戦う理由

第23話 国からの指令!告げられる激務

今日もいい天気だ。


心地よすぎて眠くなってしまいそうだ。


眠気なんて感じないわけだが。


さて、モールドは今日はなにをしているんだろうか?


校舎の中を歩き回り、モールドを探す。


「一体どういうつもりですか!」


ある扉の前を通りかかると、中から大きな声が聞こえてきた。


あの声はパスヴァルだ。


ほかの扉とは違い、少し重そうで高級感のある扉だ。


校長の部屋だろう。


パスヴァルが声を荒げるのはかなり珍しい。


気になって扉の前で聞き耳を立てた。


「前から何度も言っていたでしょう!あの子たちには早すぎる!」


「もう決まったことだ。これは私だけの判断ではない。国が話し合って決めたことだ」


「そうは言っても、まだ子どもですよ」


「だが戦力としては十分だ。それに、魔族と戦えというわけではない。簡単な仕事を代わりにやるだけだ。丁度いい実習にもなるだろう」


なにやら物騒な話をしているな。


生徒たちを兵士として使うということか?


無茶苦茶な話だ。


「パスヴァルも戦況は理解しているだろう。魔族が活発になってからというもの、人手が足りんのだ。その分を補うためには、この方法しかないのだ」


「…わかりました。ただし、危険なことは引き受けません。命優先でやらせてもらいます」


「ああ、それでいい」


パスヴァルが眉間にしわを寄せながら部屋から出てきた。


そして、頭を抱え、深いため息をついた。


「どうしたものか…」


パスヴァルも子どもたちを預かっている以上、心配も責任も大きいだろう。


俺はこの数年の戦況はわからないが、そんなに厳しいのか。


パスヴァルは重い足取りでモールドたちのいる教室に向かった。


「……というわけだ。今後の遠征訓練は私らもできる限り注意するが、かなり危険になる。心の準備はしておくように」


さっきの話を生徒に話すと、みんなざわめき始めた。


無理もない。


まだ入学してそんなに経っていないのにこんなことになるなんて、誰も想像できなかっただろう。


生徒たちは心配の声ややる気に満ちた声など多種多様な声を上げていた。


モールドたちもそのようだ。


「どうしよう…僕たちもう戦いに行くってこと?大丈夫かな…」


「一年生に任せるとなりゃ、せいぜい見張りとかだろ。心配することないさ。それに、モールドもそんなに弱いわけじゃなかったじゃんか」


「見てたの?」


「そりゃああんなに騒ぎ立てたら見ない方がおかしいだろ。いい戦いっぷりだったぞ」


「でも、負けちゃったよ…」


「お前の事弱い弱い言ってるからよほど弱いんだろうなと思っていたけど、あそこまでタイマン張れるなら弱いとは言えないだろ」


ガヴはモールドの肩に手を置き、二ッと笑った。


それでもモールドは当時のことを思い出したのか、肩を落としてしまった。


ガヴの言う通り、よくやったんだからもう少し自信を持ってもいいと思うんだが。


「そうだね。僕には僕の強さがあるんだ。だから頑張らなきゃ」


「その意気だ。訓練中はチームで動くわけだし、なにかあったら俺らに任せとけ!」


ガヴは自信間満々に胸をたたいた。


モールドも前とは違い、軽やかに笑っていた。


いつもなら不安に押しつぶされて泣きそうになるところだが。


いい方向に進んでいる証拠だ。


俺もつられて笑みがこぼれる。


万が一のことがあったら俺も手を貸すからな。

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