3日目

モダンな感じの高そうなホテルの部屋に案内されて、私は(精神を研ぎ澄まし慎重に)シャワーを浴びている訳だけど…


「…怪しい。」


爛々さん…雰囲気的に、どっかの異世界で会った事がある気がするんだよなぁ。全身の鳥肌が立つというか…いや恐怖とかじゃないけどね。


『統一世界』で、毎日お風呂(戦場)に入ってたから、シャワーも慣れたものである。 


「う、あっぶ…!?」


す、水滴が…ふ、ふぅ……危うく死ぬ所だった。油断しちゃ駄目だよね…はぁ。


「ヘイ、ルーレットの女神…爛々さんって知ってる?私…何か既視感があるんだよね。」


【今、資料を確認して…ガタガタガタガタッ】


ん………物でも落とした?やれやれ…おっちょこちゃいだなぁ。


【!?…え、あ…何でもありません。私…ちょっと、外に用事があるので…身支度をしてきます。】


いつも私を虐めてるルーレットの女神が、あんなに狼狽してるなんて…ちょっと新鮮かも。これは、絶好の反撃チャーンス!!!!


「ねえねえ…どしたの、ルーレットの…」


「ノエルさん、お着替え置いときますよ。」


脱衣所から、爛々さんの声が聞こえて…長くシャワーを浴びている事に気がついた。


「あっ、はーい。」


反撃チャンスを逃したのは痛いけど、そろそろ出るか…これ以上、危険地帯に長居する道理はない。


……


髪をドライヤーで乾かしてから、置かれていた白いバスローブに着替え、日が沈んだのを確認して、カーテンを閉めてから、大きなベットの上に寝転がった。


「うわぁ…柔らかーい。」


ここに、コップ一杯のAB型の血液があれば完璧だったな。


今…爛々さんは、シャワールームにいる。逃げるなら…きっと今だろう。


ご都合主義かもだけど…上手く、爛々さんを言い含められれば勇者も簡単に手を出せない、無敵の居城が手に入る可能性も捨てきれない。


「……ルーレットの女神ー。爛々の事、いい加減に教えてよ。分かったんでしょ?」


さっきの言動的に離席しているか、無視されるだろうと思っていたのだが、驚くべき事に返答が返ってきた。


【ノエル…ここから逃げましょう。】


……私もそう思ったけどさ。見ず知らずの私に、居場所を特定されても、勇者も簡単には来にくい、最高の避難場所を提供してくれたんだよ。それを無下にするのは、ちょっと勿体ない気も……


【爛々 院…彼女が『聖竜』であると言っても?】


聖竜?そんな神々しい竜とは知り合いじゃないよ。


【性行為の『性』ですよ…ノエル。後、名前は寺院の『院』ではなく、淫乱の『淫』です。】


『性竜』……爛々らんらん いん


私はベットから飛び起きて、バスローブ姿のまま、玄関を目指した。


……


これは…異世界にいる者なら(私でさえも知ってる)必ず知っている一般常識。


『第二次竜征伐』において(詳細は分かんにゃい)唯一、生き残った『三大竜』の内の1体。


曰く…被害報告が最も多い。


曰く…殆どの世界に、少なくとも必ず1体はいる為、実質根絶不可能。。


曰く…視認できる範囲内の男女、雄雌問わず、生殖能力がある存在に対して、強制的に自分の子を孕ませる能力を持つ。


そして…種族関係なく、街や村を侵略して、気の向くままに、ヤッては無限に自分を増殖させる……究極の絶倫。


母様や『原初の魔物』が、驕り上がった人類の敵なら、かの竜はこの世全ての生命体の敵。



名を……『性竜』セクロスと言う。



【ちなみに…『六大竜』が大陸に存在していた『第二次竜征伐』時、『性竜』コーラルと呼ばれていました。最盛期は4545兆0721億体まで数を増やし、4種族を…まあ、色んな意味で苦しめたそうです。】


「はぁ…はぁ……」


玄関のドアノブを掴む。早く…1秒でも早く逃げないと……!!!!



