第6話 六日目(後編)
夕食後の自由時間に合わせて、わたし達第3グループは談話室に向かった。
第5グループの小野寺さんはきちんと予約できたようで、施設スタッフに用件を伝えたら20人は入れる大きな会議室に案内された。
部屋に入るとそこには、長机を集めて作った大きなテーブルが置かれていて、第5のみんなは先に座って待っていた。等間隔に並んで座っているように見えて、一人だけ広めに開いている男子がいた。多分、彼が秋月さんなのだろう。
考えてみればわたしは、秋月さんとは自己紹介を交わした以外に何も知らない。
あの時の印象は眼鏡がよく似合うほっそりした顔の真面目そうな6年生だな、くらいのもので、今改めて顔を合わせると神経質そうで我が強そうな顔に見えるから不思議だ。
小鳥が先入観を持つなと言ってくれてなければ、この時点でイライラし始めていたかもしれない。
第5のみんなが自分の前に紙コップを置いているのを見て、わたし達もウォーターサーバーからお水をとる。それから相対するようにわたし達もテーブルに着いた。
リーダーの秋月さんがテーブルの端に座っているのに合わせたのか
「こんばんは、第3グループのみなさん。6年の小野寺です。ところで今夜のメインは牛肉にした? それとも鶏肉?」
秋月さんの隣に座る小野寺さんが挨拶を口にすると、すぐに秋月さんが不思議そうな顔をして口を開いた。
「小野寺、そんな事よりもさっさと合同の可否を聞く方が早く結果が分かって効率的じゃないか?」
第3にも地元のクラスにもいない初めて見るタイプに、わたしは驚いてのけ反りそうになる。それと同時に、
「6年の鷲尾です。いきなり本題に入るよりも、円滑なコミュニケーションを図るなら多少の雑談はむしろ効率的だろ」
鷲尾がフォローするように割り込むと、秋月さんは目を細めて彼に顔を向けた。
右隣に座る小鳥から「これはなかなか……」と漏らした声が聞こえた。
「5年の
美華が答えると、小野寺さんはビーフシチューを選びレストランで食べるような味だったと感想を口にした。それから茉莉花や小鳥が順番に自分が選んだメニューを話題に会話が弾んでいく。
わたしも参加しながら秋月さんの反応を伺う。多分苛ついたり面白くなさそうな表情を浮かべているだろうと思っていたら、彼は無表情のまま会話するみんなを観察しているように見えた。
「さて、こちらから合同をお願いしてる以上、隠しても仕方ない。グループ総数12の内、現時点で
喋り方も切り替えた小野寺さんはキリッと表情を引き締めて話し始めた。
六日目の今夜で七つのグループから拒否されていると知ったわたしは、茉莉花の言葉を思い出した。これでは確かにしんどいだろう。しかもはっきりと理由を添えられて断られている。
そこへその理由である秋月さんが、自分も残り三つのグループに打診している最中で、どこからも明確に断られていないと報告すると、茉莉花が声を荒げて口を挟んだ。
「だから! 一旦みんなと検討してみますって言うのは、やんわりとした断り文句なんだってば! 本人相手にあなたがいるグループとは組みたくないですなんて、言うわけ無いじゃない!!」
一度言い合いと言うか喧嘩しているせいか、茉莉花に遠慮は無かった。
それよりも秋月さん以外はここにいる2グループを除く、残り10グループから断られたと考えている事に驚きを隠せなかった。思わず隣に座る小鳥に顔を向けると、彼女も目を瞠って驚いていた。
わたし達が驚いている間も二人のやりとりは続いていた。
「しかし検討しているならその結果を待つのが当然だろう?」
「だーかーらー! その結果っていつ来るのよ!? 今日? 明日?」
「確かに期日と時間は約束していないが……」
