ツバメ

縞間かおる

第1話 事故物件

 昨日、離任式を終えたその足でこの街へ戻って来た。

 そう!引っ越したのだ!

 しかも4年前と同じ『松風アパート102号室』へ。

 私が引っ越した後のこの部屋に住人が居たのかどうか不明だが、部屋に染みついたニオイは昔のままで……さすが『事故物件』だけの事はある。

 でも、私にとってそんな事はどうでもいい。

 この部屋は……“勝手知ったる”街の安い物件で……

 何よりも“あの人”のすぐ近くなのだから。


 どうせ数か月間の事だから“巣作り”は、ベッド以外は至って簡便にした。

 食器だって、100均で取り揃えたし……


 この殺風景な部屋に“あの人”を呼び込む手段はただ一つ!

 お金の匂いだ!


 昼はパートを掛け持ち、夜はスナックでオヤジ共に媚びを売る。

 そうやって働き詰めに働いて稼いで行けば……

 いずれ“あの人”はやって来る。

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