第24話 出動!荒らされた村

国からの指令が下った数日後、生徒たちは馬車に揺られていた。


ガラガラと鳴る馬車の音と木のトンネルが作り出す薄暗い空間が、長旅で疲れた生徒たちを夢の中へと引きずり込んでいた。


もちろん俺は馬車に乗れないからこの長距離ずっと徒歩だ。


まあこれくらい息子を見守るためならどうってことない。


この体のおかげで疲れも感じないしな。


「おい、見えてきたぞ!」


木々の門をくぐり抜けると小さな村が顔を出す。


ここが今回の目的地だ。


村の入り口に着くと、白く長いひげを生やした老人が出迎えてくれた。


「ようこそいらっしゃいました。私は村長のアレムと申します」


そこからは村長のアレムがみんなを引き連れ、村の中を案内した。


村を一目見てなぜここに呼ばれたのかよく分かった。


畑や牧場の柵は破壊され、家畜が村中に散らばり、畑はぐちゃぐちゃに荒らされていた。


村の人総出で修復作業をしていたが、完全に直るまでかなり時間がかかりそうだった。


「実は二か月ほど前から森にいる猪に畑やら家畜やらを荒らされるようになってしまって、荒らされては修復作業に追われる毎日です。何度も討伐依頼を出しているのですが、人手が足りないようでずっと先送りにされていました。なのでこうして助けに来てくれてうれしい限りです。ありがとうございます」


アレムはみんなに向かって背中が見えるほど深々と頭を下げた。


顔にも疲れがにじみ出ていて、この件に関して相当参っていたようだ。


「頭を上げて下さい。こうして人助けすることが私たちの役目ですから。できる限り協力していきますよ」


パスヴァルもその光景に少し引きつつも優しく語りかけていた。


「今日は長旅でお疲れでしょう。この村から馬車で十分ほど離れた場所に街があります。そこで宿をとっているので、今日はそちらでゆっくりおやすみになって下さい」


「そうですか。では生徒たちはもう一度馬車に乗ってその宿に向かうように。私は村長とこれからのことを話し合っておく。町についたらそれぞれ自由にしてくれていい」


村を一周し終わるとパスヴァルは生徒たちを馬車に乗せ、先に村に送った。


「それでは詳細について教えていただきたい」


馬車が見えなくなると、パスヴァルがアレムに聞いた。


俺も気になりそのまま堂々と盗み聞きをする。


「この村は昔から食料の生産に優れていて、畑や牧場がたくさんあります。ただ、そうなると獣たちの被害も避けられないものでした。たまに荒らされたりはするものの、こちらで対処できるほどでした。しかし二か月前、白い猪が複数体で荒らしに来るようになったのです。数もそうですが一匹一匹がかなり強くて、さらにその親玉であろう猪はとても大きく、なすすべがありませんでした。それで依頼を出したという流れになります」


「なるほど。では我々はその白い猪を狩っていけばいいんですね」


「はい。しかし、言いにくいんですが、あの子たちに任せて大丈夫なんですか?」


アレムが申し訳なさと不安さがにじみ出た顔でパスヴァルに聞いた。


軍に依頼したのにやってきたのは子どもたちとなっては不安がるのも当然だろう。


「村長が言いたいことはわかります。ですがあの子たちは騎士になるために勉強と訓練を積んできたんです。少々経験不足なところはありますが、きっと力になりますよ」


パスヴァルは優しさと自信に満ちた顔をアレムに返した。


「そうですか。そこまで言うのであれば、彼らに任せましょう」


大体の事情はわかった。


猪くらいならみんな倒せないことはないだろう。


丁度いい訓練になりそうだな。

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