第13話 激闘!幽霊と幽霊の戦い

月からのスポットライトと、夜の冷たい静けさが緊張感を引き立てる。


久しぶりの戦闘に魂が震えていた。


「マーリン、あんまり無理するなよ」


「大丈夫よ。初めからその気で来てるから」


マーリンをちらりと見てみるといつも通りの落ち着いた顔だった。


言わずもがなだったようだ。


だったらお構いなしにやらせてもらおう。


先手必勝!


剣を抜き、勢いよく駆け寄る。


老人も俺に向かって魔力弾をいくつも打ち出してきた。


弾幕の隙間を縫って接近し、腹部めがけて横に振る。


半分切ることができたが、再びくっつき元に戻った。


これが幽霊の特性だ。


「ちょっと!幽霊は物理攻撃が効かないのよ!」


「でも勝てないことはないだろ。俺はそうやって勝ってきた」


「そんな無茶なことを…」


会話を挟んだ一瞬の隙に老人の杖が青白く光った。


すると老人の分身が四体現れ、俺の周りを取り囲んだ。


剣を乱雑に振ってみるが、どれもすぐに元通りになる。


四方から炎、雷、風、水の魔法を次々に撃ってきた。


量が多すぎて避けきれずに被弾してしまった。


痛くはないが、力が抜ける感じがする。


こんなの一体一体相手にしてたら埒が明かん。


幽霊召喚術ガルウ・ウスブリッド!」


狼、鳥、ヘビ、半透明の獣たちが分身に向かって攻撃し始めた。


もみくちゃにされた分身は煙のように散って消えていった。


「すごいじゃないかマーリン!」


「そんなこと言ってないで、集中して!」


老人はすでに次の攻撃の準備をしていた。


老人が地面に杖を突き立てると、地面からいくつもの鋭い土の槍が勢いよく飛び出してきた。


次々に体を貫いていく。


また力が抜けていく。


こんなもの、いつもなら耐えられるはずが、この体だと勝手が違うみたいだ。


「ちょっと!大丈夫⁉」


「大丈夫だ。ちょっと力が抜けるだけだ」


「それダメージ受けてるから!大丈夫じゃないじゃない!」


「でも死ぬわけじゃないだろ」


「そんなことないわ。ダメージを受け続けたら、いずれ消えるわよ!」


「そうなのか?まあそう心配するな。もう大丈夫だ」


かなり攻撃を受けてしまったが、勝手がわかればこっちのもんだ。


老人はさらに弾を打ち出してきた。


弾は獣の霊に向かって飛んで行き、爆発して獣たちを吹き飛ばした。


獣の影がキラキラと空に消えていく。


頭数を減らしにきたか。


立て続けに放った爆発弾は俺を避け、マーリンに向かって飛んで行った。


マーリンは当たる直前に壁を作り出し、老人の弾を防いだ。


その隙に老人の後ろに回り込む。


それに気づいた老人は俺に標的を変え、弾を撃ってきた。


今度は被弾しないよう、すべて避けていく。


だが、避けた弾は軌道を変え、再び俺に向かって飛んできた。


とっさに避けたが、一つ被弾し、爆発した。


さっきよりも威力が高いのか、力が一気に抜けてよろけてしまう。


なんのこれしき!


よろけて重心が下がったのを利用し、大ジャンプする。


老人が宙に浮いた俺に狙いを定めている。


幽霊召喚術ガルウ・ウスブリッド!」


召喚された獣たちが老人に噛みつき、動きを封じた。


剣を天高く上った月に向かって掲げる。


天雷落てんらいらく!」


天から貫く雷のごとく、剣を振り下ろした。


鋭い一撃は老人の右腕をとらえ、体から引き離された。


老人はよろめき、後ずさりをする。


さらに距離を詰め、剣を振りかぶる。


「ま、待て!わかった、話は聞くからやめてくれ!」


突然の申し出に振りだした剣を止めることもできず、老人の顔をかすめた。


「ギャ―ッ!なにをしておる!待てと言っただろ!」


「そんないきなり言われても止められないだろ」


「うるさーい!貴様わしを殺す気か!」


さっきまでの厳格な態度とは打って変わって今度は小物感満載になってしまった。


なんなんだこの爺さん…。

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