白きを告げる水面下は。

こよい はるか @PLEC所属

闇を照らしたい。

 ——太陽が世界を白く照らす。

 今日という日を歌う。


 そして大海原に橋のように渡された光のレール。


 その下は、




 闇に包まれている。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「本気なんだ。お願い、付き合って欲しい」


 逃げようとした私を必死に引き留めて、いつもとは違う低い声で君は私にそう言った。


 そう、“告白”だ。


 あの日のことをまだ鮮明に覚えている。

 彼はその時から——浮気をしていた。


「ねー今日一緒に遊びに行こうよ〜」


 君が話しかける先は、クラスメートの友達。


 男女関係なく誰にでも話しかける君。

 まさにコミュ力の擬人化であり、世に言うチャラ男だった。


 だからって彼のことは嫌いじゃなかったし、むしろ好きだった。

 告白されたのは嬉しかった。


 でも、どこかが違うってずっと前から思っていた。


 ——そして、水面下を見た。


「好きだよ。付き合って」


 彼に似合わない低い声を、真っ白な太陽が私に伝えた。

 彼の心の中に似合わないような白さで。


「え……でも、あの子と付き合ってるんじゃ……」

「あいつとは遊びだよ」


 心が凍てついた。


 所詮私は遊びだったんだね。

 本当は私は君に、愛されていなかったんだね。


 君がしてくれたのは、白きを告げる“告白”なんかじゃなかった。

 本当は、君の嘘……闇を告げる“告黒”だったのかもね。


 そう思った途端に心にヒビが入る。

 氷になった心が割れていく。


 そして私は——彼への信用を無くす。


「お前のことは本気なんだ。……付き合って」


 あの日と同じような、真剣声。


「……はい!」


 相手はとても嬉しそうに、そう言った。

 前まであれを言うのは——私だけだったのに。


 悔しい、悔しい。

 私の知っていた彼が、どんどん黒く染まっていく。

 知らない人に、なっていく。


 彼の太陽で照らされた白い橋の水面下では、まだ未知の力がうごめいている。


 そして私の闇も……顔を出した。




 私が見たのは、君の闇だった。


 白く照らされている君の性格の水面下にある、君の闇。


 でも君の本当の明るさを見るまでは……君から離れられないかもしれない。


 今も尚続く愛情表現。

 この言葉がいつか、“黒く”じゃなくて“白く”なるまで。


 本当の言葉になるまで。


 私は君に……ついていく。


 いつか、君の深海まで強く、明るく、白く照らせるように。

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