ここはきっと乙女ゲームの世界
@tyawanmusi1018
第1話 今世は乙女ゲームの世界
カタカタ、薄暗い部屋の中でキーボードの音が鳴り続ける。
”WIN”
画面にそう表示される。
「秋本」あ〜ぁ、このゲームもう飽きた
ゲーミングチェアでぐったりとしている秋本がそう言う。
「秋本」何かいいのねぇかな、
先ほどのゲーム画面から検索画面に切り替わる。
光る画面を見る秋本の目元にはくっきりと
「秋本」あ、
秋本が何か思い出したかのようにネッ友のLINE画面に切り替える。
「秋本」これか
先日、ネッ友から”今やってるゲームが飽きたらやってみて”と最近人気らしいゲームのURLを送られてきた事を思い出す。
「秋本」(暇だしやるか、)
秋本はマウスを動かし、そのURLをクリックする。
カチッ
その音ともに薄暗い部屋にはゆるふわな音楽と美形なキャラが集まった画面に切り替わった。
「秋本」乙女ゲームなのか、(あいつがこういう系おすすめするの珍しいな)
このゲームをおすすめしたネッ友はいつも美少女や美女キャラが多いゲームをおすすめするのでイケメンキャラが多い乙女ゲームをおすすめするのは珍しいと思った。
「秋本」
格闘専門のプロゲーマーである俺だが、ゲームは基本何でも好きなのでスタートボタンまでカーソルをもっていく。
スタートボタンを押そうとした瞬間、
バタンッ
急に視界が変わり、俺は椅子から転げ落ちた。
「秋本」(あぁ、俺死ぬのか←)
俺の人生の経験からしてこれは確実に死ぬ、とすぐさま理解した。
そして予想通り俺はこの世を去った。
パチッ
目を開けると、
「父」あ!
「母」なっちゃん、ママよ〜
巨人がいた←
ってのは冗談で多分俺は転生して、今は、、、
ムクッ
足と手に力を入れ、立ち上がる
「秋本」ぱぁ、ぱ、ま、ま(立てて滑舌もこんなんだから3歳ぐらいかな?)
「両親」泣
急に両親が泣き始める
え、急になに?、、、もう疲れたから寝ようかな←
「母」なっちゃんがママってぇ〜泣
「父」パパって言った泣
両親が抱き合いながら泣いている。
何とも珍妙な景色である。
「秋本」(まぁ、部屋を見る限りお金持ちそうだし、両親もアレだし勝ち組だな←)
あの日から分かったことがある。
この世界はやはり前世の世界とは少し異なり、お金持ちが数多くいたり、髪色や目の色が沢山あったり、美形の数が多い、ということが分かった。
俺はというと、髪が父譲りの黒色で、目が母譲りの夕日色だった。
見た目は母寄りの中世的男子だった。欲を言えば父寄りの中世的男子が良かった←
そして、俺の名前は変わったが、苗字はそのまま秋本。家柄もかなり良いらしく、代々食品に関する会社を営んでいるらしい。
転生してからは早かった。
4歳では、ゲーム欲しさに語学や基礎知識、現時点での英才教育を全て終わらせ見事に最新のゲーム一式をゲットした。
小学生時には、お金持ちの学校に通って、友達は作らず家でゲームをしていた。
そして中学生時にもお金持ちの学校に通いながら、プロゲーマーを親に勧められ学校とプロゲーマーを両立していた。そしてプロゲーマーとして有名になると共に学校では友好関係もできていった。(両親が心配して裏金を出そうか迷っていたので友達を作って紹介した)
そして、今年からは俺も晴れて高校生になります。
またお金持ちの学校だけどね、けど今年は今までとは少し変わり、俺は寮生活を迎えることになった。
理由は単純、家が遠いからだ。
車で2時間以上もかかるので、両親も渋々許可を出してくれた。
見送りが面倒かったな←
部屋の荷物は既に運んでいるらしく、入学式が終わった後はそのまま部屋にいけるらしい。
そして俺は、校門の前に立つ。
「秋本」(やっぱ校門からして大きいわ)
そう思いながら門を潜る。すると横後ろから、
「早乙女」よし!これから頑張らなくちゃ!
と、張り切った可愛い声が聞こえた。
「秋本」(それ口に出して言うんだ)
てか、どっかで聞いたことあんなぁ〜と思いながらあまり気にせず歩き続ける。
すると、少し離れた校門の方から
ドッターン☆
と変な効果音が鳴った。
後ろが気になり振り向くと、先ほどの可愛い声の持ち主であろう金髪に金眼の美少女が金髪青眼のThe王子様系男子に手を差し伸べられていた。
2人の背景には校門があるはずなのだが、何故か花やキラキラのエフェクトが見えた。
あぁ、思い出した、あのキャラにさっきの台詞に何故か見覚えのあった制服、
ここは、
「秋本」(乙女ゲーム、永遠の流星群☆の世界!)