「……そんなの待ってたら、あたし達第5グループだけ合同組めなくて詰んじゃうよ。あんたのせいで、どうしようも無くなっちゃうんだってば!」
「落ち着いてください。茉莉花サン。ここは誰かを糾弾する場ではありませんヨ」
茉莉花と芽衣の後ろに立っていたAICUが、茉莉花の両肩に手を添えて落ち着くように求めた。二人の近くにいるからきっとあのAICUがマシュだ。
「秋月さぁ、本当に慣用句や遠まわしな断り文句を理解できないのか?」
「しつこいな河野。検討してみますは断る際の慣用句には含まれない。少なくともボクはそう習っている。第一、拒否するのに婉曲な表現を使う意味が分からないと言ってるだろう? ダメでも嫌でもなんでもいい。明確に断ればお互い無駄な時間を省けるだけ効率的じゃないか」
二人の会話を聞いていると、何かが嚙み合っていないように感じた。その何かが分からなくて胸の辺りがもやもやする。
腕組みして考えていると、左から小声の会話が聞こえてきた。もちろん鷲尾と千種が会話しているんだろうけど、本当に声を絞っているから内容までは分からない。
こんな時に何を話してるんだろうと意識を向けたら、鷲尾が背中を押すような声音で「よしいけっ」と言ったのが聞き取れた。
「あのさ、答えたくなければ答えてくれなくてもいいんだけど、秋月くんって相手というか他人の考えとか気持ちを推測するの、苦手?」
千種が唐突に放り込んだ爆弾のような発言に、テーブルに着くみんなが彼に注目した。
時間にしたら2秒も経たない内に、白虎が千種に近づいて質問した。
「雄介クン。その質問はこの場に必要ですか? 質問内容は十分に考慮しましたカ?」
「もちろんだよ白虎。この質問は僕達が合同を組むかどうかだけじゃなく、この場にいるみんなも知っておくべきと考えたから聞いたんだ」
千種はあっけらかんとした口調で白虎に返事をした。すると白夜と思しきAICUが、秋月さんに強いて答える必要は無いと話しかけているのが見えた。
だけど秋月さんは眼鏡を直すとまっすぐに千種を見据えて、「必要なのか?」と一言だけ反問した。それを聞いた千種がこくりと頷くのを確認すると、彼は改めて口を開いた。
「端的に言えば苦手だ。極めて不得手と言ってもいい。例えば同じ言葉を掛けても人によって反応が違う。ボクは個別にいちいち対応するよりも、画一的に対応した方がよほど効率的だと考えて行動している」
詳細に答えてくれた秋月さんに千種は丁寧なお礼を告げた。それから第5のみんなをぐるりと見渡してから話し始めた。
「個人情報になるから詳細は言わないけど、秋月くんに似たタイプって結構いるんだ。質問した僕がそういうの得意って話じゃなくて、本当に苦手な人は相手とか周りの考えや気持ちを無視したり興味が無い訳じゃなくて、ただどうしてもなんでそんな反応するのかよく分からないだけなんだよ」
さっき秋月さんと河野さんの会話が噛み合っていないと感じた原因の、足りなかった歯車を見つけたと思った。
衝動的に会話に飛び込む。
「秋月さん、例えばわたしがあなたのここが嫌だからしないで欲しいとお願いしたら、直してくれますか?」
急に割り込んで発言するわたしに、秋月さんはものすごく面倒くさそうな視線を向けてきた。結構厳しい視線だった。
それでも少し考える仕草をしてから秋月さんはわたしの目を見ながら答えてくれた。
「仮定の話なので何を嫌と言われるか想定しきれないが、対応できるなら直すし難しくてもその努力はする」
「じゃあ、自分は他人の考えや気持ちを推測するのが本当に苦手って話を、第5のメンバーに話しました?」
首を何度か横に振った秋月さんは「聞かれていないので答えていない」と口にした。
わたしは一度頷いてからありがとうとお礼を伝える。何故お礼を言われるのか分からないと言わんばかりにきょとんとした表情を見たわたしは、ほんの少しだけでもお互いの距離が縮まったように思えた。
