第21話 自分なりの道!モールドの強くなる方法

日を改め、モールドはある場所を訪れていた。


「おや、モールド君じゃないか」


ドアを開けると、相変わらずへんてこりんなものが目に付く。


ここは魔法を教える教室だ。


その教室に本を読んでいるガラドがいた。


「モールド君がここに来るなんて。なんの用かな?」


教室に入るまでモールドの顔が強張っていたが、ガラドの顔を見ると意を決したように力強く歩みだした。


そしてガラドの前までまっすぐ歩いていくと、勢い良く頭を下げた。


「僕に、魔法を教えてください!」


なんだって⁉


そうか、モールドは魔法の道を選ぶことにしたのか。


残念だが仕方ない。


魔法にもいろいろあるからそっちの方がモールドに合っているかもしれない。


剣を握らなくなっても、俺は応援するぞ。


「まさかそう言ってくるなんて思わなかったよ。もちろん、すぐにでも教えてあげられるよ」


「ほんと?」


モールドは嬉しそうに目を輝かせた顔を上げた。


「でも、いいのかい?騎士の道をあきらめちゃって」


「いや、騎士になるのをあきらめるわけじゃないです」


モールドは迷いのない自信に満ちた顔で答えた。


「僕は騎士になるって言っても、ガードすることしかできないから、ほかにもできることを増やしたいと思って。それでもし、僕に魔法ができるのならやってみようと思ったんです」


「なるほど。つまり、魔法と剣を両立するということだね。そうなると、かなりの時間勉強と練習をしないといけなくなるけど、大丈夫?」


「もちろん!ちゃんと考えた上でここに来たんです」


モールドのやる気に満ちた様子にガラドも納得したようにうなずいた。


「わかった。そこまで言うなら教えてあげるよ」


「やった!ありがとうございます!」


モールドはまた深々と頭を下げた。


剣と魔法の両立とは考えたな。


戦いの幅が広がる分、それはそれで楽な道じゃないはずだ。


心配事がいっぱいあるが、モールドならきっとできる。


俺もどんな戦い方をするのか少し興味があるから、頑張ってほしいもんだ。


早速モールドは校庭に出て魔法を教えてもらうことになった。


「モールド君は魔法自体初めてだから基礎的なことからやっていくよ。まずは体内にある魔力を外に出すことからだ」


ガラドは両手のひらを向かい合わせにして前に出した。


しばらくすると、手のひらの間に透明な風の塊みたいなものが出来上がった。


「こんな風にうまくいくと魔力の玉ができる。これが魔力弾だ」


「おお!」


モールドは目を輝かせながら魔力弾を見つめていた。


俺もなぜかか聞き入ってしまった。


「さあ、次はモールド君の番だ。体内にある魔力を手のひらに集めて押し出す感じをイメージするといいよ」


早速モールドはガラドと同じポーズをとり、目をつぶって集中しだした。


しばらく待ってみるがやはりそううまくいかないようだ。


試しに俺も同じようにやってみる。


はあっ!


……できるわけないか。


「ねえ!見て見て!」


なんといつの間にかモールドの手には小さめではあるが、魔力弾ができていた。


「さすがだよモールド君!」


モールドは褒められて照れくさそうにはにかんだ。


モールドにこんな才能があるとは。


いったい誰に似たんだか。


「じゃあ、そのままあの木に向かって撃ってみようか」


ガラドは校庭に生えていた気を指さした。


「ええ⁉いきなり言われても、どうやって…?」


「落ち着いて。まずは標的をよく見るんだ。そしてさっきみたいに手に魔力を集めて、魔力弾を弾くように撃つんだ」


モールドは再び集中し、手を前に出す。


「はあっ!」


モールドの放った魔力弾はゆっくり木に向かって飛んで行った。


そして魔力弾が木にぶつかるとポンッ!と弾けた。


威力はそんなにないようだ。


「うんうん、初めてにしては上出来だよ。この調子で魔力をコントロールできるように練習していこうか」


「はい!」


モールドは何とも楽しそうに練習を続けた。


剣を握っている時とは違って。

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