マジか、通りで見覚えがあると思ったわ
そして秋本の頭の中で一つの公式が浮かんだ。
”乙女ゲームのストーリに関わると?=面倒いことになる”
ここがあの乙女ゲームの世界なら、気を付けることは!
「秋本」(メインキャラに近寄らないこと、)
プレイする前に死んだからメインキャラの顔とか全然知らないけど←
とりま、ヒロインと攻略対象者1人目はあいつか、
「モブ」キャー!あれって生徒会長の
「モブ」本当だわ!素敵!
周りの女生徒達は男の正体に気づくと黄色い歓声をあげる。
「秋本」(よし、生徒会は危険人物っと)
秋本はどこかから取り出した手帳にメモりだした。
「司会」これで校長先生のお話を終わります。続いて、
トントンッ
右肩が叩かれる感覚がする
「秋本」ん、
あれ、俺寝てたのか、、、校長が喋り出した瞬間から記憶がねえ←
ムクッ
俺は上半身を起こす
???
上半身を起こす?
あれ、そういえば俺は枕が無いと寝られない体質の筈だが、なんであんなぐっすりと
寝てたんだ?
そして、右の方を見る。
「蓮」、、、
横には黒髪黒眼のイケメン、そして座ってても分かる、高身長だコイツ←
よく見るとコイツの左肩の服が少し乱れていた。
俺が謝罪の言葉を口に出そうとした時、
「司会」最後に、生徒会長西園寺颯さんからの挨拶です。
「女生徒」キャァァァァァァ!!
黄色い歓声が体育館を包む
「秋本」(タイミング悪)
そしてステージに生徒会長が登り、マイクスタンドの前に立つ。
「颯」新入生の皆さん、生徒会を代表してこの度はご入学おめでとうございます。
「女生徒」キャァァァァァァ!!
その後も生徒会長のキラキラしたスピーチが終わり、閉会の挨拶をして入学式が終わった。
そして全員が寮や家に帰ろうと体育館を後にした。
そして人が少し空いた頃に隣の黒髪高身長が席を立った。
俺はその高身長に
「秋本」すまん、勝手に肩借りて
と言った。
するとその男はこちらを向いた。
「蓮」フルフル
と、顔を横に振った。
コイツ喋れないのか?
「秋本」お前、喋れないのか?
「蓮」、、、
そいつの顔が急に暗くなる
「秋本」いや、喋れないんだったら無理するな
残念、ついでに身長も聞こうと思ったのに←
俺は言いたいことは言ったので体育館を後にしようとすると、
パシッ
っと、腕を掴まれた。
「蓮」187㎝だ、
喋れたのかコイツ、てか俺身長のこと言ったっけ?
、、、声に出してたのか。
「秋本」お前、
俺が話そうとすると、
「司会」そろそろ体育館を閉めますので急いで体育館からご退出お願い致します。
「蓮」お前寮生か?
「秋本」あぁ、
そして2人は体育館を後にした。
寮に足を進めながら、さっきの続きを話す。
「秋本」なんでお前喋らねえの?深い事情があんなら聞かないが、
そいつは少し黙った後、話し出した。
「蓮」いや、そこまで深い事情じゃ無いんだが、、、亡くなった母が生前幼少期の俺の声を嫌っていて、声を出すだけで罵倒されたりして少しトラウマになっているんだ、
、、、いや、十分深いじゃん、マリアナ海溝並みに深いじゃん
「秋本」てか、俺ら初対面だよな?
なんでそんな深い事情さっき会った奴に話したんだ?
「蓮」いや、俺もよく分からないんだが、お前の眼を見た時に口が緩んでしまって、それで、えっと、、、?
「秋本」?