「茉莉花ちゃん。最初の日、白夜達の名付け我慢したの、なんで?」
不意を突かれたのか茉莉花は慌てた様子で一瞬だけ芽衣に視線を送る姿を見せた。
……やっぱりか。
この言葉が頭に浮かんだ時、私の右袖を小鳥が引っ張った。顔を向けると彼女は何も言わずに小さく首を横に振ってみせた。
でも言うなら今しかないという思いをどうしても捨てられずにいると、その小鳥が口を開いた。
「あのぅ、さっきからお話を聞いていると秋月さん以外のみなさんも、グループ内の意思疎通を図ろうという姿勢が足りてないんじゃないかなって思うんですね」
右手を頬に当てた小鳥の言葉が静かに広がると、秋月さん以外の第5グループメンバーの表情が強張ったように見えた。
たちまち会議室の中は静けさに満たされた。
ヴァイス達から漏れる機械音が、やけに大きくなったように感じるほど静かさが痛くなった時、河野さんが猛然と立ち上がって口を開いた。
「おかしいじゃないか。普通はそんな風に考えないって言ったら、それは誰の普通かって聞き返すんだ。バカにしてるとしか思えないだろ? 普通ったら普通だって言えば全然変わらねぇんだぞ」
その声はぎゅうぎゅうに詰めた袋の一角に開いた穴から絞り出されたどろどろの彼の気持ちだった。
「茉莉花さんだって小野寺だって、おかしいおかしいって言ってたじゃないか。他のグループの奴らだって、あいつ距離感バグってるからメンバーから注意しなよとか言いたい放題だったじゃないか。それが今第3に聞かれたらペラペラ答えてさ」
「おい河野!」
小野寺さんが彼の肩に手を伸ばすと、河野さんはその手を払いのけて拒絶した。
「聞かれなかったから答えなかった!? 何のキャラの台詞だよ! だいたいな、おれらだってここで初めて会ったんだ。聞かれなきゃ答えない秋月がどんな奴なのか、知らねぇのは一緒だよ!」
自然と秋月さんに視線が集まると、彼はわたし達を見回してから一言だけ口にした。
「こういう時は黙っていた方が早く終わる」
「これだよ、これ! これでもおれらが悪いのか?」
白夜が河野さんに近づこうとするのが見えた。
でもその前に小鳥が答える声が聞こえた。
「誰もあなた達が悪いとか責めていないですよ?」
「さっき足りてないって言ったろ」
「あれはただの感想です。責めているように聞こえたなら言い方が悪かったです。ごめんなさい」
そう答えた小鳥は、怒りで顔を真っ赤に染めた河野さんに頭を下げた。その姿に彼は毒気を抜かれたように力なく椅子に座りなおした。
彼が座ったのを確認した小鳥は改めて話し始めた。
それはわたし達第3グループが二日目に話し合いと言う名の言い合いをした顛末だった。一度聞いている茉莉花と芽衣以外はわたしと鷲尾を交互に見て目を見開いていた。
2度も自分の話を聞くと込み上げてくるのは恥ずかしさしかない。
「ヴァイス達にフォローして貰いながら、瑞希ちゃんは
「急に名前呼びしたら誰か分かんなくね?」
そう言いながら鷲尾も、これまでの千種とのやりとりや他メンバーとのやりとりを思い出すように話し始めた。
やっぱり千種は最初の自己紹介通り、誰とでもとりあえず話をしたり聞いてみたりと挑戦を欠かさなかったようだ。初日二日目も鷲尾がわたしに向ける嫌悪をいち早く感じ取って様子見をしていたそうだ。
そしてはっきりとは言わないまま第5グループメンバー全員に、あなた達はどうですか? と問いかけているようだった。
「あたし達の名付けをさんざんバカにしてきたじゃん……」
目元を真っ赤にした茉莉花がそう言うと、秋月さんはテーブルに上体を伸ばして彼女の顔を見ながら答えた。
