座っていた。


「今日のシチューも絶品だよ、ラクシュミ」バラジが笑顔で言った。


「ありがとう、バラジ。アルカン、もっと食べなさい。これから訓練が待っているのだから」ラクシュミは優しく微笑みながら言った。


アルカンはナンを手に取り、一口かじった。香ばしい香りとバターの風味が口いっぱいに広がった。彼はこの瞬間だけでも、孤独や疎外感を忘れることができると感じていた。


「ありがとう、ラクシュミ。本当に美味しいよ」アルカンは感謝の言葉を口にした。


「アルカン、今日の訓練は特に厳しいものになる。覚悟しておくんだぞ」バラジはアルカンの目を見て真剣に言った。


「もちろん、バラジ。僕はもっと強くなりたいんだ」アルカンは決意を込めて答えた。


「おまえは何のために強くなりたい?」

アルカンは少しだけ黙ってから、目を伏せて言った。

「……いつか誰かを守れるように。その時が来たら、後悔しないように」


ラクシュミはそんな二人のやり取りを見守りながら、暖かな朝食を提供し続けた。彼女の心遣いが、アルカンの心を温め、彼が前向きに生きる力となっていた。この穏やかな朝のひとときが、アルカンにとってどれほど大切なものであるかを彼は深く感じていた。


この日もまた、アルカンはバラジと共に訓練に励み、ラクシュミから生活の知恵を学ぶ。


□ 訓練の時間「午前5時から7時」

バラジは、森の入り口近くの広場でアルカンに格闘技の訓練を施した。アルカンは素早い動きでバラジの攻撃をかわし、反撃の一撃を繰り出す。


「もっと速く、アルカン!敵は待ってくれないぞ!」バラジが声を張り上げた。


アルカンは汗を流しながらも、集中力を切らさずに訓練を続けた。彼の敏捷力はバラジの指導の賜物であり、彼の動きは日に日に鋭さを増していた。


□森の探検「午前7時から午後」

訓練を終えたアルカン、バラジ、ラクシュミの3人は、朝の涼しい空気の中、ドラゴンの森へと足を踏み入れた。森の奥深くまで続く道が見え、背の高い木々が空高く伸びている。道の両側には緑豊かな草や低木が広がり、静寂と神秘が感じられる光景だ。このような森の中で、アルカンたちは様々な冒険と収穫を求めて歩を進める。


アルカン:

アルカンは訓練で流した汗を拭きながら、木の棒を手に持ち、周囲を警戒しつつ進んだ。彼の目は鋭く、耳を澄ませて森の音を聞き取ろうとしていた。


「今日もたくさんの収穫があるといいな」アルカンは期待に胸を膨らませながら言った。


バラジ:

バラジはアルカンの後ろを歩きながら、彼の成長を感じていた。若き公子が日に日に逞しくなっていく姿は、彼にとって誇りでもあった。


「油断するなよ、アルカン。この森には何が潜んでいるかわからないからな」バラジは注意を促しつつも、優しい目でアルカンを見守っていた。


ラクシュミ:

ラクシュミはアルカンの横で、籠を持ちながら歩いていた。彼女は薬草や山菜を探しながら、周囲の美しい景色に目を奪われていた。


「この森は本当に美しいわ。でも、その美しさに惑わされてはいけないわね」ラクシュミは慎重に歩を進めながら、アルカンに微笑んだ。


森の中を進むと、彼らは次々と小動物に出会った。アルカンは持ち前の敏捷力を発揮し、キツネや貂を素早く捕まえた。


「見て、バラジ、これで今晩の夕食が豪華になるよ」アルカンは捕まえたキツネを見せびらかした。


「上出来だ、アルカン。でも、もっと深いところにも行ってみよう。そこで何か貴重なものが見つかるかもしれない」バラジはアルカンを励ました。


さらに森の奥へと進むと、彼らは薬草や山菜を見つけた。ラクシュミは慎重に薬草を摘み取り、アルカンは山菜を集めた。


「この薬草は、後で薬を作るのに使えるわ」ラクシュミは嬉しそうに薬草を見せた。


「これも役に立つはずだ」アルカンは山菜を籠に入れながら答えた。


森の中での探検は、彼らにとって貴重な学びの場であり、同時に絆を深める時間でもあった。アルカンはバラジとラクシュミの支えを感じながら、自分の成長を実感していた。


「気をつけて、ここから先はもっと危険だ」バラジは再び注意を促し、3人はさらに深い森へと足を踏み入れていった。


彼らは森の奥でさらに多くの収穫を期待し、慎重に歩を進めていった。森の中の探検は、彼らにとって冒険であり、同時に成長の場でもあった。アルカンはこの探検を通じて、さらに強く、賢くなっていくのだった。


□ 守り神との遭遇

突然、アルカンの前に巨大な龍が現れた。守り神とされるこの龍は、森を守る存在であり、その威圧感は圧倒的だった。しかし、アルカンの中には「蛮勇」の能力が目覚め、恐れを知らぬ突撃を試みた。


「行くぞ、バラジ!」アルカンは叫び、龍に向かって突進した。


バラジは止めようとしたが、アルカンの決意は固かった。アルカンは龍に何度も攻撃を仕掛けたが、龍の力は圧倒的であり、彼は次第に追い詰められていった。そして、最後には龍の一撃を受けて倒れた。


□ 龍の宝

龍はアルカンの勇気を認め、彼に一枚の鱗を残して姿を消した。バラジとラクシュミは急いでアルカンの元に駆け寄り、彼を介抱した。


「アルカン、大丈夫か?」ラクシュミが心配そうに尋ねた。


「龍の鱗だ……」アルカンは弱々しく言った。


その鱗は、アルカンが手に入れた貴重な宝であり、防御値と最大防御値をそれぞれ10上げる力を持っていた。アルカンは一週間の間、起き上がることができなかったが、その間に彼は自身の勇気と力を再確認し、さらに強くなっていった。


アルカンたちは本日の収穫物(脚注①を参照して下さい)を街の商人に売り、大きな収益を得ることができた。この収益は、彼らがさらに強くなるための資金として活用されるだろう。


今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。


後書き

本話では、エルデン公爵家の末子アルカンが、家庭内での孤立感と疎外感を抱えながらも、自身の力で生き抜く決意を固める過程を描きました。バラジとラクシュミという農奴夫婦の支えを受け、アルカンは心温まる朝食を通じて一日の始まりを迎え、森での訓練と探検に挑む姿が描かれています。訓練と探検を通じて、アルカンは自分自身の能力を高めると共に、自然の中での経験から多くを学び取ります。特に、守り神の龍との遭遇は、彼の勇気と成長を象徴する重要なエピソードでした。龍の鱗という貴重な宝を手に入れたことで、アルカンはさらなる成長への決意を新たにします。


【脚注】

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622173316572916

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