2人とも頭にハテナマークが浮かぶ
「2人」ふッ、
2人は同時に笑い出す
「秋本」お前、眼を見た時に口が緩んだって、ッふ、俺はどこのヒロインだよ笑
てかコイツ全然喋れてるじゃん
「蓮」笑あ、俺の部屋ここだ
秋本も自分の番号の部屋の扉の前に立ち黒髪高身長の方を向く。
「秋本」俺ここ、、、もう運命だな
内心、マジかと驚いている秋本、だが顔はいつも通りのポーカーフェイスだった。
「蓮」ふっ、そうだな笑
「秋本」(コイツ冷酷そうな感じなのに結構笑うんだな)
その後2人は部屋の片付けをした後、蓮の部屋で明日からの学園生活についてなどを話していました。
夜
「蓮」あ、そろそろ晩御飯の時間帯だ、
蓮が部屋にあった時計を確認してその場を立ちながら秋本にそう言う。
「秋本」大抵は飲み物だけでも人は生きていける
そう言ってスマホゲームをやめない秋本を上から見下ろす蓮。
そして蓮が秋本のスマホを取り上げる。
「秋本」、、、
秋本が蓮の顔を無言で見てくる。
「蓮」栄養失調になるぞ、
「秋本」ウ”ッ←
図星を突かれた秋本はそのまま観念し立ち上がる。
そして下にある食堂に向かおうと秋本がドアノブに手をかけようとした時、蓮が先にドアノブに手をかけて、開ける。
「蓮」俺は
秋本の頭に少しハテナマークが浮かんだが、すぐに答える
「秋本」秋本、
そういや、俺らあんな仲良く談笑してたのに互いの名前を教えてなかったな←
食堂
ガヤガヤ
食堂に来たは良いもの、思ったより人混みが多かった。
「秋本」、、、
俺は無言で回れ右をするが、すぐに黒髪高身t((神宮寺に元に戻された。
「蓮」俺も人混みは苦手だが、流石にご飯は食べないといけないぞ
こいつさっきから素直+正論で反論しようにもできないんだよな、
キョロキョロ
蓮が空いている席がないか探すが、この時間帯は上級生の人も多く集まるらしくなかなか空いているところが見つからなかった。
「蓮」(しまった早く来すぎたな、ただでさえ人には少し苦手意識があるのに)
蓮が秋本の方に視線を向ける
ポチポチ
そういう秋本はいつの間にか没収していたはずのスマホの画面をいじっていた。
「蓮」(いつの間に、というかまたゲームか?)
蓮が秋本のスマホ画面を覗こうとした時に、
「秋本」神宮寺、部屋に戻るぞ
と言って、蓮の部屋に足を進めた。
「蓮」え、
先に行ってしまった秋本を追いかける
蓮の部屋前
「秋本」よし、ちゃんと届いてる
「蓮」これは?
秋本の部屋の横には先ほど無かった荷物が置かれていた。
「秋本」俺の戦利品
と秋本は蓮の質問に答えて、蓮の部屋に入った。
部屋の中にある少し小さめのキッチンでお湯を沸かし始めた秋本。
数分して手に何か持ちながら秋本は戻ってきた。
「秋本」神宮寺ってカップラーメン食ったことあるか?
と秋本は問いかけながら蓮にカップラーメンとお箸を渡す。
「蓮」基本的には家のシェフが作った料理しか食べないから、
こういうものは初めて食べる
蓮はそう言いながらカップラーメンを見ていた。
そう、この世界は前世と似ている部分もあるが庶民層と貴族層のようなものがあるのでこういう庶民層で食べるものをあまり食べない貴族層も少なくない。
この戦利品は家から別で送ってくれた物で、学園では売られていない。
「秋本」じゃ、いただきます
俺がそう言って食べ始める。
ジー
俺がカップラーメンを食べているところを少し見て、蓮を秋本の真似をして食べ始める。
ズズッ
蓮が麺を啜る。
「秋本」お味は?
「蓮」思ったより味が変わるんだな
と、素直な感想を返してくる。
「秋本」まぁ、市販のは基本的に味が濃ゆくて麺も少し太めだからな
カップラーメンはいわば太る麺なのだ。
そして2人はカップラーメンを完食した。
「蓮」カップラーメン、ハマりそうで怖いな
蓮はベッドに寝転がりながらそう呟く。
「秋本」(こいつ今日会ったのにもう慣れてないか?)そういう食べ物だからな
そう言って秋本は立ち上がってドアの方に足を進める。
「蓮」どこにいくんだ?
ドアの方に足を進める秋本を見て不思議そうにする蓮。
「秋本」自室に決まってるだろ
秋本はここはお前の部屋なんだぞ、という視線を蓮に送る
そして蓮は無言で立ち上がり壁に手を置く
「蓮」、、、この壁壊すか、
真剣な表情をしながらぶっ飛んだ台詞を口に出す蓮。
こいつ思ったより馬鹿なのか?
その言葉を秋本はスルーしてドアノブをひねってドアを開ける。
「秋本」じゃあ、明日な
「蓮」あ、
ドアの隙間からは蓮の間抜けな声が
自室
秋本は部屋に入ると、流れるように寝る準備をした。
風呂にささっと入り、歯磨きをして布団に入ってふと秋本は思った。
「秋本」(あれ、今日が初対面だよな?)
ここが乙女ゲームの世界だと今日知り、前世で早く死んでしまった秋本は今世こそはちゃんとゲーム人生を送りたいと思った。そしてメインキャラに近づかないと気を引き締めていた。
だが秋本は、乙女ゲームのメインキャラよりもあいつの方がやばいのかもしれないと思った。
だって初対面で自分のマリアナ海溝並みのトラウマを話してるんだぞ?
それに真剣な顔であんなぶっ飛んだ台詞言うか普通?なんか仲良いとかの次元じゃなくてヤンデレ化していってないか?
「秋本」(適度な友達関係でありますように)
と秋本は願って眠った。
そして秋本は自分が無意識にフラグを立てていたことに気がついていない。
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