「十日後には返す機材に名前を付ける意味は今でも分からない。それに情が移ると別れが辛くなると忠告されて、あの時に二人とも付けなくていいと同意しただろう」
そこへ芽衣が割り込んだ。彼女の頬にはもう涙が流れていた。
「本当は名前も付けたかった! でもそんな事言える雰囲気じゃなかったし、確かに一度つけなくてもいいって言っちゃったし……」
「雰囲気? 雰囲気は関係無いだろう? まだ初日で雰囲気が出来上がる前の話だ」
ぐっと息を詰まらせる茉莉花と芽衣を見た鷲尾が我慢しきれない様子で口を挟んだ。
「そういうトコだと思うぞ。秋月さん」
当然みんなの注目が鷲尾に集まると、彼は話を続けた。
「
そして鷲尾は、みんながバカにされたと感じた秋月の言動にそんな意図は含まれていないじゃないかとも話した。さらに希望の強さによってはこれ以上はわがままと言われるところまで、例えダメでもそれを自分が納得できるところまで主張した方がいいと話した。
「すぐ引っ込められる希望は、その程度のものだったと思われる事だってある。自分の希望の強さは自分しか知らないんだから、簡単に引き下がっちゃだめだったんだよ」
「それでも、無駄だ非効率だって何度も言われたら……」
そう言って泣きながら椅子に崩れ落ちた芽衣を、茉莉花がそっと肩を抱く姿が見えた。
「それならその言い方は不快だから止めてくれ、と言えれば簡単なんだろうけどね」
千種が肩を竦めてそう言うと、初めて秋月さんが動揺する姿を見せた。
「ボクは名付けしたいという相談を受けたので、無駄だな非効率だなという自分の考えを答えただけなんだが……」
テーブルに着くみんなが、ザァッと引く音が聞こえた気がした。それはこれだけ話してもまだ伝わらないのかという寂しさが含まれているように思えた。
「あのさ秋月さん。誰にとって何が無駄かなんて他人が決める事じゃないと思う。秋月さんの考えは秋月さんだけのものだから、次からは簡単に無駄とか非効率って言葉を使わない方がいいよ。今もの凄く無駄で非効率な状況だもん」
そう言い返したら、秋月さんは初めて気づいたようにがくりと肩を落とした。
「さて、と。グループ合同の話に戻すけれど、秋月さん以外は第3グループと合同したいという希望に変わりは無し?」
おっとりとした小鳥の声に茉莉花達は黙って頷いた。
それはそうだろう。第5グループにとって合同を組める先はわたし達しかいないと考えているのだから。
「秋月さんは持ち掛け先の返事をまだ待つつもり? 返事が来る保証なんて無いし、結果が分かるのが野外宿泊レクリエーション当日かも知れないけれど? 残り四日を過ごすにあたって、道連れでも作りたいのかな?」
冷たく突き放すような声音で追い打ちをかける小鳥に、第5のみんなよりは付き合いのあるわたし達の方が軽く体を反らした。怖いです、小鳥さん。
「でもどうしたらいい? 検討すると返事を受けている以上……」
「
そう言いながら鷲尾はわたし達一人一人と顔を見交わした。千種が頷くのを横目に見ながら、わたしも大きく頷き返した。
「ありがとう」
先に会議室を出る事になったわたし達を見送る茉莉花達が口々にお礼を言う中で、秋月さんも一緒にお礼をしているのに、一人孤独に立ち竦んでいるように見えた。
扉を閉じてすぐに鷲尾が話し始める。
「外部の俺らが出来るのはここまでだろ」
「そうだね。ここから先は秋月さんがどうのじゃなくて、他の四人が秋月さんにどれだけちゃんと話しができるかじゃないかなぁ」
「河野と細川は微妙だけど、小野寺がいるからギリなんとかなるんじゃないか?」
安堵を滲ませた鷲尾と千種の会話を聞きながら足を進める。
「それよりも蒼空くん、良かったの?」
「それは雄介も一緒だろ? とは言えあれはもう、流石にほっとけないだろ」
「それは、まぁ……」
二人は声を絞ったものの気にかかる