——ノエルさん。



蠱惑的な囁き声が、右耳から聞こえて…ゆっくりと後ろを振り返ると湿り気を帯び、さらに色気を増した、素っ裸の爛々さんが立っていて…


輝夜かぐやさんの事といい、この世界の住民ではないのは分かってましたが…まさか、私の事をこんなにも知ってくれていたなんて…運命的だとは思いませんか?」


こっ、心を読まれている!?オルンの時以来か…


逃げようにも、爛々さんがセクロスなら、数の暴力で、蹂躙されるかもしれない以上…簡単には動けないぞ…あっ、ヤバ…


「え、えーと。」


「フフフ…安心して下さい。私はそんな惰竜達とは袂を分かち、独立した身…この『箱庭』に来てからは、元々あった能力は失われています。私は私1人だけです。」


そーなのかー…で、安心出来ねえっ!!!やっ…ヤられる……異性はともかく同性とはした事が…


「ノエルさんが知っている連中のように、自己の快楽の為に、使い潰したりするような真似はしません…私の全身全霊を持って、ノエルさんに悦びと幸福を与えましょう。」


僅かに湿った手で、私の左手を優しく握った。


「さあ、行きましょう……あら?」


突然、爛々さんが片膝をついて、私は笑う。


「膝の力が…」


「…ふっ。」


私がいつまでも負けたままでいると思うなよ。特別に教えてやる。



これは母様…ではなく、精霊嫌いの同士、フウカちゃんから教わり見よう見まねで、奇跡的に再現する事に成功した私が使える、9つある奥の手の1つ。


…だと出来るようになった時はそう確信していたが、大嫌いなスロゥも同じような技が使えるらしいと知った時は、フウカちゃんと一緒に、かなり落ち込んだ。


物凄ーーーく、癪だけど、スロゥが命名してくれた名の方が通りはいいだろう。


「『耳長王』である、フウカちゃんの十八番…『フィクストドレイン・タッチ』さ。」


跪いている爛々さんが掴んでいない手を握り、私は笑った。



私の奥の手の大半には、代償が存在する。


『指鉄砲』『ロケット・パンチ』『ノインテーター』は自分の不死力や、体内の大量の血肉を消費し、『影渡り』は使えば20%で誰かの影に閉じ込められるのがいい例だろう。


「なるほど……適応しました。」


奥の手ではないけど、『招集』は、私よりも圧倒的に強い兄さんを呼べるけど…デメリットしかないしなぁ。


ズルズルズルズル……


だが、『フィクストドレイン・タッチ』だけは違う。代償とかは特になくドレインするのは…手で触れた者の体力のみ。機械系を除いた全種族に有効だ。


フウカちゃんは、血液とか魔力も吸えるらしいけど…こればっかりは仕方ない。


ボフッ


他の奥の手と違い、吸う量が固定値な事もあって、この世界において制限されないのだ。


「フフフ…」


カプっ…


「っ…あ。」


えっ…どうして今まで使わなかったのかって?


「ここですね…ほら、舐めて差し上げます。貴女はここが…フフフ。弱いみたいですね?」


「うにゃ……やめっ……あっ///」


【んっ…まさかノエルの感覚を、同調させるとは……っ、屈辱です…性竜如きに…っ〜〜】


固定値で削れる体力を数値に表すとしたら、私が両手で握っても精々、9くらいだからだよ。


フウカちゃんみたく、本物のエルフじゃない吸血鬼の…これが限界だったのだ。


「竜としての能力は失いましたが、っ…創世と終末を繰り返す果てに…んっ//私はどんなものにも適応する能力をぉ…手に入れました。この無常なぁん//世の中において、人や魔物…縛りの多い吸血鬼ですらも、こうして悦びを与えてあげられる…ぅ///…最高の力だとは…んんっ…思いませんか?」


マウントポジションで唇を奪われて、舌が絡み合い…熱で頭が一杯になる。冷静だった私の思考は次第に、快楽へと溺れていき……


舐められて/舐め回し

噛まれ/噛み返して

飲んで/飲ませる

弄って/弄り尽くす


翌朝になるまで、ぐちゅぐちゅと鳴る音と、お互いの喘ぎ声だけが部屋の中で、木霊した。


























































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る