第10話 見せつけろ!みんなの実力

いよいよ最初の授業が始まる。


最初の授業は訓練場で行われるようだ。


「今回は君たちの今の実力を確かめようと思う。入学試験では人形に技を披露してもらったが、今回はこの身でその力を感じたい。順番に私を殺す気でかかってきなさい。まずは君だ」


次々に生徒が選ばれ、パスヴァルと手合わせする。


剣や魔法はもちろん、持ち前の得意分野でパスヴァルを攻めている。


なかなかいい腕だ。


戦いの基礎がしっかりしていて、森にいるほどのモンスターは一人で狩れるくらいだろう。


その一人一人が持っている個性といえるほどの武器や技をパスヴァルはすべて捌いている。


本人は年だとか言っていたが、剣さばきは美しく、無駄のない余裕の動きだ。


「よし、次だ」


次に選ばれたのはマーリンだ。


マーリンは持ち前の杖をパスヴァルに向ける。


張り詰めた空気を破るようにマーリンが魔力弾を放った。


パスヴァルはそれを剣で弾く。


今度は大量の魔力弾を次々に放つ。


その魔力弾は軌道を変え、パスヴァルに四方八方から襲い掛かる。


パスヴァルは華麗な身のこなしで避け、切り、弾く。


「ふむ。なかなかなもんだ。ほかの魔法は使えないのか?」


「私が使える魔法はこれくらいよ」


「そうか。だがそれほどコントロールとパワーがあるのは大したもんだ。ほかの魔法もすぐに上達するだろう」


基礎的な魔法であれだけの実力だ。


得意の幽霊の魔法を隠しているのだから実際はもっと強いはずだ。


「次は君だ」


選ばれたのはモールドに難癖をつけてきたあの子だ。


剣を構えるとすぐさま勢いよく切りかかる。


甲高い音と共に剣が重なり合う。


さすがに大人と子どもでは力の差で押し負けてしまう。


それならと細かい連撃を打つ。


鋭く刺すような連撃で隙を作ろうとしている。


それでもパスヴァルはぶれることはない。


「でやーーーっ!」


耐え切れずに剣を大きく振った。


パスヴァルはそれにカウンターを合わせ、剣を弾き飛ばした。


「勢いはいいな。野心を感じる。もっと経験を積めばさらに強くなるだろう」


さすがはあれだけ啖呵を切っただけあるな。


ほかの生徒よりもキレがいい。


乱暴なところはあるが、見込みがあるやつだ。


「よし、次だ」


続いて選ばれたのはモールドだ。


ゆっくりと前に出るその姿は、誰がどう見ても不安さがにじみ出ている。


右手右足、左手左足が同時にでているし、関節が全部なくなったみたいになっている。


ゴーレムでももっとまともに歩くぞ…


パスヴァルの前に立つとカチカチの手で剣を構える。


準備はできたが、モールドはにらみ合ったまま動かない。


……じれったいなあ!


パスヴァルはずっと守りしかしていないのだから怖がる必要はないのに!


もっとこう…ズバッとやってやればいいんだ。


「どうした?来ないならこっちから行くぞ」


待ちくたびれたパスヴァルが圧をかけながら近づいていく。


「くっ、やあーー!」


モールドは意を決して剣を大きく振った。


その剣はそのまま大きく外れ、勢い余ってこけてしまった。


「もういい。次だ」


モールドの哀れな姿を見かねて次の生徒を呼んだ。


「まだ…まだやれます!」


「やる気があるのはいいがまだ初日だ。無理はしなくていい」


「……はい」


めげずに立ち上がったモールドだったが、パスヴァルにあきらめるように諭された。


モールドは肩を落とし、そのまま引いていった。


モールドには小さいころから俺が剣を教えていた。


基礎を覚えるのは早く、実力は確かについていた。


だが、対人戦になるとモールドの内気で優しい性格が傷つけることを拒んでいた。


だからモールドは対人戦の経験がほとんどない。


騎士になると決めてこの学校に入った以上、人と戦うことは避けて通れない。


この大きな壁を乗り越えて行けるだろうか?

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