わたしは組むなら茉莉花達のいる第5がいいかなと思っていたけれど、自発的に組みたいと思うグループは無かった。
今の会話がそれを教えてくれたような気がした。
美華と小鳥はどうだったんだろう。
わたし達しか無い第5グループと違って、わたし達には他にも選択肢があったはずだ。
本当にこれで良かったのかと疑問が頭を過る。
「みぃーずきちゃん。どしたー?」
また美華が顔だけで振り返りながら揶揄うように話しかけてきた。
「またもう。どうもしないよ。ただ、人付き合いって大変だなって思って」
うんうんと訳知り顔で頷く美華に何気なく問いかける。
「ねぇ美華ちゃん。合同組む相手、第5で良かったのかな?」
ぱたりと足を止めた美華が、私の顔を覗き込んでから答えた。
「自分の答えが出てないなら聞かない方がいいよ。まず瑞希ちゃんがどう考えてるかじゃない?」
答えが出ていない事を見透かされたようで恥ずかしくなる。
歩き出したわたしは誤魔化すように口を開いた。
「わたしは茉莉花ちゃん達のいる第5と組めたらいいなとは思ってはいたけど、絶対に第5と組みたいとも思ってなかったから……。美華ちゃん達はどうなのかな、と思って」
「さっきの続きみたいだけど、瑞希ちゃんがそう考えていたならそれでいいと思うよ。私達、瑞希ちゃんに合わせて第5と組む事を選んだんじゃないもん」
「そうね。みんな自分で考えて第5と組む事に決めたんだと思うよ。もちろん組むあての無い第5のみんなに同情したかも知れない。だけどその事やみんなの決断に瑞希ちゃんが責任を感じる必要はないよ」
美華と小鳥にそう言われて、ほっと安心するわたしがいた。
戻ろうと言う美華の後を追うと、小鳥が思い出したように話し始めた。
「向こうはかなり拗れてたけど、どうせ後四日の付き合いと思えば切り替えようもあるでしょ。ずっと付き合っていかなきゃいけないならまた話は違うんだけど、結局サマースクール限定だもの。大丈夫よ」
美華と並んで歩く小鳥の言葉にドキリとした。
「そうだねぇ。気付けばもう折り返しを過ぎて明後日は野外宿泊で、翌九日目は各プログラムの実質最終日。あっと言う間だねぇ」
美華も今まで通りの明るい声がわたしの胸に大きな風穴を開けた。ヒューッと冷たい風が吹き抜けると心が冷たくなっていく。
「守秘義務契約に引っかからないように連絡先交換したいね」
「おっいいねぇ!」
「契約内容の確認が必要であれば、お部屋に戻った後で説明しますヨ」
二人の会話と白虎の落ち着いた声が胸の風穴を通り抜ける度に、このお祭りのような日々があと少しで終わるのだと突きつけられるようだった。それは認めたくなくて顔を背けても、冷えていく心を見下ろす頭の中で、全部最初から決まっていた事だと何度も繰り返し浮かび上がる。
知らない内に足が止まると、傍にいるのはヴァイスだけだった。
先を進む鷲尾の声が廊下に響いた。
「おい美華、小鳥。瑞希が泣いてるぞ」
「え!? なんで?」
「どうしたの瑞希ちゃん? どこか痛いの?」
慌てた鷲尾が呼び捨てになっている事にも気づかないまま、わたしはポロポロと零れる涙を止められなかった。
「ご、ごめん。なんか急に……。ごめんね、止まんなくて」
心配してくれるみんなに申し訳なくて恥ずかしくて、サマースクールがもうすぐ終わると思ったら泣いちゃったとは言えなかった。
「大丈夫ですか? 瑞希サン」
「え、うん。大丈夫、大丈夫だよヴァイス」
「ソウですか。それならよいのですが。何か力になれる事があれば遠慮せずに言ってくださいネ」
慰めるように優しい声色でそう言ったヴァイスの声は、不思議と冷たく感じられた。
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